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スキルと魔法

 ナギが来てから生活が一変した、と言いたいところだけど、何一つ変わっていない。

 しかし食生活が一つ向上した。

 ナギが魚を捕ってくれるのだ。

 最初、取ったばかりの魚をくわえたナギが食べろと言ってきたのには驚いた。

 どらネコならぬ聖獣。


 生きる、ということにおいて聖獣もまた自然の摂理に捕らわれているのだという事を初めて知った。

 魔力を食べているのかと思ったけれど、血肉を持つ以上は何かしら食べないと存在を維持できないそうだ。

 しかも究極の雑食。

 川の水でも空気でもOK。

 なんで空気、と思ったけれど、食事=エネルギーなので、エネルギーになる物質が含まれていれば何でもいいらしい。

 空気にも酸素や二酸化炭素、窒素や水素などを含んでいるから……って、理屈はわかるけどなんじゃそりゃ、と思った。


 神様の眷属だから、普通の生き物の理をあてはめたらいけないのだろう。

 聖獣とはそういう存在なのだと受け入れるしかない。


「ナギ、お願い」


 あいにく醤油もないので刺身は勘弁してほしい。

 というか、刺身盛りで出されればいいけど、調理器具がないので当然、かぶりつくしかないわけで。


 そのままの生魚にかぶりつく。


 絵面的にも精神的にも色々とアウトだった。

 刺身と生魚は別物だとわかった瞬間だった。

 せっかくとってきてくれたナギには申し訳ないが、生魚は食べられない。


 しかし、ナギは魔法が使えた。

 火の魔法が使えたのだ。

 最初は消し炭から始まり、何度か試行錯誤を繰り返した結果、すばらしい焼き魚を作ることができた。


『まかせろ』


 得意げに魚をこんがりと魔法を使って焼くナギの姿に感謝と尊敬を送ろう。






 ナギによって効率的な魔法の使い方を習得することができた。

 といっても、シスターの言った通り、魔力をいかにうまく体の中で巡らせるかがポイントだそうで、ひたすらひたすらぐるぐるぐるぐる魔力を巡らせる練習をした。

 それが第一段階で、次は魔力のコントロール。

 使う魔法の威力によって魔力の消費をコントロールする。


 ナギいわく、私はコップに水を入れるのに、巨大な桶に水をはってそれをひっくり返すことによって地面に置いたコップに水をそそいでいるらしい。

 しかもそのコップは倒れて中の水もこぼれちゃうという……。

 ものすごい効率が悪いな、それ。


 まずは桶の大きさを小さくしていく練習。

 それができたら今度は巨大な桶からコップで水をすくう練習。

 たとえがわかりやすくて理解しやすいけれど、だからって実行できるわけじゃない。


 異世界人という事で魔力量は多い。

 想像力も逞しいのでろうそくに火をつける程度の魔法がなぜか火炎放射器。

 結果、ごく少量という言葉を越えて微量の魔力で最大の効果を出せるようにひたすら練習。


「なんていうか、地味だね」

『派手な練習、というのがあるのか?』


 そう言われれば、練習って結局は反復だから、どんなに派手なものだとしてもえんえんと同じことを繰り返せば地味になるよね。

 じゃあどんなものが派手なのか、と思ってハタと気が付いた。

 水魔法の派手なのって……昔テレビで見た、水芸?

 扇の先っぽとか、指先から水を噴水みたいにぴゅーって……。

 ダメだ、光や火魔法に比べたら地味だ。

 あ、でもネズミーランド海バージョンなら水のショーをやっていたけど。

 結局はあれも火や光を使って演出しているから純粋な水のショーかと言われるとちょっと違う気がする。


「あっ!」

『いきなりなんだ?』

「大事な事を思い出したよナギ」

『だからなんだ?』

「私、自分の属性を調べていない」


 なんという事だ!

 他にも適正な魔法があるかもしれない!

 水魔法もいいけど、やっぱりこう光とか火とか、派手な魔法も欲しい。

 たぶんだけれど、魔法の基礎ができるようにならないとあの魔道具は使えないのかもしれない。

 だってほら、魔力を流して使うっていうのがこの世界の魔道具の基本だし。


「なんてこった……」

『俺が見てやろう』

「えっ、わかるの?」

『ああ。手を出せ』


 ナギが手を出してきたので私も手のひらを上にして出した。

 ぽふっ、と音がしそうな感じにナギが私の手のひらに手を置く。

 これは、俗にいうお手状態だけれど、いいのか?


 体の中に何かが駆け巡るのがわかった。

 例えるのなら、一陣の風。

 本当にそんな感じがしたんだってば。

 ポエマーじゃないし。

 って、誰に言い訳してんだろう。


『ふむ。面白い』

「えっ、何が?」

『神の卵を取り囲むように水と闇と時空がある』

「神の、何?」

『お前にわかりやすく言えば、固有スキルの種だ』

「それから生まれるのは何?」

『わからん。だが、お前がこの世界に来た理由を考えると聖女の確率が高いな』

「……確率かぁ。ん?聖女って職業じゃなくてスキルなの?」

『スキルだ。他には勇者や賢者もスキルだ』


 それ、職業ではないのだろうか?


『聖魔法が使えるのは聖女というスキルだ。男なら聖男(せいだん)

「そこは聖者じゃないんだっ!」

『勇ましき者、賢き者。聖魔法を使える者。これは職業とは言えないだろう。職業ならば賢き者はみな賢者であり、勇気がある者はみんな勇者でなければならない』

「わかるような、わからないような……」


 もう面倒だからそういうものだと思う事にしよう。

 郷に入っては郷に従えっていうし。


「というか、私って聖女の卵だったの?でも千葉さんだっているわけだし……」

『どうして二人が召喚されたのかはわからんが、召喚条件があやふやだったのでは』

「あやふや?」

『力の一番強い者、適性が最も高い者などの細かな条件だ。でなければ可能性のある者が全員、召喚されてしまう』

「なるほど。でも、今までは一人しか召喚されなかったみたいだけど」

『そこが問題なのだ。もう一人の者と静香の潜在能力が同じだった場合、一番強い者をという条件ならば二人同時に召喚される可能性は十分にある』

「同等の人間が三人だったら?」

『三人召喚されるな』


 一人だけ、という条件付けがされなかったというわけか。

 まぁねぇ、私が召喚する側だとしても、一番が二人って想定しないよなぁ。

 よく考えればそうなんだけど、一番って一人だけだってなんとなく思っていたよ。

 同列一位って言葉もあるのに思い込みって怖いね。



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