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雨上がりに僕らは駆けていく Part1  作者: 平木明日香
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第187話


 しかし、本当に久しぶりだ。


 改めてこの大学に来ると、中学とか高校の敷地が小さく見えてしまう。


 お洒落な私服で登校する学生。


 「食堂」とは名ばかりのコーヒーショップ。


 体育館並に巨大な大聖堂。


 波のように美しい曲線を描くガラスカーテンウォールで設計された、遊び心満載のクラブハウス。



 子供の頃は本当に憧れた。


 「勉強」ってなんなんだろうって散々考えたんだ。


 この大学に来ると、日常を謳歌している学生さんや先生たちが、自分とは違う世界に住んでいるように思えた。


 別に自分の生活に不満があったわけじゃない。


 こっちはこっちで素朴な学校生活が好きだったし、地元の街並みや日常が好きだった。


 けど、この場所に来ると、それまでにあった常識が覆るんだ。


 何か特別なことが起こっていると言うか、ディズニーランドに行った時のようなワクワク感。


 お祭りで皆がワイワイしている時の活気さと、授業中に感じる時のような緊張感が、洗練された空気の中で混ざり合って、「日常」にはない気配を連れてくる。


 “何かを学んでいる”って、そういう目的の先にある「勤勉さ」だけじゃない、懐の深さ。


 それがどこからか涼しい風を運んできて、通り過ぎるんだ。


 鮮やかな緑と、美しい赤レンガで覆われた通り道に、新しい「なにか」を運んできてくれるように。




 いくつかの建物を過ぎ、全面芝生で覆われた運動場を抜けると、それまでにあったヨーロッパ風なレンガ調の建造物が姿を消し、突然、——それは本当に突然、巨大な全面ガラス張りのビルが出現する。


 初めてその「建物」を見た時、いつの間にか大学の敷地の外に出てしまったのかと思った。


 だって、それまでの雰囲気はレンガや木々たちの緑で統一されたデザインだったのに、まるで文明を間違えてしまったかのような超現代チックな建造物が、ででーんと空を覆い尽くすように建っていたからだ。


 足元に突然覆い被さる、ビルの影。


 ——見上げれば、空に届きそうなほどに大きな存在感だった。


 11階建てっていうと別に大した高さじゃないように思うけど、子供ながらに思ったんだ。


 でかい…って…


 近世ヨーロッパの街並みに突如として現れたオーバーテクノロジー。


 そんな「未知」の遭遇が、頭の中を掠めた。


 それほどのインパクトだった。

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