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ギルドへ入った緊急依頼を受け向かった森

依頼は森へ気性が荒いと言われるファイアドラゴンが降下するのが目撃された為のSランク討伐依頼

よりにもよって森にファイアドラゴン

下手すると近くの村や町を巻き込む程の被害が出ると急いで向かった先では、既にドラゴンが暴れてると思われる騒音がしていた

だが、様子がおかしい

ドラゴン単体で暴れてると言うより争っているような地響きや騒音


もしかして通りすがりの誰かが戦っているのか…まさかドラゴンが複数いるんじゃ…と用心しつつも急いで向かった場所には目を疑う光景が広がっていた




ファイアドラゴンと対峙する大小二匹のプラチナウルフと思われる動物

プラチナウルフにしては一匹は通常の数倍の大きさだが………

とにかく二匹のプラチナウルフが大きな岩場を背にドラゴンと対峙していた

ドラゴンもかなりの傷を負っているとはいえ、二匹は満身創痍で今にも倒れそうになりながら一歩も引く姿勢を見せない


ズシンッ‼

ぎゃあぉぉぉぉぉ‼

グルルルルルルルル‼


ドラゴンが一歩進んだ瞬間、小さい方のウルフがその足に噛みつく

半瞬遅れて首筋に大きいウルフが噛みつこうとするが、すかさずドラゴンのブレスが放たれる

だが、大きいウルフはブレスの軌道から避ける事なく真っ向から受け止めた

立っているのもやっとに見えるのに、続けて尻尾で撥ね飛ばされた小さいウルフすら庇うように受け止めてみせる


「もしかしてあの小さいのはあいつの子どもなのか…?」

多分、当たってるのだろう


グ、ルルル、ルルルルル…

ぎゃあぉ‼


──────ッ‼

───────てっ‼


全身血だらけで焼けただれて尚、抵抗の構えを取る二匹にどうしたもんかと思った時、微かに何かを耳が捉えた


「ん?」


───────っ‼

───てっ‼────か─っ‼


「声? 誰か居るのか!?」


踏み荒らされた森の中を急いで見渡す

探そうと思った声の主は直ぐに見つかった

二匹のプラチナウルフの背後にある岩場の前

まだ少女と呼べるような年頃の女の子が一人、座り込んで泣きながら三匹の戦いを見ていた


「何であんなところに!? 巻き込まれたのか!?」


怖くて動けないのだろうと急いで救出に向かおうと三匹の気を引かないよう気配を消してそっと近づいて初めて少女の言葉が耳に届いた


───てっ‼────からっ‼

に─てよぉ‼───いだか─もう──からぁ‼

にげてったら‼ もういいから…お願いだからぁ…逃げてよぉ‼ 逃げてっ…にげ…てぇ………

だれかぁ…たすけてぇ……ぉねがいだから………ケイナとマイナを、たすけてよぉ……私は置いてっていいから‼ にげてよぉ…おね、がい、だからぁ……


悲痛な声で泣き叫び懇願しながら逃げてと乞う少女

岩場を背に引かない二匹


「庇って、るのか?」

さっきブレスを避けなかったのも避ければあの少女にあたるから?


ギャウンッ‼‼

「‼」

悲鳴のような鳴き声に見れば、仔ウルフが今まさにドラゴンに噛み砕かれようとしていた

その前には全身を赤く染め足を一本失い、顔半分をズタズタにされた親ウルフが地に伏し、必死にもがきながら絶望的な光景に唸っていた


とりあえず───


「胸くそわりぃんだよ‼ クソトカゲ‼」


ズシャァ‼


背後から首目掛けて一刀両断

何が起きたかも分からず倒れたドラゴンの口を抉じ開け、仔ウルフを担ぎ上げる


「おい、生きてるか!?」

グ、ルゥ


微かにまだ息があるようで、霞む目で必死にこちらを見ようとするが、正直、手遅れだった


瀕死で尚、警戒する親ウルフの目の前に仔ウルフをそっと横たえ一応傷の状態を見るが、やはり既に命の灯火は二匹とも消えようとしていた


続けて少女の方へ向かおうとすると親ウルフが一体どこから振り絞ったのか威嚇の声を出す


「大丈夫だ、お前達のお姫様に危害はくわえねぇよ」

じっと二匹と視線を合わせて告げると唸り声は途切れたが完全には信用してないのだろう、一挙一足に集中している


岩場を動かなかったのは手や足に怪我をしてたかららしく、血だらけの足で座ったまま二匹の下へと涙ながらににじり寄る少女は一切俺に気づいていない

ただひたすら二匹しか目にも頭にも入っていないのだろう


目の前に立った俺に初めて気づいて、涙でグシャグシャの顔で見上げてきた

思った以上に幼い印象の少女へ手を出しながら声を掛ける


「あいつらのトコ、連れてってやるよ」


抱き上げればやはりかなり軽く、手や足どころか体すらポッキリ折れるんじゃないかと思ってしまう

二匹にくっつく程近くに降ろせばすかさずその血だらけで焼けただれた体に手を伸ばした


「ケイナ‼ マイナ‼

どうしてっ!? どうして逃げてくれなかったの!?

二人なら逃げれたのに…逃げてって言ったのにぃ…」


「な、くのは、およし…みう………おまぇ、はわたしの、かわい、い…むすめ、おまえをぉいて…にげる、ことな、ど………できる、─けがな、ぃ」


!!? ウルフが、喋った!?


「そんなの、そんなのっ…」

「み、ぅ」

「マイナ‼」


親ウルフと話してる最中に聞こえた微かな声に慌てて仔ウルフを見る少女


「みぅ、ダい、すキダ、ヨ…ワらっ、テ…

み、ぅハズっト、ワラっ、てテ…かナシませテ、ごメんね…」

「ぁ、あ…私も、私も‼ 大好きだよ! お願いだから、死なないで、マイナ…マイナぁ…死なないでよぉ…ずっと、いっしょだよって、いったじゃんかぁ…」


すがり付いてしゃくりあげる少女を横に俺は親ウルフと話していた

正確には頼まれ事をしていた


「頼、んだぞ、人間…も、し、ウラぎっ、たら……」

「わかったから、もう喋るな

まぁ、これも何かの縁だ、任せとけ

最後まできっちり面倒みるからよ」

「…ア、リがとウ………」


「ケイナっ!? ケイナ! ケイナ‼

ヤだよ!? 死んじゃイヤー‼」


仕方ないとはいえ大変な事を引き受けてしまい、少女が二匹にすがり付いて泣く声を聞きながら、これからどうしたもんかとついつい溜め息が零れてしまった




とりあえず血の臭いが拡がらないよう張った結界の中で、泣き続ける少女の頭をポンポンと撫でるように叩く


「あー…ひとまず、その怪我を手当てしなきゃ、な?」


フルフル

泣いて亡骸に引っ付いたまま無言で首を振る少女


「だーめだ! 先ずは手当てが先!

話さなきゃいけない事もあるしな」

「!?」


抱き上げて引き剥がし、しかしせめて亡骸が見えるよう離れすぎない程度に折れた木を椅子代わりにして問答無用で座らせる


重症の足から手当てしていきながら少女の様子を伺えば、ショックと貧血もあってかしゃくりあげながらも少し放心しつつあった


「痛くないか?」

コクリ

「そうか、痛み止めが効き始めたかな…

俺はサシャだ、お前の名前はみう、でいいのか?」

コクリ

「わかった…みう、今から話すことを良く聞くんだ

お前がちっこいのと話してる間におっきいのからお前の事を頼まれた

頼れる奴が居ないからせめて一人立ち出来るまで面倒見てやってくれって」

「………」

「で、だ…そういう事でお前の身柄は俺が引き受ける事になったが、俺は街に住んでるからこれから一緒に街に行く事になるのは分かるか」

…コク

「お前がどうしてもここから離れたくないって言うならまた考えるが、どうする?

俺と一緒に街に行くか?」


そういって手を差し出せば、無言で大小のプラチナウルフ達に視線をやり、その瞳からはまた大粒の涙が幼げな頬を静かに伝っていった

一粒、二粒、涙が地に落ちると同時にギュッと目を瞑った少女─みうは、静かに目を開けると真っ直ぐに俺の目を見て口を開いた


「───」



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