第115話
広々とした縦長のリビングを見渡しながら、家の至る所を歩き回った。
シンプルで、ナチュラル風なインテリアが多く、棚やテーブルはウッド調のものが多い。
白い壁に、木製の扉。
二階にはロフト付きの部屋があった。
彼とさっきまでいた寝室、ベランダ付きの部屋、服や雑貨が収納された6畳くらいの物置部屋、空間の仕切りがない開放的なLDK。
ユニットバスやトイレなどの水回りは、綺麗に掃除が行き届いている。
…というか、新築?
そう思わされるほど、家全体の装飾とか設備とかが、傷もなく清潔だった。
生活感らしい散らかった様子は少なく、整った印象を多く感じた。
家の内装のベースカラーは、殆どが3色以内でまとまっている。
計算されたデザインって感じかな…?
開放的なテラスからは、海が見えた。
…家を色々物色してみたはいいけど、頭は混乱したままだった。
スマホを開いてみようとした。
「過去」を探ってみようと思ったからだ。
ここが2022年だというのなら、時間を遡らないといけない。
彼が言っていたことも気になる。
「彼」…、いや、きっと彼は亮平なのだろう。
信じられないし、全然実感は湧かないけれど、多分きっとそう、…彼は未来の亮平だ。
…でも待てよ
そう思い、今になって冷静に考えられるようになった。
彼が「亮平」なら、彼が言った「夫」っていうのは、…つまり…
階段を駆け上った。
そうして寝室に行き、写真を手に取る。
ウエディングドレス姿の「私」。
幸せそうな、写真の中の「2人」。
いやいやいやいやいやいやいやいや
…いやいやいやいや
…えぇ!?
…え?
冷静に考えるとそうだ。
ここが「未来」なら、ここは2022年の「自分」ということになる。
そんな当たり前なことは誰にでもわかる。
…でもそれは同時に、「2022年の現実」、ということでもある…
ってことは…
…えぇ
…私、
…亮平、と…?




