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6.裏庭にて

 161枚の金貨がレイルのもとへと渡り、目の前には白と黒の服を纏うエリスとアガサが笑みを浮かべながらこちらを見ている。

 金と銀の髪の色。獣欲を象徴するように立っている耳と気だるげな事後のように寝そべっている耳。母性を感じさせる豊満な胸といたいけな小娘を感じさせるささやかな胸。全てを受け入れるような柔らかさをもつ尻と男を嘲笑うような生意気そうな尻。ふんわりと挟み込まれそうな太ももと少女と女の狭間にあるような細い太もも。いつまでも嘗め回したくなるようなしまった足首と踏みつけて欲しくなりそうな小悪魔的な足首。完璧だ。完璧に対になっている。まさに、金さん銀さんだ。

「満足いただけたようで恐縮です。ご主人様」

「でも、ちょっと視線が変態的だよ。マイク」

「いや、二人のあまりの美しさにちょっと気が遠くなっていた」

 そう、美しさのあまりに気が遠くなっていただけだ。決して、161枚の金貨が手元を去っていくのを見て気が遠くなっていたわけではない。

「ごみ虫の割には、人間の褒め言葉が上手でございますね。いや、ご主人様の割には・・・ご主み人虫様の割にはといいましょうか」

「無理に、ご主人様とごみ虫をくっつけようとするなよ。何が何だかわからない言葉になってるじゃねえか。大体、無理してご主人様なんて呼ぶ必要はないんだぞ」

「いえ、これも私の贖罪でございますから。あと3億回ほどこの屈辱に耐え、ごみ虫のような男をご主人様と呼ぶことが私に課せられた重荷なのでございます。ところで、ご主人様のお仲間は、奥様とお呼びすればよろしいでしょうか。ちなみに私のことは、盛りのついた雌犬とでもお呼び下さい。奥様」

「ちょっ!あたしとマイクはまだ全然そんな関係じゃないから!……あたしのことは、エリスでいいよ。あたしもアガサって呼ぶから」

 エリスが顔を真っ赤にして答える。レイルとジルが、いやいやもう分かってますからというような顔でにやにやと見つめる。

「そういえば、アガサっていくつなの? 記憶がないんだったら分からないか」

「いや、ここに23と書いてある」

 自分の年は公表したがらないくせに人の年は平気で聞くんだな。女ってのは本当に不思議だ。先ほど合成されたギルドカードを見ると、裏側に「ドレイ ナマエ:アガサ ネンレイ:23」とあったのでエリスに教えてやる。

「じゃあ、同い年だ! 二人ともマイクより年上だね!」

「我々エルフ族は人間に比べて寿命が長いことが特性でございます。ですから、我々の23歳は人間でいえば16歳ぐらいでございます」

 アガサがしれっとした顔で訂正する。多分嘘なんだろうけどな。

「うん、そうそう年下、年下!」

 エリスが嬉しそうにピョンピョン跳ねる。若さをアピールしているのだろうか。どちらかといえば、揺れる胸をアピールしようとしているようにしか見えないが。

「膨張色でございます。ご主人様」

 アガサが苦々しげな顔で言う。いや、その理論はもういいから、現実を見つめようぜ。それにアガサには、そのキュッとあがったお尻があるじゃないか。

「まだ、少しは金の残りがある。せっかくだから、これからの装備を整えよう。レイル、Eランク冒険者に必要な装備をみせてもらえると助かるんだが」

「もちろん、我がレイル商会はあらゆる冒険者様御用達の店でもあります。ジル。マイク様たちに必要な装備一式をそろえてきてくれないか?」

 よくある注文なのだろう、ジルは心得た顔で部屋から出ていった。

「だいたい、奴隷を買おうとしたのはテントや野営用の荷物を二人じゃ運びきれないっていうのが理由だったんだ。アガサが増えたからって、目的は達成されていないような気がするんだが」

 もちろん3人いれば荷物も持てるのかもしれないが、自称16歳の女の子二人に大荷物を背負わせて旅をするというのは見てくれが悪い。

「それは大丈夫ですよ。マイク様。お嬢様方の腰についているのは、最新のアイテムポーチですから通常のリュック並みの荷物が入ります。テントなどに関しましても荷物入れの入り口の狭さに対応した最新型がありますから、女性陣の美しさを損なうことはございませんよ」

「すごいんだよこのポーチ。今までの荷物全部入れても、まだまだ余裕があるんだから」

 それは、すごいどころの話じゃないと思うんだが。何が、最新型なんだろう。最新型女神の加護っていうことなのだろうか。まあ、あんまり細かいことを考えてもしょうがない。

「じゃあ、あとは武器だな。俺は、手持ちの剣でいいが二人はどうする?」

「私は何でも使えますが、ご主人様が剣でしたら槍のようなものがいいと思います」

「あたしは、剣!」

「それじゃ、近接に偏り過ぎだろ。誰かが遠距離に対応したほうがいいと思うが」

「マイクほどじゃないけどあたしだって剣の腕には自信があるんだから。アガサよりは強いと思うよ」

 エリスの言葉に、アガサがムッとした顔をする。

「ご主人様。この口だけの胸元風船女様には一度自分の強さというものをわからせて差し上げたほうがよいと思います。どうぞ、私にこのパンツから肉はみ出し女様に稽古をつけさせてくださいませ」

「アガサ。怒るのもわかるがそんなにエリスの肉に対して攻撃的になるな。お前にはお前の魅力があるんだから」

「いくらご主人様に優しい言葉をかけていただいても、わたくしのこのささやかな胸に芽生えた炎を消し去ることは出来そうにありません。軽くひねってみせますので、お許し願えませんでしょうか」

「アガサの強さにも興味があるし、俺はいいけど。エリスはいいのか?」

「肉がはみ出ているなんてあらぬことを言われて黙っているわけにはいかないわ! あたしが買ったら、アガサの綺麗な脇を好きなだけこちょこちょさせてもらうからね」

「ずいぶん仲良しだなお前ら。レイル、変な話になってきたが、どこか二人が戦えそうな場所があるか?」

「裏手に、お客様に武器を試してもらうための広場があります。訓練用の木剣もありますから、それを使ってもらっても大丈夫です」

「そんなものまであるのか。さすが、俺みたいな馬鹿を上手く乗せて儲けているだけはあるな」

「いえいえ。いつもお客様に満足いただけるような商売を心掛けております。……マイク様もアガサの戦いぶりを見れば分かっていただけるとおもいますよ」

 思わせぶりなことを言いながらレイルが店の裏へと案内してくれる。じゃれ合うエリスとアガサの手をひき、裏の広場へと向かった。

「時間をかけてもしょうがないし、木剣を使った一本勝負にしよう。相手の体に当てたほうの勝ちな」

「よーし!あっという間にやっつけちゃうよー。あたしが買ったら、アガサは弓担当ね」

「くすくす。多分あの大きな胸の中には、妄想が詰まっているのでございましょう。ちょっと突いて中を見て見ましょうか」

 広場の中央に木剣を構えた二人が3mほどの距離をあけて向かい合う。やる気満々のエリスと比べるとアガサは落ち着いたものだ。

「いくよっ! ちょっと痛いだろうけど、恨まないでねアガサ!」

 いきなりエリスがアガサへと切りかかる。Eランク冒険者が得られる女神の加護の影響なのか、思っていたよりも素早い動きだ。アガサは、まだ構えもとらず木剣をだらりと垂らした状態だ。一本勝負ゆえのいきなりの奇襲戦法か。汚い、エリス超汚い。

 これはひょっとしてエリスの勝ちか? そう思ったが、エリスが渾身の力をこめて振り下ろした木剣は、なぜかアガサの体をすり抜け、地面を打つ。

 あまりに素早い。いや、素早すぎる動きだった。仮にも女神から身体能力強化の力をもらい、Eランク冒険者として女神の加護を受けていてもほとんど見えなかった。

 多分、エリスにはアガサが何をしたのか全く分からなかったのだろう。振り下ろした木剣を見つめてきょとんとした顔をしている。そんなエリスの背後にまるで空間から突然出てきたように、アガサが現れる。

 アガサは楽しくてたまらないようにニヤリと笑うと、エリスの首に右腕を、胴体に左腕をからめて締め上げ始めた。

「これは、熟練の拘束術ですな。あれでは、エリス様はまったく動けないでしょう」

 解説のレイルが言う。いや、別に解説役をお願いしたわけではないんだが。

「それに、見てください。マイク様。芸術点もかなり高いですよ」

 解説のレイルが興奮して声を大きくする。それを聞いて、ハッとした。確かにアガサは戦いの一環としてエリスを拘束しているように見える。

 だが、よく見ると全く違う。絶妙な力加減で喉を絞められたエリスは、まるであの時の様に息をあらげ切なげな声を出し、豊満な胸を持ち上げるようにからめられた左腕は、一瞬ごとに胸の形をゆがめ、もっとも美しく見える瞬間を探し出しているようだ。そして、さり気なく持ち上げられたワンピースの裾は、男が最も興奮する、太ももに挟まれた黒い下着が形作る三角形がちらりと見えたり、消えたりを繰り返す高さに絶妙に加減されている。素晴らしい。まさに芸術だ。

「さすがだ。レイル。この光景を見られただけでも金貨161枚の価値はあった」

「そうでしょう。マイク様」

 もちろん本気で言っているわけではない。アガサの動きをほとんど捉えられなかったということは、それだけでも彼女がいかに強いかということを示している。金貨161枚で、好きなだけ修行させてくれる美人教師を雇ったと思えば本当に安いものだ。

「もう、それくらいでいいんじゃないか?エリスを離してやってくれよ。アガサ」

「ご主人様の獣のような目をもう少し見ていたいですが、そう言われては仕方がありません。では、これで私の勝ちということでよろしいでしょうか」

 やっと拘束を外されて、地面にはいつくばるエリスを見下ろしながらアガサが答える。

「まだ負けてない! 木剣を当てたほうが勝ちって約束でしょ!」

 あんな目にあったというのに、まだ負けを認められないらしいエリスが叫ぶ。

「くすくすー。ご主人様。カエルの様に這いつくばったお嬢様がこうおっしゃっておりますので、負けを認めるまで相手をしてもよろしいでしょうか。」

「どう見ても負けを認めている格好だけどな。まあ、満足するまで相手してやってくれ」

 アガサの動きを見るだけでも訓練になるだろうし、再度エリスの扇情的な姿を見るのも悪くない。許可をだすと、エリスはさっきまでの無様な格好はなかったことにしたいらしく、髪を整えながら言った。

「やっぱり、戦いは正々堂々あるべきよね。さあ、かかってきなさい!」

「先ほどいきなり切りかかってきた方の言葉とは思えませんが、そうまで仰るのでしたら私からいかせてもらいます」

 結果は先ほどと同じだった。やはり、目にも止まらない速さでエリスの背後に回ったアガサが、足払いで地面にはいつくばらせた後に背中にのり、両腕を高く引っ張り上げる。今度は、集中してアガサの動きを見ていたが、それでも残像をとらえるだけで精一杯だった。

 両腕を引っ張り上げられたエリスが苦しそうな喘ぎ声を漏らす。胸を張った姿勢になることで、その豊かな胸がボリュームを増す。引っ張り上げられた腕から脇にかけて汗が流れる。

「いかがでしょうご主人様。私の勝ちということでよろしいでしょうか」

「まだ負けてないよ!」

「いや、どう見ても負けてるだろう。」

「木剣を当てたほうが勝ちって言ったじゃない!アガサ、全然木剣使ってないし!」

「そういや、そうだな。アガサ、木剣を使ってやれよ」

「分かりました。木剣を使うとはエリスはマニアックな趣味でございますね」

 そういうと、アガサは背中から木剣を取り出したかと思うと、それを使ってまるでたすき掛けのようにエリスの胸に当てた。木剣を挟みながら、刻一刻と形を変えるエリスの胸。それは、まさに木剣とエリスの体を使った芸術と言っていいものだった。自分の胸と、つい喘いでしまう声に、獣のような目で見続けられことに耐えられなくなったのだろう。エリスは、全身を赤く染めながら言った。

「・・・負け、あんっ、負けました。・・・もう、許してぇ、アガサお姉様ぁ」

「負けを認めることこそ強くなる第一歩でございます。エリス。・・・じゃあ、エリスは遠距離攻撃で弓を使うということでよろしいでしょうか。ご主人様」

「いいんじゃね。じゃあ、エリス用の弓も見繕ってくれるかな?レイル」

「分かりました。ちょうど、予算に収まる品物がございますよ」

「ありがとう。それにしても、アガサは強いな。記憶がなくても戦い方は覚えてるってことか?」

「そうですね。生活したり戦ったりといったことでは忘れていることはないようです。ただ、これまでの人生のことや、自分が何を目的としていたのかといったことは、消されているようです」

「いつか、思い出すこともあるのか?」

「いいえ、魔女に消された記憶は絶対に戻りません。自分が魔女だったかどうかは全く分かりませんが、魔女が恐ろしいものだということだけは分かります。正確には、魔女は記憶を消している訳ではないのでしょう。私は、いってみればこの状態で存在する可能性が強い別世界から連れてこられたようなものです」

「どういうことだ?」

「私には意味はよく分かりません。魔女ならばわかるのかもしれませんが。あるいは、ご主人様なら分かるのかもしれませんね。……でも、そんなことはいいじゃないですか。だれかに連れてこられたのか、それともそれは嘘で、ずっとこの世界にいたのに記憶を失っているのか。……それよりも、今ご主人様とエリスと一緒にいて、これから何か楽しそうな気がするっていうことのほうが私には重要なのでございます」

「確かにそうかもな。俺もこれから楽しいことが待っているような気がするよ」

「なにー?何の話?」

「これから、楽しそうなことがまっているという話でございます。エリス」

「そりゃそうだよ!パーティー"エリスと愉快な仲間たち"の楽しい旅はこれからなんだから!さあ、装備を買って冒険者ギルドへいくよっ!」

 そういうと、エリスはアガサと一緒に抱き付いてきた。



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