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恋と昆布とべルナドット

有原ミサオは15歳の、においフェチの女の子だ。


ミサオは愛犬・シーズー犬のべルナドットの散歩をしているとき、べルナドットが他の犬とお尻のにおいを嗅ぎあっているのを見ては


(ベルちゃんは自由でいいわね。私だって好きな人がいたらにおい嗅ぎたい。まずはそっから入りたい)


といつも思うのだった。


高校入学を控えた3月のある日、川沿いの道をべルナドットの散歩をしていたミサオは、クラスメートで4月からは同じ高校に通う伊集院ドゥーカスに偶然会った。


ドゥーカスは「ワンちゃんの散歩?かわいいワンコだね」と屈んでべルナドットを撫でた。


べルナドットがドゥーカスの鼻先をクンクン嗅ぐと、ドゥーカスもべルナドットの頭に鼻を当ててにおいを嗅いだ。


「うちの犬と同じだ。昆布のにおいがする!」


ドゥーカスは笑った。


「昆布のにおい?」


ミサオも試しにべルナドットの頭を嗅いでみたが、


「そうかな?どっちかってゆーとトンコツのにおいじゃない?」


と言った。するとドゥーカスが


「それ俺かもよ。お昼トンコツラーメン食べたから」


と照れ隠しで頭をかいた。


(しまった!これは間接的ににおいを嗅がせる恋の高等テクニックだったのでは!?だとしたら負けられないわ)


ミサオは勇気を出して、右手の甲をドゥーカスに差し出すと


「じゃあ私が何食べたのか、においで当ててみて!」


とキレ気味に言った。


「えぇっ?まじで?・・・じゃあ」


思わぬ展開に動揺しながら、ドゥーカスは遠慮気味に、距離をとりながらミサオの手の甲のにおいを嗅いだ。


「えっと・・・ハンバーグ?」


「ぶー!はずれ。しらす丼でした!」


「んなもんわかるかよ!」


二人は笑った。


笑い終わってから、ミサオは


「ねえ、これって私たち、付き合ってることになるのかな?」


と聞いた。


「ならないんじゃない」


ドゥーカスが答えた。


「だよね」


ミサオも同意した。


「でもさ、ここで俺が告白したら付き合う?」


ドゥーカスの問いに、ミサオはどう答えていいかわからなくなり、べルナドットを抱きかかえてその頭を嗅いだ。


「・・・本当だ、昆布のにおいする」


「どっち?」


「・・・昆布」


「だからそれってどっちの答え?」


「昆布」


ドゥーカスは少し考えてから


「じゃあオッケーってことで受け取っとくから。夜ラインするね」


と手を振って去っていった。


「やべえ、初彼氏できちゃったじゃんかよ・・・ベルちゃんのせいだかんな」


ミサオはべルナドットの顔を両手でぎゅうと挟んで言った。


「帰ろっか、ベルちゃん。お手柄だったけど、昆布くさいのはダメだから今日お風呂ね」


(はあっ!?ふざけんな!)


突然のお風呂宣言にべルナドットは牙をむいて飼い主を睨んだが、ミサオは愛犬を見てはいなかった。


4月を待たずして、ミサオの新しい生活が始まったのだった。


     おわり

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