第16話
ここが夢の世界なら、いつかは目が覚めるだろう。
見つからないスケジュールに嫌気が差して、天を仰ぐ。
あーもう…、なんで無いの?
梨紗は梨紗で今日のパーティーのことを賑やかに話してる。
キラキラした口調。
よっぽど楽しみなんだなと思いながら、私は私で「はいはいそうですか」と適当に相槌を打つ。
ねえ、あんたも一緒に探してよ?
バカなこと言ってないでさ。
夢なら早く醒めて欲しいけど、醒めてほしくない気もする。
もし醒めたら、私は死んじゃうんじゃないか?
と思ったからだ。
交差点にいたあの時、なにかとんでもないことに巻き込まれたような気がした。
きっと、…いや多分、何か不吉なことが起こったに違いない。
うまく思い出せないけど、それが「良からぬこと」であったことは、記憶の片隅に思い出せた。
痛みも何もなかったけど、ものすごい衝撃を全身に受けた。
飛ばされたのか、下敷きになったのかは知らない。
だけど、確実にわかるのは、なにか得体の知れない巨大な物体にぶつかったという事実が、「体の記憶」を通して思い出せるということだ。
その記憶が確かなら、ドンッ!という音が体の中心に響いて、急に視界が真っ暗になった…。
そこまでは覚えてる。
気がついたら家にいた。
この場所、見慣れた我が家の空間に。
首を傾げながら梨紗を見た。
どこを探しても、スケジュールが見つからないんだけど…
相変わらず目をキラキラさせて、こっちを見てる。
困っている私のことなんて気にも留めず、今日はどうするのかと騒がしい梨紗にも嫌気がさして、ちょっと黙っててよと口元をつまんだ。
痛がりながらものすごい勢いで私のことを睨む梨紗。
そのしかめっ面を見て、思わず笑いがこぼれてしまう。
「今日がなんの日」か、まるで素知らぬふりをして白色に染まる空。
窓の外でチラつく雪の結晶を目で追いながら、ふと、良からぬ想像をしてしまった。
…もしかして、ここは死後の世界なのか…?
そう思わずにはいられないほど、さっきまでの「時間」が頭の中に焼き付いて離れない。
後にも先にも、あんな衝撃を体感したのは初めてだったからだ。




