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雨上がりに僕らは駆けていく Part1  作者: 平木明日香
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第145話



 ピンポーン、ピンポーン…




 家に着くなり、速攻でベルを押した。


 「亮平!」って直接呼ぼうとしたが、ベルの方が手っ取り早い。


 すると、キッチンの勝手口のドアが開いた。


 ヌッと現れたその「人」は、“私が知っている亮平”だった。



 …奇妙な言い方かもしれないけれど。



 「…なんや、お前らか」



 金髪、目の下のクマ、両耳のピアス、ダボダボなワイドパンツ。


 一目見て、「亮平」だとわかった。


 もちろん、あんまり良い意味じゃない。



 「よ!」



 ドア越しにダルそうな顔を見せる亮平に対し、キーちゃんは右手でジェスチャーしながら華麗な挨拶を交わした。


 私の方は思わず挨拶をしそびれてしまった。


 オバケを見てしまった時のように、固まってしまった。



 「なにしに来たん?」



 目つきの悪い目の前の彼は、フラッシュバックしたように私の頭の中の「時間」を巻き戻した。


 亮平と最後に会話した日を思い出した。


 その「最後」っていうのは、もちろん未来から来たっていう「亮平」のことじゃない。



 「…えっと」



 うまく喋れないでいる私の後ろで、キーちゃんが「家入ってもええ?」と言った。


 亮平は「別にいいけど」と答え、私たちは中に入った。




 「それで、なに?」



 キッチンのカウンターテーブル前に設置されている丸椅子に腰掛け、聞いてきた。


 聞きたいことはひとつだった。


 でも、それを単刀直入に聞けるほど、和やかな雰囲気じゃなかった。




 亮平の口数は少ないし、何より、声のトーンが暗い。


 学校に来なくなってから、誰に対しても攻撃的だった。


 なにも信用していないというか、心を閉ざしているというか…



 最後に会った日もそうだった。


 バイクに乗る亮平を海岸沿いの道で見かけた時だった。


 部活帰りの私を見つけ、声をかけてきた彼に、言ったんだ。


 「どこに行くん?」

 

 って。



 亮平は、「さあな」って、夜の街の中に消えていった。


 もう、同じように学校には行けないのかなって、その時に思った。


 …それほど、甲高いエンジン音は彼の背中を遠くさせた。

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