3/4
03
つかの間の贅沢を受け入れていた私の元に、ある青年がやってきた。
よく知っている青年だ。
同じ村に住む者どうしだから、彼とは何度も話したし、触れ合っている。
だから、同じ時間を共にするうちに、二人が特別な関係になるのは自然な事だった。
私は彼の事を好いていたし、彼も私の事を好いていた。
そのうち、彼がそう言いだすのはおかしな事ではなかったはずだ。
「一緒に逃げよう」
そう言われた時、私はどんな顔をしていただろう。
平静な顔で、首を振った自信が無い。
私一人の幸せと引き換えに、多くの人を不幸にする事なんてできない。
彼は何度も同じ事を繰り返したが、私は一度も首を縦には降らなかった。
そしてとうとう、その時がやってきた。




