空からの贈り物……?
第3話です。よろしくお願い致します。
黒い桜が咲きそうだと話した翌日、見事に黒い桜が咲いた。
本来ピンク色に咲く桜の花が黒色だっていうのに、逆に艶やかに見えてしまうほど美しい。
その黒い桜の花びらは強い風が吹いても散ることはなく、その存在感を放っている
しかし、肝心の『幸福』が来ることはなかった。
それにも関らず、桜東の村にはうわさを聞いた人たちが観光目的に溢れかえっていた。
黒い桜の下には花見をする人もいれば、記念にと桜の枝を折ろうとする輩まで出た。
その辺りの警備は役人が取り仕切って、枝を折ったら重罪とされた。
そんな黒い桜が咲いてから数日後――
◇◇◇
「はい。じゃココにハンコください」
「あいさー」
「……はい確かに。またのご利用お待ちしてます」
「じゃあの。遅くまで遊んどるとさらってしまうぞい……イヒヒヒ」
「ばーさん、もう子供じゃないからね」
今日も変わらず自転車に乗って配達中だ。変わってるのは村のあっちこっちで無駄に観光客がいるくらい。結構へんぴな所にあるこの村に人がこんなに居るのは珍しい。
隠れ婆のばーさんに荷物を届けて自転車に乗る。これで今日の分は終了、午前中で終わっちゃったな。急ぎの用もないし、のんびりしようかな。
「さーて」
「あのすみません」
「?」
自転車で帰ろうとしたらなんか知らない女性の声が聞こえた。振り向くと、ベッタベタな化粧をしてココらでは珍しい洋服を着た3人組の女性たちが居た。その両手には何やらいろいろ大荷物……あーなんか察しついた。
「黒い桜のある広場ならこの道を真っ直ぐ行った桜並木の更に奥ですよ」
指さし案内で大まかに黒い桜のある広場を教えた。最近はこんな観光客ばっかりで、1日に1回はこんなこと聞かれる。
どうやら予想は合ってたみたいで、声をかけてきた女性がお礼を言ってきた。
「ありがとうございました」
ご丁寧に頭も下げてきたから釣られてこっちも軽く会釈した。そして今度こそ帰ろうとしたら遠慮がちに声をかけられた……今度は道を聞いた女性じゃないみたい。
「あの、良かったら……一緒に行きませんか?」
3人組の女性たちの内の1人がそう言った。
顔を赤くしてモジモジしてるけど……可愛くない。
「どこに一緒に行くんですか?」
「だ、だから……おはな」
「あー厠だったらすぐそこの薬屋の店主に頼めば貸してくれるよ」
「え?」
「だって『お花を摘みに行く』んでしょ? じゃあ配達の依頼ならいつでも受けるからご利用下さいませ」
テキトーに話を区切って自転車で帰る。なんか後ろでキーキー言ってたけど無視無視。
こんなことも5回に1回はお誘いが来るんだよな。面倒だからテキトーに言い訳作って逃げるけど、意外にモテる部類なのか? まぁ悪い気分じゃない。
自転車で帰りながら午後からどうしようかと考える。
ここ最近は黒い桜騒動で観光客が増えると同時に、どこぞの偉い人から黒い桜に関する文とかそれに対する村の役所の返事の文とかも比例して多くなっていた。文字通り飛び回っていた配達も日が過ぎる毎に落ち着き始めた。
力も結構使ったし、午後から昼寝しても誰も怒らないだろうし、むしろ『休め!』って言われたくらいだし。
「日向の良い所で寝よっかな」
午後からの予定も決まったことだし、もうすぐ着くタツ大将の屋敷に機嫌良く帰る――その時だった。
「!?」
後ろの荷台がドンと多いな音を立てて跳ねた……というよりも荷台に何か降って来たような感じの大きい音と振動が乗っている自転車にまで響いた。心臓まで跳ねて止まるかと思った。
慌てて自転車から降りて荷台を確かめる。もしかして荷台に隕石でも落ちたのか!? なんてありえないないようなことに若干期待しつつ、配達終わってて良かったと思った。
荷台に顔を覗き込んだら……もう一度目を凝らして覗き込む。
「痛……体痛い……」
「……誰?」
赤茶色の髪の子が荷台に転がっていた。
「誰こんなの入れたの? どこに届けるかくらい書いてよ」
「……貴方何を言ってるんですか?」
「あ、しゃべった」
閲覧いただき、ありがとうございます。