第175話
話しながら、自分でもなに言ってるのかわからなくなる。
ぶっちゃけ、本当にそれが合っているのかも怪しい。
でも、遠からずって感じじゃないかな?
科学も数学も物理もよくわからないけど、確かそんなふうに亮平が言ってた。
時間の矢のパラドックス。
コーヒーはひとりでに熱くならない。
難しすぎる言葉の数々。
でも、スマホの話は私だって理解できた。
ようはメールのやり取りと同じで、スマホ本体が時空を越えて移動することはない。
ただ、中の情報は、光の速度で伝播する。
日本からブラジルへ、一瞬で情報を送受信することができる。
そういうふうに、過去と現在を結ぶことができるんだって、…確かそんなふうなことを言っていた。
「…まさか、楓の口から科学の話を聞けるとは」
そう言いながら、足を組むキーちゃん。
パンツ見えるよ!と思ったが、ちゃっかり短パンを履いている。
そうだとしてもはしたない…
ってか、ちゃんと聞けよ!!!!!
「キーちゃん!?」
「なに?」
「なに?やなくて、聞いてる?!」
「聞いてるよ」
「絶対嘘やろ!!!」
願うなら、ちゃんと座って、目を見て話を聞いてほしい。
そりゃぶっ飛んでいるのはわかる。
わかるけど、…今は一大事なんだ。
冗談なんて今は言える状況じゃない。
それぐらいわかるでしょ??
「…まぁ、作り話にしてはよくできとるわ」
「作り話やないって!!」
「…フッ、あんま笑かさんといてな?焼きそば食ったばっかなんやし」
「…信じてくれんの?」
「信じるもなにも、全く話の筋が見えてこん。今の話と、事故に遭った亮平と、どう関係があるって言うんや?」
「…え、それは…」
「関係」って言われても…
なんで、そんな悠長なことを言ってられるんだ。
…いや、でも、わかる。
キーちゃんは、亮平がちゃんと目を覚ますって思ってる。
病院でもそうだった。
ベットに寝てる亮平を見た瞬間、信じられない表情を浮かべていた。
先生からも詳しい話を聞いて、しばらく落ち込んでいる様子だった。
でも状況を整理したのか、とりあえず今日のところは帰ろうと、私の手を持って一緒に歩いてくれた。
その「手」は震えてた。
絶対心配なんだって思った。
高校に入ってから、私と同じようにお互い連絡は取ってなかったって言っても、やっぱり2人は幼馴染で、昔からの友達なんだって、どこかで感じた。
キーちゃんなりに頭の中を整理しようとしてる。
それは間違いない。
私の話が信じられないのも、無理はないのかもしれない。
一生目を覚まさないなんて、そんな「話」、信じたくても信じられない。




