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第一話 どうやら家が変人たちに占領されたらしい。

誤字脱字、文法ミス、その他ご指摘をバンバン送ってください。

 さあ、帰ろうか…

 僕は荷物をまとめて立ち上がった。空にはまだ夕方にもかかわらず満天の星が輝いている。

 というか、この町では星と月が24時間年中無休で輝き続けている。太陽は昇らない。どうしてそんなことになったかは後で説明しよう。その前にまずは僕の自己紹介を。

 僕は一之瀬昴星(すばる)。万聖節市night町10-31番地マンションスクワッシュ1031号室で一人暮らしをしている。職業は、パソコンやスマホなどの情報機器系統なら何でも修理するという仕事をしている。僕はこの仕事を修理屋と呼んでいるが、同業者にはまだ一度もであったことがない。つまり新手の自営業だ。最近の世の中の情報化のの波に乗って依頼件数は右肩上がりとはいえ、まだまだ依頼は少なめだ。

 …そんなこと言ってたらなんか気が重くなりそうだ。僕の紹介はこれぐらいにしておいて、次は太陽の話をしよう。

 さっきも言った通り、この町では太陽は昇らない。いや、むしろ昇らなくなったといったほうが正しいだろう。数年前、この町を照らしていた太陽の電池が切れてしまったことが原因だ。僕個人としては、そもそも太陽が電池式だったことに驚いたんだけど、町の人たちは「洗濯物が乾かない」とか「太陽光発電ができない」とか実生活面の支障ばかり気にして、電池のことはすんなり受け入れていた。だから僕も今となってはあまり難しいことは考えずに、太陽って電池で動いてるんだと素直に信じることにしている。ただ、このような心境に至るまでは、朝になっても太陽が出てこないのを痛感するたびに、太陽は電池で動いていたんだと自己暗示をかけていた。今考えたら心労の絶えない毎朝だなと思う。

 読者さんの中には電池なのなら交換すればいいじゃないかと思う人もいるかもしれない。ごもっともな意見だと思う。が、残念ながらそれはできない。まだ太陽まで行けるような宇宙船は開発されてないし、太陽にはめる電池が単一電池か、単二か、単三か、単四か、あるいは規格外のbigサイズなのか、といったことが何も解明されていないからだ。(個人的に単四ではないんじゃないかとは思っている)


 しかもたちの悪いことに、電池切れを起こしたのはnight町の太陽だけであるため、この町に住んでいたアウトドア派をはじめとする太陽を好む人々が次々と転居していき、昔は賑やかだったこの町もすっかり人が減ってしまった。 

 …なんでnight町の太陽だけが昇らないのか説明するからもうちょっと頑張って読んでほしい。

(1話あるあるのやたら長い初期設定というやつだ)


 街には電子機器があふれ、人口のほとんどがスマホとともに生きるようになってしまった近年。数十年前から情報化が至る所で騒がれるようになったわけだが、ついに情報化は人間だけではなくこの世界にも影響を与え始めた。つまりこの世界ごと「情報化」したということだ。空気の組成にWi-Fiが組み込まれそこらじゅうを飛び交い、大声で叫んだ言葉は自動的にtwitersに投稿され、どんな物体でもプログラミングすれば実体化することができ、そしてなにより、建物も森も海も空も、そして人間もすべて原子レベルまで分解していくと「0と1」だけで構成されている、そんな世界になってしまったのだ。

 そして、スマホの中ではカメラ機能は「カメラアプリ」に、メール機能は「メールアプリ」に、と割り当てがあるようにこの世界も細かく分割され、この地区は「正月の町(1年中正月)」その地区は「銀行のある町(ほぼ銀行しかない町)」あの地区は「ゲームの町(町全体がゲーム)」というふうに役割を与えられていった。ちなみにここ、night町は「ハロウィンの町(一年中ハロウィン)」という役割を与えられた。だからこの町には一年中仮装している人も大勢いる。(僕みたいに「ハロウィンとか興味ないし」という冷めた人種は仮装せずに普通の生活を送っている。)今日は本当に10月31日だが今日も僕は仮装なんてしていない。

 こうして細分化された地区同士は、徐々に独立していって、お互いの結びつきを失っていった。今では隣町へ行くためにも「地区境通行許可証」とかが要求されるようになってしまったし、この町の外の情報はSNSで見たり自分で調べたりしない限り、見聞きすることはなくなってしまった。

 さらに、最近各地でいろいろな「バグ」が発生し始めた。隣町ではtwittersの鳥が大量に街を飛び回っているようだし、もっと遠い町ではたちの悪い「電源つかないバグ」というのが起こって町中のありとあらゆるものの電源が入らなくなってしまい、今もそのバグは直っていないようだ。そしてこの町のの太陽の電池切れも、バグの一種だと考えられている。(普通は太陽の電池が切れることはないだろう)

 そんな感じでいろんなバグが各地で起こっているが、幸い地区同士が「細分化」されてつながりが薄くなっているため、他地域のバグが周りの地区にも影響を与えるということはまずない。

 それが、この町だけが太陽の昇らない町である理由なのだ。

(なっがい説明に付き合ってくれてありがとう)


 で、今僕は今日の仕事(近所の学校の職員室のPCのデータが一斉に消えるバグが起こったので、それを修復するという内容だった)を終えて、マンションスクワッシュまでの道を歩いていた。

 明日も仕事がある。今日は早く帰ってさっさとベッドに入りたい…と思いながら歩くこと15分。僕はマンションの1031号室の前で、鍵を右手に立っていた。

 確認しておくけど、僕は一人暮らしだ。そしてここは間違いなく1031号室だ。

 なのに。

 家の中から騒がしい声が聞こえるのは、僕の耳がどうかしているのだろうか。

 僕はしばらく扉の前で突っ立っていた。

 でもよるご飯食べたいし・・・。

 というよりここ、僕の家だし。

 僕が入ってよくないわけがない。

 入ろう。

 僕はは勇気をもって鍵を鍵穴にさして、覚悟を決めてえいっと回した。

 カチャンといつもの音が鳴った。ううん・・・耳は正常なようだ。が、相変わらず中からは賑やかな笑い声が聞こえる。

 僕はもう一回ドアに書かれた部屋の番号を確かめた。

「1031号室」

 OK.ここは間違いなく僕の部屋だ。入ろう。もういっそ僕も中の人に負けないぐらい騒ぐ勢いで突入してやろう。間違ったことはしていないはずだ。

 覚悟を決めて、僕は新緑色のドアをすばやく引き開けた。


 で、またすぐ閉じた。

 今パッと見た感じだと、仮装した人が僕の家にたくさんいてさんざん家じゅうを散らかしたのだろうか。それにしても、人多くない? ざっと三十人はいたぞ。そんなに広い部屋でもないだろうに、なんでまたよりによってこんなところに集っているんだ。くそぉ・・・。

 悔しいけど、30人なんて人数相手に「ここは僕の家だから出ていけ」と言える勇気は僕にはない。

 こんな時こそ あの組織 の出番だろう。僕は警察に連絡しようと、そこら辺をふよふよ浮いていた「電話通信波」をつかみ取った。この矢印型の緑の電波(この世界では電波もWi-Fiも矢印の形をしてそこらじゅうを飛び交っており、素手でつかんで使うことができる)に電話する相手を伝えて、それを発信すると、矢じりのほうからヒューンと緑色の線が警察署までつながり、あとは糸電話みたいに話すことができるという仕組みのものだ。昔はこういうのは飛んでいなくて、緑色の電話が町中にあったらしい。だが情報化の進行につれて緑の電話は減少し、矢印はその個体数を徐々に増やしていったそうだ。今ではあまりに重度の過疎地域でない限りどこにでも矢印が飛んでいる。もはや空気の一部となり果てているので、通話料金は無料だ。

 僕が矢印に向かって「すいません警察署お願いできますか・・・」と言いかけたその時。

 不意に部屋の扉が開いた。

 僕は慌ててドアから離れた。ビビりながらどんな奴が出てきたのかとドアのほうを見ると、中から魔女の仮装をした小さな金髪少女がこちらを覗いていた。セミロングな金髪、薄紫色の瞳、手には魔法のステッキらしきものを持っている。よかった、いかついおじさんとかじゃなくて。

 僕が安心して少し肩の力をぬくと、彼女はこっちを不思議そうに見て首を傾げた。

 いや、不思議な顔しなきゃダメなのは僕なんだが。何で知らない子が自分の家から出てくるんだよ。鍵かけてただろ。

「だーれ?」

 少女は僕にきいた。いやだから、それも僕のセリフなんですが。と思ったが、ここは我慢だ。小さい子相手に声荒げるのは少し気が引ける。

「僕は一之瀬昴星。・・・君は?」

「リン・カリカチュア。ねえ、スバるんは何の仮装してるの? 雲の上に座ってアイス食べながらスマホゲームしてる人?」

「違うっての。なにそのビミョーな仮装、分かりにくいよ。僕は何の仮装もしてないよ」

「えー、今日は10月31にちだよー?それじゃおもしろくないよぉ」

 いいんだよ別に面白くなくても・・・」

 って何の話だよ。リンは僕が「家を帰せ」と文句を言う暇を与えず、僕の右手をつかんだ。

「ねぇ、おいでよスバるん。今。あたしたちここでハロウィンパーティー、やってるの!楽しいよ!」

「え、いや、なんで?! はい?!」

 僕が「なに人の家でパーティー開いてんだよ」という前に彼女は僕の腕をグイっと引っ張って、家の中に引きずり込んだ。ってゆーか、スバるんって。ニックネームつけられてるし。

 リンは僕を引っ張りながら家の奥に向かって叫んだ。

「みんなー! お客さん、つれてきたーっ!」

「客じゃないし、僕この部屋に住んでるんですけどっ!」

 僕はリンの後ろから叫んだ。その叫び声がいきなりtwittersにアップされてしまったので、慌てて取り消しボタンを押した。(先ほども述べた通り、大声で叫んだ言葉は自動でtwitters送りにされるというありがたくない迷惑なシステムが存在する。不便な世の中だ)ちなみに、今twittersを消すために使ったのは「イグ蔵」と呼ばれる画面だ。よくSF映画に出てくる、空中に出現する画面だ。10年ほど前に発売され始めたが、今ではほぼみんなが使っている。

「えー、スバるん、ここに住んでるの?」

 リンがこっちを振り返った。キョトンとした顔をしている。ああやっと言えた。僕は言い返した。

「そうだよ」

「・・・えっへへw ウケるw」

「ウケねーよ。あんたたちは何者だ。どうやって僕の家に入った?」

「スバるん、怒んないで~」

 リンが僕の目を覗き込んだ。そうだ、まずは落ち着こう。こんな小さい子相手にイライラしたってつかれるだけだから。僕は大きく深呼吸した。よし。

「えーと、さっきも言った通り、ここは僕の家なんだ。だから・・・」

「うん!じゃあなおさらパーティーに参加しなくっちゃ!ほら早くリビングに入っておいでよ。ちゃんと仮装もさせてアゲル!!」

 リンは上機嫌で僕を家の中に引きずり込んだ。おいおい、まったく今のセリフの趣旨が理解されてないぞ。っていうかこの子力強いな。なすすべもなく引きずられてるんだが。すごくダサい絵に仕上がってるんだが。僕はとうとう激しくダサい状態で人であふれかえったリビングまで来てしまった。うわー、みんなやたらと仮装の完成度が高い。そんな完成度高めな迷惑パリピの一人が僕のほうを見てつぶやいた。

「そいつがこの家の持ち主か。フーン、なるほど。雲の上に座ってアイス食べながらスマホゲームしてる人の仮装か。なかなかいいセンスだ。」

「だから違うっての。仮装じゃないし。普段着だし。ってかその仮装センスいいのか?」

 僕はその人に聞き返した。彼は灰色ががかった黄土色の髪をかき上げながらうなずいた。

「俺のこの服装を見れば一目瞭然だろ。俺様のファッションセンスのすばらしさが!そんなハイセンスな男がセンスいいって言ってんだ。お前の仮装もセンスに満ち溢れてるはずだろ」

 僕はその人の服を上から下までざっと見てみた。。ずいぶんとハードロックな格好をしている。黒いジャケットに、やりすぎなぐらい破れたダメージジーンズ。首から銀のネックレスがぶら下がている。

 んー。この人にセンスいいって言われてもな。若干複雑な心境に陥るやつだこれは。

 リンがやれやれとため息をついた

「ねえ、カミ男(かみお)。そんな服着てそんなこと言ったらスバるんが困っちゃうでしょー」

 僕は心の中でうなずいた。

「そんな服ってなんだよ。お前だってそんな全身真っ黒な服着て生意気言ってんじゃねーよ」

 カミ男が言い返した。

「だって、あたしは魔女だもん。ねえカミ男。気づいてないかもしれないけど、ズボンが大破してるよ」

「え、マジで⁈ じゃねーよ、ファッション!! 俺だってロックギタリストなんだからな」

「ふんっ。どうせギターなんて弾けないくせに。ねえ」

 リンは僕に言った。え、そうなの。いや、知らないんですけど。

「スバるん、こんな似非ギタリスト、無視していいから。さて、気を取り直して、スバるん。仮装して!」

 いや、急に言われても困るよ。仮装ったって何したらいいんだ。何にも仮装道具持ってないし・・・。

 そもそも、仮装とか、イヤ。面倒くさい。

「えー・・・ほんとにやらなきゃダメ?」

 僕はリンに控えめに仮装したくない旨を伝えた。

「うん。絶対にやらなきゃダメ!誰が何と言おうと、あたし、やるんだから!」

 ああ、この子、行間を読む才能が絶望的に低レベルだ。

「僕、仮装とか、苦手なんだけど・・・」

「うん。絶対にやらなきゃダメ!誰が何と言おうと、あたし、やるんだから!」

「ああ・・・そー。うん」

 なんかどーでもよくなってきた。もう知らん。

 リンはにっこり笑って、魔法のステッキを振った。

「パラパランぽん、ぴいいいいい」

 呪文ダサないか。そんなんでいいのか。僕が黙ってみていると、ステッキの先が緑色に光り始めた。

 おお、結構ハイテクなおもちゃだな。ちなみに僕は今まで魔法とかお化けとか、あんまり信じたことがない。大体のことは科学技術によって解明できそうな気がしている。

 ので、僕はその光を見ても、そんなに驚かなかった。音声に反応するペンライトみたいなもんなんだろうか。リンはこっちに杖を向けた。杖の先で光っていた緑のライトがこっちに飛んできた。おお??なんだ?新手のプロジェクションマッピングか?光の塊は一瞬にして僕の体を包み込んだ。

 最近の映像技術、すごいな。

 しばらくして、緑の光が消えたとき、僕は、高そうなスーツをまとってその場に突っ立っていた。

 最近の技術発展は・・・すごすぎないか??

 僕は一人感激していた。

「リン、その杖どこで買ったんだい?」

 リンは不思議そうな顔をした。

「え?おばあちゃんが作ってくれたんだよ」

「え、おばあちゃん天才?!」

「うん、うちのおばあちゃん、村一番の魔女だから!」

 おお、あくまで魔女設定を貫いているな。僕は、リンに役者の素質を見出した。

「ちなみに、リン。彼に何の仮装を施したのかね?」

 近くにいたザ・老紳士みたいな老紳士会話に入ってきた。

「バーのマスターだよ!スバるんはこの家の主人(マスター)だから」

「なるほど」

 僕は一応彼女には僕の訴えが届いていたのかと内心ほっとしかけたが、僕がこの家の真の持ち主だと知ったうえでなお我が物顔でハロウィンやってんのかと気づいた瞬間、そんな感情は消え失せた。

「さあ、スバるん、ようこそあたしたちのパーティへ!」

 リンはめいっぱい腕を広げた。彼女の後ろにはミイラ男、ゾンビ、フランケンシュタインなど雑多なパリピが雑多に盛り上がっている。

「ちなみに全員仮装じゃなくて、ホンモノだからね!」

 リンはそう言い残して、さぁ~て、あたしは何か飲み物でももらってこよっかな~、とどこかへ行ってしまった。

 ・・・へ?

 全部・・・ホンモノ???

「全部ホンモノって、どーゆーこと?!」

 遠ざかっていくリンに向かって叫んでしまったせいで、また括弧の中身がtwitters送りにされてしまった。ああうっとおしいなあもー。僕はまたそのツイートを削除した。

「つまり、あそこにいるミイラ男は本当にミイラであり、あのゾンビは本当に一度死んだうえで半分蘇生した状態だということだ」

 さっきのジェントルマンキャラな長身男性が教えてくれた。

 え?

 ええ?

「いや、おかしいでしょ。ただの仮装でしょ。もう子供じゃないんだから、お化けも魔法も信じてないよ」

 僕は驚くというよりあきれながら言った。

「今日は4月1日じゃないよ? 10月31日だよ?」

 彼は首を横に振った。ああ、やってらんないね。家占領されるわ、よくわからん仮装させられるわ。

「じゃあ、おじさんは何者なんですか? 普通の老紳士にしか見えないですけど」

 僕はききながら思った。そういえば、僕のこの仮装、プロジェクションマッピングかと思ってたけど、リンがいなくなっても普通に服として成り立ってるな。リンはいったいどんな手を使ったんだ。まさか、本当に魔法だなんて言わないでほしい。僕の今までの人生の概念が崩れそうだ。

 彼はにこやかに答えた。

「私はこう見えて吸血鬼なんだよ。最近は年を取ってすっかり柔和な人柄になってしまったが。ああ、でもちゃんと牙はあるんだぞ」

 おじさんは口を開けて牙を見せてくれた。ううん・・・。確かにめちゃくちゃクオリティ高いな。

 いやあでもやっぱり、にわかに信じがたいですぞい。信じがたすぎて僕のテンションおかしくなってきたぞ。

「じゃあ、おじさん」

「ああ、名乗っていなかったな。私はトマ・ヴァルクだ」

「トマさん。カミ男はいったい何者なわけ?ロックギタリスト?」

「あいつか、まあ、ロック好きではあるが、彼の種族は狼男だ。オオカミ男のオオ・カミ男だ」

「名前めっちゃ適当w」

「ああ・・・そうだなテキトーだ」

「カミ男は満月になるとオオカミに変身するんですか?」

「満月の日だけではない。あいつはオオカミ男の中でもずば抜けて変身が得意だから、いつでも姿を変えられる」

「ああ、そうさ。なんなら今ここで変身してやろうか?」

 カミ男が僕らの会話に割り込んできた。

「いや、いらないよ。家の中にオオカミがいるとか、なんかイヤ。遠吠えとかされたら絶対お隣から苦情くるって」

 僕は丁重に(?)お断りした。

「なんかイヤとはなんだ。まあいい、スバル。これからよろしく頼むぜ」

 何を頼まれたんだ僕は。

「はあ・・・どーも」

 僕は適当に流しておいた。

「とことでカミ男。いったいどうしたんだい、そのすり切れつくしたジーンズは。ギターの弾きすぎで破れたのかい?」

「え、そんなにぼろってる? ってファッション!!!」

「ああそうか。カミ男はギターを弾けないんだったかな?」

「弾けるわ!」

 トマとカミ男が何か言いあっているが、僕はここまでの成り行きで様々な事実を受け入れすぎたせいで、半放心状態だった。


 それからしばらく放心していたのだろうか。次にふっと気が付いた時には僕は椅子に座っていた。なんだか頭が痛い。どうしたんだろう。

「あ、スバるん起きた~」

 リンは、どこから持ってきたのだろうか、ほうきをまっすぐに立てて器用にもその上にちょこんと座っていた。

「お、生きてたか。スバル、さっきは大丈夫だったか?」

 カミ男がキッチンのほうから出てきた。だから、お前らの家じゃないんだよここは。

「さっきって?」

 僕は尋ねた。カミ男はちょっと肩をすくめ気味に言った。

「いやあ、さっきどっかからこんなもんが飛んできてよお。スバルの頭にドストライクでヒットしたんだよ。覚えてないか?」

 カミ男は手に持っていたものを僕に見せてくれた。

 僕の家の冷蔵庫に入っていたマヨネーズだった。心なしか中身が減っている。

「え、僕これにヒットされて気絶したの」

 ああだから頭が痛かったのか。

 ・・・我ながらダサすぎる。いつもならさすがに怒ってただろうが、頭も鈍い痛みが残響のように残ってるし、なんかもどうでもよくなってきた。中身が減ってるのも・・・もういい。

「そーだよ? スバるん、なかなか起きないから、強制的にゾンビにしようかなんて話してたとこだったんだよ」

 リンがまじめな顔していってくるが、これ僕一歩間違ったらゾンビになってたってことか。

「って、どんな状況だよ。なんで凶器がマヨネーズなんだよ。そのオチきいたことないよ。それと、マヨネーズはこっちにかして。冷蔵庫の中に戻しとくから」

 僕はカミ男からmyマヨネーズを奪い取って冷蔵庫の元の場所に安置してきた。

 時間は午後11時を少し過ぎていた、そして部屋にはリン、カミ男、トマしかいなくなっていた。さすがに夜遅いし、ほかのモンスターたちは帰ったんだろうか。っていうかモンスターってもっと遅い時間に活動してるもんじゃないのか。帰ってくれたんならいいんだけど。文句はないんだけれども。なんか意外だ。

「そこのお三方。君らは帰らなくていいの?」

 僕は残った三人にきいた。リンは少し戸惑った顔をした。

「なんで帰るのー?」

「いや、だってもうほかの人いないし」 

「他のやつらはみんな街に出てったぜ。炎の妖精が鬼ごっこしたいってうるさかったからさ。俺たち三人が鬼で、ほかのやつらは無力に逃げ惑う人間役だ。どうだ、スバルもやるか?」

 カミ男は部屋の中央に置かれていた大きなテーブル(僕のじゃないから誰かが持ってきたんだろう)に足を組んで座りながら言った。

「私たちはあと五分後に人間役の追跡を始める予定だ。参加するなら準備してくれ」

 トマは、その辺に散乱していた椅子のうちの一つ(あれは僕のだ)に座ってワイン(僕のじゃない)を飲んでいた。

「いや、いいよ。鬼ごっことか小学生じゃあるまいし。今日は疲れたからご飯食べたらもう寝る」

 僕は思い切り伸びをし、立ち上がった。

「そっかー、残念。あたしたち三人で頑張るしかないね」

 リンはさみしそうに言った。

「うん、でもほんとに鬼ごっことか得意じゃないんだ」

 僕はキッチンへ歩き始めたが、ふと立ち止まった。なんか今の会話、違和感を感じる。何でだろう。ちょっと状況を整理しよう。

 1.炎の妖精が鬼ごっこを提案し、みんなが鬼3人を残して街に拡散した。

 2,鬼たちは僕を鬼ごっこに誘ったが、断られて残念そうな顔をした。

 3,3人は今作戦会議的な感じで話合いをしている。

 うーん。何だろうなこのぬぐい切れない違和感は。

 そこまで考えて、僕はハッとなった。

 みんな(=謎の化け物たち)が街に拡散して好き放題やっている。

 やばくない???

 その時窓の外で、町の中心あたりからどでかい火柱が出現したのが見えた。

 やばくない??!! あれ、あいつらの仕業か??

「お、炎の妖精が『鬼出発』の合図を出したぞ!」

 カミ男がその光景を見て歓喜に満ちた叫び声をあげ、テーブルからシュタッと降りた。こんな時間に近所迷惑だからやめてくれ。

「定刻よりも少し早いな」

 トマが自分の腕時計を見ながらつぶやく。

「ま、いいじゃん!行こ行こ」

 その横でリンがほうきにまたがって宙に浮いている。準備万端じゃねーか。って・・・どうやって飛んでるんだ。今度こそどんな仕組みだよ。すごい静かに飛んでるからエンジン式じゃなさそうだし、環境にはよさそうだが、なんせほうきで飛ぶなんざ人間のポリシーに反してませんか。

 やっぱりリンってホンモノの魔女なのかなあ・・・。

 いや、それどころじゃない。僕は出発しようとしている3人に叫んだ。

「何、町の中心から案など派手な火柱立ててんの?! そんなことしたら火柱の周りにいる人が・・・」

 そこまで言ったところでまたセリフがtwittersにアップされていることに気付いたが、もう消すのが面倒なのでそのままにした。

「だいじょーぶだよ。後で氷の妖精が沈下してくれる約束だから!」

 リンは当たり前のようにいているが、まったく当り前じゃない。そもそもそういう問題じゃない。

「あんたらが正確に何者なのかはよくわからないけど、ここはまちがいなく人間界だから。妖精とかお化けとかに暴れまわられたら困るんだよ。今すぐ全員連れ戻してお国に帰ってくれないかな?」

「えー、やだやだー」

 リンがほうきの上で足をバタバタさせた。僕は三人の中ではまだ一番まともなんじゃないかと思われるトマにSOSの視線を送った。

「実を言うとね、私もこの世界がすっかり気に入ってしまったよ。何せここは一日中夜が明けない町。吸血鬼にとってはまさに理想郷だ。・・・空気中を動きまわっている色とりどりの矢印たちは少々目障りだが」

 あの・・・トマさん。僕のSOSを無視しないで。僕は泣きそうだよ。

「スバル、俺も気になっていた。この矢印はなんだ。虫か鳥の一種か?」

 カミ男も僕に尋ねた。僕はため息をついた。もうなんなんだよこいつら。

「ああ・・・それな」

 僕はこの世界の空気について説明した。空気中にはいろいろな矢印型の電波なんかが飛んでいる。緑色の矢印は、さっき僕が使おうとした「電話通信波」、青色はfreeのWi-Fi、黄色がテレビの電波・・・とか色によって種類が決まっている。そういう矢印はだれでも自由にキャッチして使うことができる。Wi-Fiを使いたいとなったら、文字通りWi-Fiをつかめばいいというわけだ。

「赤色の矢印は使用中ので、金銀銅のは有料だから、うかつにキャッチしないようにね」

 僕は付け加えた。これぐらい、この世界じゃ幼稚園児でも知ってるぞ。この人たち、いったいどこからやってきたんだ。もしかして新手の宇宙人だったりするのか。

「へぇ~。このウィーフィーとかいうやつ? 俺はなんかこいつが気に入ったな」

 カミ男はすでに青矢印を数本つかみ取って、ねじ曲げて遊んでいた。それ、インターネットにつないで使うんですけど? もしかしたらそもそもインターネットって何か知らないかもしれないけど。少なくとも曲げるもんじゃないんだよ。

「しかもウィーフィーじゃなくてワイファイだからね」

 僕、なんでこんなこと説明してんだろ。自分でもバカらしくなってきた。

「で、矢印は今どうでもいいんだよ。とりあえず、鬼ごっこで逃げてるやつらを全部連れて帰れ!! いいな?」

「ふぇー」「んー」「・・・」

 リンが泣きそうな顔をし、トマは困った顔をし、カミ男は無言で僕をにらんだ(怖いよ、カミ男)

 しかもまた『鬼ごっこで逃げてるやつらを全部連れて帰れ!!』がtwitter送りにされている。ああもう。面倒だな。後でまとめて削除だ。

 と思って、画面を見ていると、さっきの『何、町の中心からあんなでっかい火柱立ててんのさ!?』にたくさんコメントが来ていた。

 ー助けて!俺の家が火柱に飲み込まれてるんですけど⁈

 ー私の家も!!

 ー茶柱立てても火柱立てんな

 ーうまいこと言ったみたいに投稿してんじゃねーよ、ハゲ

 ー火柱の周辺に不審者がうろついているらしい。体が透けてるやつとか

 ーあたし、全身にトイレットペーパー巻いてる男見たよ

 ー今日ハロウィンだし。それただの仮装じゃねw

 ー数名の男がWi-Fi振り回してます

 などなど。ああ、まずいことになってんじゃん。

「ねえ、お願いだから、帰って」

 僕は三人に頭を下げた。しばらくの沈黙の後、リンが言った。

「イイヨッ!」

「え、ほんと!}

 僕のセリフがtwittersに垂れ流されたがもういい。構わないさ。それぐらいテンションが上がった。リンがうなずいたのを見てさらにうれしくなった。さらば変人どもよ。

「た・だ・し、一つ条件がありま~す」

 リンが。イェーイと拍手した。キョトンとする僕に、リンはびしっと指を突き付けた。

「スバるんも一緒に鬼やってよ!」

 へ・・・?

 僕も鬼をやれと? あんな妙なやつらを捕まえろと?

「イヤなんだけど・・・」

「え~、じゃあ帰ってあげないよぉぉぉ?」リンがすねたみたいに指をくるくる回した。

「え~、それは困るよ・・・」

「スバル、願い事に代償はつきものだぞ」

 トマがにこやかに諭してくれた。人の家占領しといて何を言うか。僕は不法侵入者に帰れと言ってるだけだ。

「だからイヤだって・・・」

 僕がしぶっていると、カミ男がさっとこちらに詰め寄り、いきなり胸ぐらをつかんできた。

「おい、やろうぜ鬼ごっこ。愚かな人間役どもは、俺たち4人の鬼から必死で逃げ惑うんだ。それを追い詰めて、しとめて、服従させ・・・。やがて俺たちがすべての人間を捕まえたとき、俺たちは人類の覇者となるのだ!! どうだ・・・ぞくぞくしてこないか・・・?」

 何言ってんだろこの人。

 頭おかしいの?

 オオカミってこーゆーもんなの?

 っていうか胸ぐらつかむなよ。息苦しいし、顔近いよ。

「さあ、答え(アンサー)をきこう。スバル!!」

 カミ男が大げさに叫んだ。リンがドキドキしながら息をのんでいる。トマがなぜか遠い目で空を見ている。(僕のことなんて興味ないんだろう・・・)

 僕はそろそろほんとに苦しくなってきたので、カミ鬼手首をつかんで聞いた。

「僕が参加したら、必ず帰ってくれるんだな?」

 カミ男の肩越しにリンがうなずいた。よし、じゃあ仕方がない。背に腹は代えられないと思って、僕はついに折れた。

「わかったよ。僕も参加する」

「ヤッター!!!」「決まりだな」「よく言った!」

リン、トマ、カミ男がそれぞれ言った。僕もグイっとカミ男を押しのけた。

「さあ、早いとこやっちゃおう」

もう・・・なんでこんな目に合わなくちゃいけないんだ・・・

僕はとりあえずノートパソコンと財布をひっつかみ、窓から飛び出していこうとしている3人を後ろからガッと引っ張って引き戻し、「ここ、マンションの10階だから。ちゃんとドアから出てくれるかな」と言いながらドアのほうに押してった。リンは飛べるからともかく、残る二人は窓から落ちたらアウトだろ。

ったく、何考えてんだか、こいつらは。頭大丈夫なんだろうか。

今日は長い夜になりそうだ。僕らは部屋のドアを開けて、夜の街に踏み出した。


<(2)に続く・・・>

長ったらしい連載になる予定です。

完結するかすら怪しいです。

もし第二話を執筆することができたら、またお会いしましょう。

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