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私の彼氏はスカートが似合わない  作者: 星野あきら
1/1

あなたと私の全ての始まり

明日の夏休み明けからはしっかり学校に行かなければ、と悠はこの猛暑に相乗するような蝉の声を聞きながらエアコンの下で大の字になって寝そべっている。もう夜も深いというのにエアコンをつけないと汗が滲む程だ。

悠の通う学校は補習を受ければ出席日数を埋められるというシステムである。

悠は学校を休みがちであった。中学時代にいじめに合って不登校になってから高校生になってもその癖が抜けずに毎日通うという習慣が出来ていない。

「あー、だるいなあ。眠い…。」

悠は明日の準備もせずにいつの間にか眠りについていた。

朝が弱いのは体質だ、仕方ない、と起こしに来た母をイラつかせたことを受け流した。いつも家を出るギリギリの時間に起床するので、朝御飯はもちろん食べる時間はない。いつも通り顔を洗い、腰まである茶色がかった髪をクシでとかし、色鉛筆をかんざし代わりに手馴れた様子でひとつに纏めた。

「行ってきまぁーす。」

やる気のない声に母は少々心配を覚えたが、やればできる子だから、と久しぶりに悠を見送った。

悠は今日の授業のことについて考えていた。確か始業式があってそのあとホームルームがあって終わりだったかな?余裕じゃん。

色々考えているうちに電車は学校の最寄り駅に到着した。悠は人波に溺れそうになりながら電車を降りた。久しぶりのこの感覚を少し楽しく思った。

悠は早歩きで学校へ向かった。この道を歩くのは何時ぶりだろうか。クラスメイトは自分のことを覚えているだろうか。そんなこんなで学校に着いた悠は上履きに履き替え、階段を駆け上がった。

「おはよう!」

悠の声はさっきの家を出るときとは打って変わってとても明るくて通った。

悠は顔が広かった。先生にも好かれていたし、下の学年にも上の学年にも顔が覚えられていた。本人は自覚がないが、頭に色鉛筆が挿さっていればそれは相当記憶に残るであろう。

悠のクラスは悠の様に学校に定期的に通えない所謂不登校ぎみの生徒を集めた年齢の関係ないクラスだった。

「みんなおはよう!」

悠はこのクラス特有のタイムカードを押すと適当な席についてもうすぐ始業式が始まるというのに5人程度しか生徒がいない教室で挨拶をした。

「悠、おはよう!」

一際早く悠の顔に気が付いて返事をしたのはひとつ年上のクラスメイトであった。

「隊長!おはようございます!」

隊長と呼ばれるその年上の男子はアユムと言い、悠とはアニメや漫画について語ったりイラストを描きあったりするクラスの中では比較的仲のいい生徒である。

「久しぶりだねぇ、暑い暑い。そういえば、キラシュガ観た?」

アユムはエアコンの効きの悪さを嘆きワイシャツの中の空気をパタパタと循環させながら悠に近い席に座るとアニメについて話を振った。

「観たよ!あの主人公がパートナーを庇って刺されたシーンは泣けたなぁ。」

悠は嬉嬉として話した。二人が話しているとチャイムが鳴り、全校生徒が集められ始業式が始まった。

悠がアユムとの会話を名残惜しそうに終わらせると校歌斉唱が始まった。ろくにメロディはおろか歌詞さえ覚えていない校歌を適当に聞き流して先生達の話が始まり、悠は飽きてきて欠伸を連発しては、アユムに小声で叱られた。

「やっと終わったー!」

生徒たちが散らばって教室に戻っていくのを眺めながら悠はアユムと共に背伸びをした。

「疲れたぁ。ずっと立ってるとクラクラしてくるね。」

アユムは汗を拭いながら隣で伸びをする悠に話しかけた。

「教室は涼しいよ、ほら!」

悠の言った通り、教室は涼しかった。人口密度の低い教室をありがたく思った。

二人は着席すると机に溶けるように突っ伏した。

少しすると、担任の柴崎先生が教室にやってきてホームルームが始まった。と、言っても点呼を取るだけで特に何もなかった。

一日の任務を終えた悠は少し涼んでから帰路に着くことにした。

パタパタとノートで顔に涼しい風を送りながら椅子にもたれていると、教室の入口から声が聞こえた。

「悠ー!悠居るー?」

そう叫びながら教室の入口から顔を入れたのはアミというひとつ年上の女子である。

アミは以前まではこのクラスだったが、定期的に通える見込みが立ったので仲良くしていたが最近はクラスが変わったので疎遠になりかけていた。

「はーい!いますよー!」

悠は珍しいな、と思いつつアミのいる教室の外へと出ていった。

「どうしたの?久しぶりじゃないですか。何かあったの?」

訊ねると、

「暇だったら少し話さない?」

「いいですよ。まだ帰らないし。」

二人はアミの教室の前の廊下で近況報告をし合った。アミが変わらず学校に通えていることを聞き、悠は安堵した。

「アミちゃん、呼ばれてるよー?」

アミのクラスメイトは二人の会話を休止させた。

「ちょっと行ってくるね!」

悠はアミの向かう先で一人の男子がアミに手招きしているのを見た。

アミは机に座っているその男子と少し話すと、悠を呼んだ。

「悠ー?ちょっといい?」

悠は最高学年の教室に入るのはなんだか緊張したので、アミに手招きした。

「どうしたの?」

アミに訊ねた。

すると、アミと一緒に先程の男子も一緒に教室から出てきた。

「こちら、雫。悠のこと可愛いって。」

悠はその雫という男子を紹介された。

彼は悠よりも背が低く童顔であった。

「はじめまして。雫です。」

思ったより高い声で雫は悠に頭を下げた。

「はじめまして!悠です!」

悠は何か若干の違和感を抱きながら挨拶を返した。

「…。」

三人の間に沈黙が生まれた。

「雫さん!私とアドレス交換しましょう!」

悠は雫にいきなりアドレス交換を申し出た。この誰にも壁を作らなくて誰とでもすぐ打ち解ける事ができるのは悠の良いところでもあった。

「…いいですよ。」

雫は少し考えてから返事をした。その間を少しも不審に思わなかった悠は携帯電話を取り出して雫のメールアドレスを電話帳に打ち込んだ。

「帰ったらメールしますね!」

悠の嬉しそうな顔を見ると雫は顔が火照るのを感じた。それを必死に隠そうと、

「じゃあ、また。」

短く挨拶をして教室に戻っていった。

アミはなんだか聖母マリアのような笑みを浮かべながら二人の様子を見つめていた。悠はアミに雫とはどんな人間なのか聞くことにしようとした。しかし、メールでやり取りするなら知らないほうがワクワクするな、と思いアミに明日に雫とのメールの内容を話すことを約束し、二人はそれぞれの教室に戻ることにした。

「悠!遅かったじゃないか!待ちくたびれたよ!」

アユムはすくっと立ち上がると自分と悠の鞄を持ち悠の腕を取ってタイムカードを押した。

「ほら!悠もタイムカード押して!」

悠は言われるがままにタイムカードを押して引かれる腕に少々の痛みを覚えながら教室内に残る数人のクラスメイトに、

「また明日!」

と挨拶をしてアユムに半ば強制的に連れられて行った。

「どうしたの、隊長?」

悠はアユムから自分の鞄を受け取り背負いながら訊ねた。

「君がいない間にボクがどれだけ寂しかったかわかるかい、嗚呼、わからないだろうね、ほらこんなにイラストが溜まるほどに時間は過ぎていたんだ。それに柴崎先生に早く帰れ、と何度言われたことか。ボクが君の鞄を見張っていてあげたんだぞ。もしボクが君の鞄を置いてきぼりにして帰るような薄情者に見えるなら君は目が腐っているね。」

アユムは早口でそう言うと、鞄からルーズリーフを取り出して悠に手渡した。

「ごめん、ごめん。ちょっと話し込んじゃって。」

悠はルーズリーフをパラパラ、と見るとアユムに返した。相変わらず絵が上手くて少し嫉妬をしたが顔には出さなかった。学校を出て駅までアニメの話をしていると気付けば電車に乗っていた。二人は降車駅が近いのだ。先に悠が電車を後にするとアユムが窓越しに手を振った。悠はアユムに感謝した。彼がいることによって、悠は共有できるものがあって学校に行く目的になっているような気がしたからだ。

家に着くと母が久しぶりの学校はどうだったか聞いてきたが、悠は雫にメールをすることばかりで頭がいっぱいになっていたので、後で話すことにした。

悠は制服を脱ぎ捨ててジャージに着替えるとベッドに携帯電話を持って、ボスンと飛び込んだ。

ー雫さん、こんばんは!悠です!ー

とりあえず簡単に送ってみた。返事は思いがけずすぐに来た。

ー雫です。こんばんは。ー

返事は短くてぶっきらぼうな感じがした。悠は素朴に思ったことを聞いてみることにした。

ー雫さんは何故私に声をかけてくれたのですか?ー

返事は相変わらず早かった。

ーこの学校にこんな可愛い子いたんだ、と思ったからです。いきなりすみません。ー

悠は雫の顔を思い出して頬が緩むのを感じた。枕に顔を埋めて足をバタバタとさせた。悠はこんなことを言われたのが初めてだった。メールのラリーは中々終わりが見えず悠は楽しくて仕方なかった。雫が自分のことを好意的に思っているのは明らかだったし、メールをしていくうちに雫のことが気になりだす自分がいることにも気づいた。

またしても母をイラつかせている悠はそんなことどうでもいいとでも言わんばかりに朝の支度をしながら、今週末に雫と遊ぶことが楽しみで仕方なかった。

学校に着くと適当に授業を受けて放課後を待った。

そして、昨日と同じように悠を呼びに来たアミに、敬語は使わないこと、名前は呼び捨てにすること、今週末に一緒に遊ぶことを報告した。そして、雫は自分のことが恐らく好きで自分も雫のことが気になることも話した。まだ出会ってから一日と間もないので悠は自分の雫への気持ちは確証がないので雫には内緒にしてほしいと頼んだ。

二人は毎日メールを交わした。何通も何通も。悠は雫が使う絵文字が好きだった。自分は淡白な文しか書けないことが気にかかったが、雫の可愛らしい文は悠を更に引き付けた。

週末がやってくると悠はとびきりオシャレをした。髪はフワフワと巻いてブラウスにカーディガンを羽織って少し長めのスカートを履いた。靴は雫と並んで歩くことを考えてあえてかかとの低いものを選んだ。悠は雫の私服が気になったし、何よりも自分の私服が雫の好みではなかったらどうしようとも思った。しかし、そんなことは考えても仕方ないことなのでまぶたと唇にピンク色を塗ると家を出た。

待ち合わせ場所は悠たちが通う学校がある駅だった。少し早く着いてしまったので悠は雫に連絡を入れようとすると後ろから、

「悠ちゃん?」

と、声をかけられた。

悠は驚いて携帯電話を落としそうになったが、気を取り直して、雫の私服を見てから

「雫くん、おはよう!」

と挨拶した。雫もおはよう、と返してくれた。

なんだか新鮮で変な感じがした。悠は雫の私服姿を見て胸が高鳴るのを感じた。Tシャツにジーンズ、ただそれだけのシンプルな格好なのに何故か悠の心に響いた。悠は雫を上から下まで見た。そしてふと、これは所謂デートというやつなのか?と今更ながらに思った。

雫は是非我が家に来てほしいとデートの内容を申し出てきた。

悠は警戒心があったが、雫がどんな暮らしをしているのか見てみたかったし、ゆっくり話を聞きたいとも思った。

「いいよー!」

悠は少し照れながら承諾した。

雫は安堵したようだった。

「女の子が初めてのデートで男の部屋に来るなんて大丈夫?俺ってそんなに危険性なさそう?」


まだ序章なので、アドバイスや感想を参考にして書いていきたいのでどちらも書いて下さると喜びます!

なろう初心者なので至らぬ点があると思うので、指摘してください!

読んで頂いてありがとうございます!

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