日陰の僕と、太陽の君
昔から本を読むのが好きだった。それはたぶん現実世界に満足していなくて、ただただ貪欲に別世界に行きたくて、現実逃避をするために本の世界を純粋に楽しんでいたんだと思う。
どれだけ欲しいものを集めても満足しなかった僕は、文章の世界にズブズブと入っていった。その世界の延長線上に動画があった。ニコニコやYoutubeを見ていくうちに、二次創作に出会った。カップリングを知り、推しカプの作品を読み漁って行くうちに恋をしたいと思った。いくらゲームや友達と遊ぶなどをしても、次に満たしてくれる者を探していた自分には、恋は未知でそして美しいものだと思った。
中学生になった僕は必死に、心にもない「好きです」という言葉を3年間繰り返していた。本当の好きという感情がどんなものなのか知らないくせに。そしていつしか僕の身体には、面食いのだらしない女の敵というレッテルが張られた。いつも周りにいた友達たちもだんだんと近寄らなくなっていった。友達と意味のない会話を続けていた僕にはそれは知らない環境で、恐怖を覚え、逃げ出した。ちょうどそのころには高校受験というイベントもあり、逃げ出すのには絶好のタイミングだった。自分が生まれ育った街から遠く離れた学校へ進学することにした。列車での通学は財布へのダメージが大きいため一人暮らしをし、中学の時と同じ間違いをしないため恋をすることを控えていた。しかしそれまでの3ヶ月間は人と触れ合う楽しさを忘れ去るには充分すぎる時間だったため、クラスの中でも地味な存在として認知された。そうして過ごしていたが高校2年生の春、変化が訪れた。転校生であった彼女が朝礼のときに教室へ入ってきたとき、本当の恋を知った。
ここから僕の青春が始まったんだ。
九割九分フィクションです。