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第6話 これはクイズじゃない、むしろ大喜利だ。

長かった鬼ごっこにも、遂に終わりの兆しが。

しかし、スバルの体力もそろそろ限界に近い。

スバルは、この鬼ごっこを無事完遂することができるのか?!

僕らはミイラ男たちを倒し、またしてもホーリータワーに向かう道ををやる気なく歩いていた。


トマによると、残りの人間役13人のうち、11人は妖精で他はゾンビとフランケンシュタインのコンビだそうだ。まだ結構人数が残っている。

「ねえ、なんか妖精多くない?」

僕がリンに尋ねると

「あいつら、『へにょっと・ぼうる』っていうサッカーチームのメンバーだから、11人なの!

 えーと、サッカーは11人で試合するんだよね??」

と返ってきた。


なんて弱そうなチーム名だ。

それと、リン。サッカーの人数覚える前に鬼ごっこのルール理解しろ。

ったく・・・、ボケが多すぎてきりがない。ツッコみ気力ももう残ってないぞ。


「なあ、スバル。お前の剣、ちょっと見せろよ」

カミ男が人間の姿で歩きながら、僕の手から剣をグイっと奪い取った。

お前はどこぞのガキ大将か。

さっきはリンの攻撃を受けて()()()()()()になっていたカミ男だが、トマがリンに頼み込んで『治癒魔法』でけがを治してもらたため、完全回復している。

(トマさん優しい!)


復活を遂げたカミ男は、僕の剣をしげしげと眺めた。

「おー、結構しっかりした刃じゃねーか。で、どうやって炎を出すんだ?」

カミ男がこっちを見る。

僕はため息をついた。

「なんでこんなガチな剣が完成しちゃったのかも分かんないのに、知らないよ、炎の出し方なんて。さっきのは、気づいたら燃えてたってだけだよ」

カミ男は、ふーん、と興ざめた顔で僕を見下ろすと、剣をまた興味津々で観察し始めた。


ので、僕は彼の横からスッと剣を奪い返した。カミ男が、「おいっ、返せよ」みたいな動作をするが、気づかないふりをして、僕は剣を自分の体を挟んでカミ男の反対側の手に持ち替えた。

カミ男が、すごく残念そうな顔をしているが知ったことではない。

カミ男が剣なんか持ってたら、けが人が出ることは必至だ。


はあ。僕はまたため息をつく。この剣、どうしようか。持ったまま歩いてたらいつか警察に職務質問されそうだし、かといってその辺に置いていくのも無責任で気が引ける。

あーあ。せめてさっきの金属棒に戻ってくれないかな。


僕はそう考えた瞬間、剣を持っている右手に違和感を覚えた。

今度はなんなんだ。


見ると、剣が光を放ってさっきの金属棒に戻っていた。

・・・無駄にハイテクだな、おい。どうなってるんだ、この棒。

まあいいや。原理はわからないが、とりあえず一件落着だ。

どうせ、焼き芋衝突による金属棒のパワーアップの効力が時間切れになったとか、そんなもんだろ。

僕は一人で納得した。


「あーあ」「もったいな~い!」

カミ男とリンに残念がられた。残念がっても無駄だよ。僕だってどうなってるんだか、さっぱりわからないんだから。不可抗力だ。


「おお、ここが塔の入り口ではないかね?」

先頭を淡々と歩いていたトマが、不意に後ろを振り返った。

僕は周りを見渡した。


この辺りはいつもは人でにぎわっているのだが、今日は誰もいないようだった。建物や道路にはかなり焦げ跡が残っている。これは炎の妖精による、鬼ごっこ開始の合図という名の火柱が原因とみて間違いない。

あちこちから生えてきているツララは、氷の妖精がそれを鎮火した際にできたものだろう。

たかが鬼ごっこのせいで、町がめちゃくちゃになっているのを見て、僕はまたため息をつきそうになった。


目の前には、高さ1031階建ての超大型建造物がそびえている。塔のてっぺんには黒いコウモリが乗っていて、まるで、子供向けアニメの悪の本拠地みたいだ。


ちなみに、あのコウモリはこの町のマスコットキャラ「ルーセット君」だ。

ハロウィンの町のマスコットなんだから、カボチャとかにしとけばいいのに、ルーセット君は目が赤く光る、大きな鋭い牙をぎらつかせたコウモリだ。子供たちからは大変恐れられており、イベントにルーセット君が出ると、みんな大泣きするか逃げる。僕も、こんな怖い着ぐるみが来たら、即逃げると思う。


で、ルーセット君は置いといて。

僕らは今、ホーリータワーの南口の前に、4人並んで立っている。

目の前には、塔内のショッピングモールで何かを買ってきたと思しき、ゾンビとフランケンシュタインがいる。2人とも手にたくさんの紙袋を下げているが、こいつら、人間界のお金なんて持ってたんだろうか?


「お。鬼さんとマスターさん、どーも」

ゾンビがひらひらと手を振った。一瞬、マスターさんって誰だ、と思ったがすぐにわかった。そういえば、僕はリンに何かの支配人(マスター)の仮装をさせられているんだった。


「オモッタヨリ、オソカッタ~ネ~」

フランケンも、変なイントネーションでしゃべってくる。


「おう、パッピー・セット!」

カミ男が手を振り返した。いや、何だよそのどっかのチェーン店みたいな呼び方は。


「まとめて呼ぶなよー。おい、マスターさん、オラ、パッピーだ」

「ワタシハ、セット ダー!」

ゾンビとフランケンが、簡単な自己紹介をした。


本名なのか、それは。またもや、生まれたときからコンビ確定か?

しかも、カミ男に始まり、春夏秋冬とか、ミィ&ラ男とか、みんななんでそんなに名前雑なの?


僕が、異世界人たちの名前に思いをはせていると、

「よーしっ! スバるん! 早速始めちゃおうよ」

リンがほうきで、その辺をくるくる旋回し始めた。

やっぱり今回も、戦うのか。はいはい。

もうそろそろ慣れてきたよ。


「んじゃ、早速、イクゼ!!」

カミ男が十字架ネックレスを、銃に変化させて構えた。銃が2丁生成されている。

すごいな、あのネックレス。分裂できるのか。

僕はカミ男のネックレスを見て、プラナリアを思い浮かべた。


「さあ、こい!!」

パッピーが、空高くジャンプ! ぐんぐん上昇して、ビルの3階くらいの高さまで上がっていく。


「ゾンビって空飛べるの?」

僕が尋ねると、

「ああ、中身がスカスカになっているからな」

と言いながらトマは剣を抜いた。この人も、戦う準備は万全だ。


ん? そこで僕は疑問に思った。

さっきのリンの話だと、ミイラ男も中身空っぽなんじゃなかたっけ。

僕はミイラ男とゾンビの生物的違いが、よくわからなくなってきた。


・・・どっちも生物じゃないか。


カミ男が右手を振り上げた。

「さぁて、第一問! テッテレーン」

彼は、ドラえも〇が秘密道具を出すときの効果音で叫んだ。

「俺の目の前に、俺の行く手を阻むものがいる! それはいったい誰か?」


は? 何? どうしたの、カミ男。

僕は、この唐突なクイズにかなり戸惑った。戦うんじゃなかったのか?

しかも、行く手を阻むものって? 見たところ、カミ男の前には空気とWi-Fiしかいないけど。

お前にしか見えない「何か」でもいるのか?


「どうやら鬼ごっこは、クイズ形式になったようだね」

1人納得するトマ。いや・・・なんで急に?

さっき銃構えたり、剣抜いたりしてたけど、あれは何だったの?


戦うよりよほど安全だから、いいんだけど。

やっぱりこれも、鬼ごっこではなくないか?


「鬼チームと、パッピーセットチームで、交互に4回ずつクイズを出して、

 正解した回数が多いほうが勝ちだよ!」 

リンがほうきで旋回しながら教えてくれた。何でずっと回ってるんだろう。


っていうか、いつの間にそんなルール決めてたんだ。

それとも、鬼ごっこってデフォルトでこういうルールなのか? いや違うよな?


そうか、こいつらは予測不能系バカ野郎共なんだっけ。

僕には理解できないところで、なんかぶっ飛んだ思考回路が働いてるのかもしれない。

僕は、細かいことを考えるのをやめて、クイズに集中した。


カミ男も前に立ちふさがるもの?

ヒント少なくない?


「せんべいだろ」「センベイ、デ~スネ~ィ」

ゾンビとフランケンが当たり前のように言った。

「クソぉ、どうしてわかった?!」

カミ男が悔しそうに崩れ落ちる。


正解なのか。

よくわからないクイズだ。


「常識だろ」

パッピーがあっさり言い放ち、カミ男にとどめを刺した。

いや・・・、カミ男とセンベイの間に、いったい何があった?!


出題者が切り替わった。パッピーが口を開く。

「次はオラたちの番だ。カミ男のクイズよりは、ちょっと骨があるぜぃ。『ゴリラとウサギが、のっぺらぼうと友達になった理由は?』」

パッピーは「どうだ、難しいだろ」とニヤついている。

うん、難問すぎる。分からない。


リンが、は~いと手を挙げた。

「はい、どーぞ」

パッピーがリンを指名する。

「のっぺらぼうに、落書きをするためだよー。『へにょへにょもえぴ』ってね。

 あたしならきっと、そうするなぁ」

リンはそう答えた。


へにょへにょもえぴ?

もしかして「へのへのもへじ」的なもののことか?

リン、だとしたら、へにょへにょもえぴって、あんまり顔っぽく見えないぞ。

頭の右上に謎の丸が乗ってるし、口の形も目の形も、意味不明だ。


「や、やるなぁ。さすがは魔法使い。ノーヒントで正解とは、たいしたもんだぜ」

「へっへー。やったね!」

パッピーとリンが楽しそうにしゃべっている。


正解基準がわからなすぎる。

この問題、ゴリラもウサギも関係ないんだな。しかも「へのへのもへじ」ですらないんだな。


「次は私が行こう」

トマがおもむろに進み出る。

うん、もう、さっさと終わらせてくれ。

僕は早くも、この正解不可能なクイズ大会に飽きてきていた。

「カミ男とリンが、にらめっこをした。勝者は?」


「カミオ! オモロイ カオ シテルシ」

「おう、絶対そうだぜ。カミ男ほどの生まれつき変顔オオカミ男は見たことねーよ!」

敵陣2人は即答した。なんか、ここまで言われるとカミ男もかわいそうだ。


僕は、カミ男に

「大丈夫。服装をちゃんとすれば、それなりにイケメンだから。たぶん。保証はしないけど」

と言って慰めた。カミ男は

「おう、ありがとな。服装は今もばっちり決まってるけどな」

とウインクした。やっぱり、彼の服装センスはいまいち共感できない。

僕は、うっすら微笑んで、この話題を終わりにした。


トマはにっこり笑った。

「2人とも、不正解だ」

「はー?」「ハァ?」

パッピーセットは不満げに声を荒げる。

「そーだよ、トマ! あたしがカミ男の『先天性爆笑フェイス』に勝てるわけないじゃん!」

リンの必死の叫びが、上空から降ってくる。


僕は、カミ男のことを『先天性爆笑フェイス症候群患者』だとは思わない

(むしろヤツは、不治の病『厨二病』を患っていると思う)が、

リンが勝つという根拠も謎だったので、トマに説明をお願いした。


「うむ。リンはいつも、カミ男との勝負となると用意周到だからな。

 きっと、にらめっこの時は、鏡を持っているはずだ。リンは鏡にカミ男の決め顔を映し、カミ男は己に屈 服するだろう。どうだい?」


「たしかにー。あたし、今も鏡もってるよ!」

リンはほうきの上で鏡を取り出して見せた。


なるほど、今までのクイズと比べるとまだ筋が通っている。

その場にいた全員が感心した声を上げた。

「お~」「オ~」「ほぉ~」

パッピーセットに加えて、カミ男まで納得している。


ただ、僕は少し気がかりなところがある。

鏡の使用って、反則ではないのだろうか?

よくかんがえたら、にらめっこの細かいルールなんて、気にしたことなかったな。


「ツギハ、ワタシデ~ス」

セットが、間髪入れずに次の攻撃を繰り出してきた。


「ワタシノ、メガネハ、ドコデスカ~?」

「いや、知らねーよ」

僕はつぶやいた。それって、問題じゃなくて、質問じゃないのか?


「セイカイ、デ~ス。ワタシ、メガネッテ、ナニカ、シラナイデ~ス」

え、そのレベルで知らないのか。


「そりゃだいぶ重症だぞ」

「頭のねじ、落としたの?」

カミ男とリンにまじめに心配され、セットはしょんぼりした。

「コンド、ビョウインデ、ケンサヲウケマ~ス」

セットのタームは瞬殺で終わった。


「お大事に~。じゃ、次、あたしね☆」

リンは、そう言って、びしっとパッピーに指を突き付ける。

パッピーが身構えた。


「もしも、あたしが宇宙に行くとしたら、何をするでしょーか?」

・・・そのクイズ、パッピー関係なくない?

なんで指さしたの。

しかもどんな問題だよ。もはや大喜利の題材じゃないか。


「んー。・・・豆まき?」

ゾンビは自信なさげに答えた。いったいこの問題の、どこに豆まき要素があるんだろう。


「う・・・正解。くやしい~」

リンが、ほうきで超高速八の字飛行をしながら叫んだ。

正解なんかい!


こんな意味不明なクイズ大会は、人生で初だ。考える気も失せる。

僕は、金属棒を地面に突き立てて、そこにもたれて体を支えた。

星空を見上げてから、眼を閉じる。眠いな。このまま眠れたらどれだけいいか。

このまま寝てしまって、気づいたらこいつら全員いなくなってたらいいのに。


しばらくして、僕は再び目を開けた。

いや、ここで鬼ごっこを放棄しても、たぶん家を取り返すことはできない。

待ってるだけじゃ、ハッピーエンドはやってこない。

戦闘よりマシだ、たかがクイズだろ、がんばれ自分。

僕は自分を鼓舞した。


「はい、次は、このパッピーが出題するぜ!」

パッピーが決め顔をする。

なぜ正解した瞬間じゃなくて、このタイミングで決め顔なのかは不明だ。

「レオナルドとパーリファイの腹筋が割れた理由は?」


誰だそれ。僕は早々に考える気を失った。

だって・・・レオナルドもパーリファイも知らないし。

分かんないよ。


カミオもうなって考え込んだ。

「レオナルドには、腹筋なんてないだろーがよ・・・」

そーなのか? レオナルドって腹筋無いの?

レオナルドって何者? 野菜かなんかなの?


・・・僕は、レオナルドを野菜だと考えそうになった時点で、そろそろ己の思考力の限界が近いことを悟った。疲れた。早く帰りたい。


「パーリファイは右半身しかムキムキじゃないじゃん、ねえスバるん」

リンも不満気につぶやいているが、ねえスバるんとか言われても、僕はパーリファイ知らないからわからない。じゃあ逆に、パーリファイの左半身はなんなんだ? どうやったら右半身だけ、鍛えられるんだ?


「・・・っ。いいから答えろよ」

パッピーは、不満たらたらな鬼たちにイラついているようだ。


しばらくの沈黙の末、トマが口を開いた。

「それはそうと、最近レオナルドの全身に、緑色の毛が()()()()植毛されたという話は、本当かね?」


それを聞いて、僕の脳内がますます混乱を極めてきた。

いや、レオナルドってマジで何者?

緑の毛がびっしりで、腹筋がない??

キモくない?


トマの発言を受けて、ゾンビとフランケンは目を見開いた。

「え? マジで?!」「チョー、ウケルンデスケド」


「なぁ、見に行ってみようぜ、セット!」

ゾンビが目をキラキラさせている。

「サンセイデ~ス」

フランケンも、にやけが止まらない。

2人とも、レオナルドをからかいに行きたくて仕方がないという顔をしている。

パッピー・セットは2人して顔を見合わせて、力強くうなずきあった。

2人が僕ら鬼陣営のほうに向きなおる。


「というわけで、だ。俺たち帰るわ! ちょっくらレオナルドに会いに行ってくるぜ。じゃーな!」

「アバヨ!!」

こうして、パッピー・セットは自分からワープロードを開いて、唐突に異世界へと帰っていった。


急展開だな、おい。


僕は、人間役を見事人間界から追い出してくれたレオナルドの力を、一瞬崇め奉った。

レオナルド、おそるべし。


「ちなみに、レオナルドって何? パーリファイも何者?」

彼らは去ったあと、僕はそう尋ねた。


「レオは骸骨少女でー、パーリンは一人二役で有名な、舞台俳優さんだよー!

 パーリンはねー、右半身と左半身が別人格なんだぁ。面白いよ、キャハハ」

リンは楽しそうに笑った。

僕は、レオナルドって女の子なんだー、というところで理解の限界に達した。


骸骨に植毛する方法も、左右別人格な俳優も、きっと僕の人生には無縁だろう。

・・・ぜひとも無縁であってほしい。

 










残るは妖精11人。

11人まとめて片をつけますよ。

次話で完結したらいいなー。

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