第152話
…本当に、私は、この場所で…?
その不安は、通りすぎたトラックの軌跡が、——残像が、決して偶然だとは思えなかったからだ。
あの時、この交差点で、私は確かに——…
そう思えることの根拠が、「記憶」の中にある。
でもそれを認めてしまうことは、あの夢のような出来事たちも、全部現実だったっていう可能性が…
…いや、でも、そんなことって…
学校についてから、上の空だった。
「おっはよ!楓!」
「…あ、おはよ」
「なんや!その元気のない顔は!」
キーちゃんはしっかりしろと肩を叩いて来るが、どうも釈然としなかった。
交差点に行けば、——もしかしたら…
そう思うことの期待は、確かに、自分の中にあった。
夢じゃなくて現実だったって、その可能性に向かって期待を描く自分が、あそこにいた。
でもいざ、ああしてトラックが目の前に通り過ぎた時、自分が体験した出来事が全部現実だったなんて、と、信じられない気持ちが募るのは、やっぱりそれが信じられない出来事だったからに違いなかった。
なにより、夢が現実になったっていうことが、なにか漠然とした不安を頭の中で巨大にしていくのを、制御することができずにいる。
今もこうして学校に来てホームルームの時間を待っているけど、その「不安」はますます大きくなるばかりだった。
…なにが、そんなに…
prrrrrrrrr
突然鳴り響いたスマホのメロディーは、上の空の頭を起こすように振動した。
画面を見ると、「亮平」とあった。
…亮平…?
言いようもない不安が脳内を飛び回る。
その文字は、未だかつてないほどの攻撃性を持って、スマホの画面上に電波を届けた。




