次元の狭間 第104話
ビー、ビー、ビー…
う、うーん…?
音がする。
それと同時に、仄かなミントの香り。
少し息苦しい…
目の前に何かがある。
…なにか
白い…?
うっすら開けた目の奥で、自分の手が何かに触れているのを感じた。
指先に触れる、サラサラした感触。
…それになんか、柔らかい…?
意識が朦朧としていて、自分が今なにをしているのかも判然としない。
目の前にある物体。
温かいクッションのような弾力。
これは…いったい、…なに?
ビー、ビー、ビー
すぐ耳元で聴こえてくるその音を追いかけながら、ムクっと起き上がった。
…え?
自分が今いる「場所」が、見覚えのある場所だというふうに気づいたのは、それが“知っていた場所”だったからじゃない。
ホテルに泊まったり、修学旅行先で寝泊まりした後に起きた朝、そこがいつもとは違う「ベット」の上であるということに違和感を覚え、思考回路が立ち止まる。
そういう自分の知識の上に成り立つ「状況の把握」が、突如として訪れた。
ベットの上に自分がいる。
——その思考が、現在に追いつくように。
けど、それだけじゃなかった。
起き上がると同時に、見慣れない一つの光景が意識の死角から飛び込んできた。
——え!?
…誰!?
隣に誰かが寝ていたのだ。
梨紗じゃない。
母さんでもない。
アキラや綺音、…クラスの友達の誰かでもない
それは、「女性」じゃない…!!
隣に背中を向けて寝静まっている「人」は、逞しい背中をしていた。
さっぱりとした後髪に、癖毛のあるショートヘアー。
…どこか、見たことがある。
でも、見たことがあるにしては、やけに大人びてて…
心臓が速くなる横で、恐る恐るその「人」を見た。
ってかそもそも、ここはどこ…?
…ベットの上なのはわかる。
わかるけど、さっきまで私は…、みんなと一緒に…
「う、うーん」
ビー、ビー、ビー
音がする方向を見ると、四角くて小さいデジタル時計があった。
時刻は7時を回ったところだった。
それが「アラーム」だということを、自分の経験から察した。
…けど、それどころじゃない
「おい」
…ふぁ!?
アラーム音にうなされるように鈍い反応をしながら、その「人」は声を発した。
い、生きてる!?
その人がまさか動くとは思わず、私は身構えた。
なんなんだ、…一体
これはどういう状況なんだ?!




