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第161話
「先生ッ!亮君の様子がおかしいんです!」
大声で叫びながら、母さんは呼んでいた。
穏やかな時間を振り払うように響いた声のトーン。
急に緊張が走った。
慌ただしくなる病室。
どうして喉が膨らんでいるのか、理解ができない。
「亮平!」
彼はこっちを見ていた。
痛いのか、苦しいのか、その判断がこっちではわからない。
見たことがない現象が、目の前で起こっている。
膨らんだ喉元に手をやろうとすると、看護婦さんが来て状態の確認に入った。
私は一歩下がった。
訳がわからない。
…なんで、こんなに膨らんでるの?
首の太さくらいにまで膨張している。
皮膚が伸び、首の骨が見えないくらいの大きさになった。
その一部始終がありありと映し出され、パニックになる。
なにを考えていいのかもわからない。
そのうちに次々と先生がやってきた。
「…まずいな。カテーテルを!」
口元から大量の血液がチューブ越しに流れ出る。
充血する瞳。
先生たちが言葉を交わして、「急いで!」という言葉が病室全体に響いた。




