第158話
キキーーーッ
駐車場に車を停め、ダッシュで病院へと駆け込む。
自動ドアが開いたと同時に受付へと駆け込み、「今救急で運ばれた木崎亮平って男子高校生に会いに来たんですが…!」と早口で尋ねた。
カウンターのテーブルの縁を握り、肩には力が入る。
気が気じゃなかった。
急いで会わないと、って、そればかりが先行し、なにも考えられなくなった。
落ち着いてって母さんは言うけど、流石に無理だ。
廊下を走って、外来で運ばれた救急医療室へ向かった。
ガラッ…!
ドアを開けると、そこはベットがたくさん並べられている部屋だった。
慌ただしく動く看護婦さんや、ベットごとに仕切られているカーテン。
よくわからない機械や、消毒液や薬品の臭い。
パッと見ただけだと、亮平がどこにいるかわからない。
遅れるようについた母さんが、看護婦さんから詳しい場所を聞いていた。
部屋の奥、入り口から見て左側の窓際だって。
カラカラカラカラッ…
一目散にその場所に向かい、勢いよく開けたカーテン。
するとそこに、包帯を巻かれ、スマホをいじっている亮平がいた。
「…亮平ッ!」
彼は驚いたように私を見た。
顔半分は包帯が巻かれ、スマホを持っている左手は、中指から外側にかけて同じくぐるぐるにされている。
額の包帯は少し血が滲んでいた。
大怪我を負っていると一目で分かったけど、本人は呑気にベットの上に寝転がっていた。
「…大丈夫なんか!?」
「…え?お前、学校は…?」
「痛いところは!?」
包帯だらけの彼の体をくまなくチェックする。
どんな怪我なのか、どこにも異常はないのか、ただそれだけを知りたかった。
ここにくるまでに考えてたんだ。
もし、目を瞑っていたらどうしようって…
「痛い痛い痛いッ…!」
「アッ、ごめん…!大丈夫…?!」
「なーんてな(笑)こんなん大したことないわ」
…ふざけんな
冗談じゃない。
どんだけ心配したと思ってるんだ。
最悪の事態を想定したんだぞ
こっちの身にもなって発言しろ
「ほんといい加減にせぇよ…」
「…なんが?」
「朝っぱらからなにバイクに乗っとんねん!」
ここは病室。
静かにしなきゃいけない。
だけど、我慢できなかった。
だから大きな声を出した。
それくらい言いたいことがあったから。
昔から、危なっかしいとは思ってた。
高校生に喧嘩を売って傷だらけで帰ってきたこともあったし、アホみたいに騒いで、危険を顧みない行動ばっかで。
アンタみたいなのを「バカ」って言うんだよ。
わかってる?
こんだけ他人を巻き込んで、人に心配かけて。
対向車がいたらどうすんの?
他に怪我人が出てたら?
少しは考えて行動しろよ!
目の前の彼は、私と目を合わせようとはしなかった。




