第19話
「ファミレスって、朝ごはんなら食べたで」
「…ちょっと話があるんだ」
なんだよ話って。
突然会いに来て「話」があるだって?
喧嘩でも売りに来たのだろうか。
今のこの状況を説明できるものは何もなかったし、なんで海に来て、こうして砂浜に腰を下ろしているのかを自分でもうまく整理できてなかったから、とりあえず「ちょっと待て」と言った。
話ならここで済ませてよ。
そう言って、彼の返答を待った。
「いいから」
彼は私の右手を無理やり掴んで、強引に立ち上がらせ、ファミレスに向かって歩き出す。
…なっ
突然の展開に混乱する私などお構いなく、海岸沿いの『オニオンズ』という全国チェーンのファミレスに直行する。
いらっしゃいませ〜という店員の声と一緒にお店の一番奥まで真っ直ぐ歩き、2人だというのに6人席のテーブルに腰を下ろす。
ドリンクバー付きのハンバーグセットを注文し、「はぁ〜お腹すいたぁ」とか言いながら私に「なにか食べたいものは?」と言う。
いや、いい…
さっき朝ごはん食べたって言ったろ。
「そっか、じゃあそれだけで」と言って店員を退け、ドリンクバーに行くと言いながら席を立ち上がり、ジュースか何かを注ぎに行った。
いやいやいや、なに、急に。
ただでさえ朝から混乱してるっていうのに、突然ファミレスに連れ込んで「ハンバーグセット1つください」だぁ?
コップに黒い飲料水(コーラかな?)を注いできて、私にはお冷を持ってきた。
「キミ、ほんとに何もいらないの?」
…いや、なにもいらないの?じゃないでしょ。
何なのこれは。
何も言わずにじっと彼を睨んでいると、首を傾げ気味に疑問を投げかけてきた。
「どうした?」
疑問を投げかけるのはこっちでしょうが。
あんたが首を傾げてどうする。
私は堪らずに聞いた。
「なんなん、急に」
「ああ、ごめん」
悪びれもなくそう言いながら、注いできた黒い飲料水にミルクとガムシロップを入れ始めた。
「ちょっ、何入れてんの?!」
「何って、ミルクとガムシロップ」
えぇ…。
コーラにミルクとガムシロップ…。
どんな文明や文化でもそのチョイスは絶対に無い。
クソまずいだけだろそんなもの…。
「まあ、人それぞれやし、ええんやないかな…」
「ハハッ。コーラなわけないだろ。コーヒーだよこれ」
コーヒー?あっ、ほんとだ。
よく見たらシュワシュワしてない。
「コーヒー飲めるん?」
私はまさかあの亮平がコーヒー飲むなんて思わないから、黒い飲料水=コーラだと言う風に勝手に解釈していた。
「飲めるよ」
ふーん。
亮平が注いできた水を口に入れ、ミルクが馴染むようにマドラーをグルグル回している様子を見つめている。
で、話っていうのは?




