第116話
…まさか、あり得ない…
亮平と結婚って………
そんなバカな…
…あいつのことは嫌いじゃない
…でも「好き」なんていうのは、もっとあり得ない
「結婚」って、好きな人同士が行う儀式のことだよね?
“生涯を共にすることを誓いますか?“
という牧師さんの言葉。
結婚ってつまり、…そういうことでしょ?
『一生を共にする』ってこと。
お互いの愛を誓い合う儀式。
そんな神聖な儀式をあいつと交わしたってこと?
嘘…、でしょ?
…なにかよっぽどの理由があったのかな…
結婚しなきゃいけない理由…
…
……そうか!
さてはあいつ、私の弱みか何かでも握ったんだな?!
それで抵抗できなくなっちゃって、婚姻を交わさなきゃいけなくなった…
うん。
きっとそうだ!
そうに違いない。
弱みでも握られない限り、結婚なんてするわけないだろ
絶対、そうだ。
もしくは、人質でも取られてるのか?
結婚しなきゃ、家族の誰かを殺すとか何とか言って、私を脅している…
…その線もあり得るな
ベットの上にへたり込んで考え込む。
左手の薬指に嵌められた指輪。
記憶に新しい唇の感触。
あのヤロー…、なんであんなことしたんだ…
キスなんて、今までしたことなかったのに。
いつか誰かとキスする日が来るのかなって、昔思ったことがある。
キスってどんな感じなのかなって
「キスは甘い味がする」って、先輩から聞いたことがある。
先輩と言っても、その人はアイドルとか流行好きのザ・ミーハー女子って感じの人だったけど、経験者は語る的なオーラを醸し出していた。
やっぱ高校生は違うなと思いながら、言葉を追った。
キスは甘い。
甘いものだと思っていた。
…でも違う。
さっきのは甘さのかけらもない。
ほとんど事故みたいなもんだった。
事故って言っても、あいつが仕掛けてきたことだけど。
…本当に、ふざけてる。




