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バラトは平常運転

──帝都・フェクトローザから離れる事、10日程の場所に辺境伯の治めるアーディア領があり、更にそこから国境に馬を半日進めると戦士とごろつきの村、バラトに着く・・・と言ったところか。





バラトは何も無い場所では無かったが、退屈な場所に『なってしまった』いや、変わってしまったと言う方が正しかったりするのかもしれない。


国境を荒らし回った騎馬の国・ファゴムもことごとくが返り討ちにあったので、和平を飲むのも致し方無かった。

たった一月前までファゴムは優勢だったのだ、しかし和平は渋々だったが受け入れられた。


誰あろう。

キャトラル伯の次女、ミースが項垂れながらも国境に左遷されるのを、受け入れていなければ未だにバラトは戦士とごろつきが挙って集い、国境にはファゴムの騎馬隊が国境を越える勢いで迫る事になっていた、そうなのかも知れない。




ミースは特別『不幸』だった、不運だったの間違いかも知れないが、ミース本人の口癖になるほどに不幸だと思っていた。

まず、伯爵の次女という立ち位置で一つマイナスだと、ミースは物心付く前から思い、次にこの国の成人は14の誕生日を迎える年の聖誕祭の日、神よりの祝福を受け成人とされるのだが、成人しても婚約が出来なかった事が2つ目のマイナス、3つ目のマイナスは自身の素行不良で進学が出来なかった事。

最後に4つ目、寄りによって初の赴任先がバラトという国境に近い辺境に変えられた事だった。


「わっざわざ、こんな退屈なとこに廻さなくても、良くない?」


「ファゴムの騎馬隊が恐れる死の牙が、白刃の悪魔がなぁーに、言ってんだよ。さ、仕事仕事。」


更に更におまけに、この金色に銀色の交ざった中途半端な髪で碧眼の、見目麗しい伯爵次女ミースの5つ目のマイナスを付け加えるとすると、異世界人を名乗るハネムラ・マサトを偶然拾った事となる。


「おお、まだ居たのかミース。国境に警らに出る当番だろう?」


重くて古い木製の扉を開けてミースに話掛けた、この白髪混じりの茶髪の男はモリス、辺境警備隊の隊長だ。

ミースからは隊長!とだけ呼ばれている。


「隊長、わたし・・・気分が優れないのでパース!」


「隊の朝食を5人前も食べて気分が悪いって、どういう了見だ。ミース、仕事だろ?行こうよ。」


「ハネムラ。あんたの昼のパスタ無しにするわよ!」


「パスタが無いなら、トマトを食べますぅーっだ!迷惑だよ?いいから、行こう。」


「ン──なこといってもさぁ?」


物見の塔まで警備隊の隊舎から200㎡。

その物見の塔の天辺。


「──物見の塔から、国境の方向みるだけじゃない。別にっ、わざわざわたしがする仕事とは思えないんだけどっ!」


そこから、ほんの少し離れた国境を窺って、変わりは無いかって、砂煙でも上がってないかって覗いたら警備隊の警ら当番はおしまい。

はい、お疲れ様ー。


「かっかすんなよ、ホラ。」


「な、何よ?」


「開けて。ひひひ!」


「あー。・・・うん。これ、好きよ凄く。でもね、今は気分じゃないの。気分が優れないんだから。」


オムライスだった。


「少しくらい、喜ぶかと思ったんだけどな。」


「べ、べべべ別にイラナイって言ってないでしょ。食べるに決まってるわ。今、ここで食べるから!」


「良かったー。美味しい?美味しい時はどーすんだったか。」


「ニッ、て笑って『美味しいっ』て、言うのよ。バカね、忘れたの?」


「・・・、ミースがすぐ感謝を忘れるからこうやって覚えさせてるんだろ。違うか?」


「んぅ、・・・違くない。」


「ホラ、異常無し。帰るよ、ミース。」


「・・・退屈、退屈、退屈・・・だわ。ハネムラ、なんか無いの?」


「赴任直後に、ファゴムの騎馬隊を無力化したのは誰だ?」


「・・・。」


「赴任直後に死の牙って2つ名をファゴムの兵士たちに付けられた上、仕返しに3倍の兵力で国境に進んで来たファゴムの騎馬隊を分断して弾き返したの、だーれだ?」


「・・・そうよっ、わたしよ!──だから、何?活躍したら辺境とおさらば出来るって言ったのは!・・・誰でしたっけ・・・ぇぇ?」


「俺だ・・・。遅くたって半年、早ければ後15日もすれば配置替えして貰えるって、モリスさんも言ってたろ?」


「──15日って、それまでなんにも、何にも無い、こんな、ド田舎にわたしは放置プレイされちゃうのよ。退屈過ぎるでしょっ!」


「退屈にしたのは!ミース、君だ。俺も甘かった、けど。・・・やり過ぎたろ?」


「キィィ!いきなり、和平が結ばれたりするなんて思わ無いじゃないっ!」


「やり過ぎたからだ。・・・もっと、嬲ってから叩き潰せば違ったかも知れないだろ。」


「はぁあ?あんたの言う通り、殺さずに全員返してやったのよ。皆殺しにできたのにっ!」


「国境近くを火の海にしろなんて言ってないけど?」


「あれは。ホンモノの炎じゃないから、いいじゃない。」


そう、わたしが使ったのは幻術。

実際に燃えた敵兵は居ないはずよ。


「じゃあ、騎馬隊の武器を全部食べさせたのは何故?」


「幻獣を使うのには、供物が要るものなのよ。知らないわけじゃないでしょ?」


「だから、やり過ぎだっての。どこに『戦場凡ての鉄』を要求する幻獣が居るって?」


「そんなの、ノリよ!決まってるでしょ。」


「武器が無くなれば、ファゴムの兵だって戦えない。こうなるって解って無いはずがないよね?」


「しょーがっ、ないでしょっ!だって!活躍すれば、帰れるって!思うでしょ?言ったよね、ハネムラも。活躍さえすれば、皆に見直されて。えぇと、・・・」


「──!そうだ、進学も許されるって〜言い、ましたわよね〜・・・ぇえ?」



書いたんですよ。

書いたのに。

ごそっと、消えたので。


放置してた話なの。

バックアップ大事。


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