第7話
「身辺の整理をする猶予も要らない。即刻出ていく事を確認致しましたよ。」
「いや……き、聞いてないぞ。」
口角を吊り上げ石上が続ける。
「安部様、目をお覚まし下さい。あなたに必要なのはかぐや姫のはずです。右大臣という官職、そこになぜ執着なされるのですか?」
た、確かにそうだが……
「姫の屋敷に向かう時間を削り、鹿威しでも勤まる事をなされ、今ここという時もまだそれをお続けになるのですか?」
石上の言うことに返すことができない。
何か違う気がする。違和感を覚えるが、常に頭に描いていた事を指摘されているのだ。
何が、どこが間違っている?
何かおかしい、いや正しい?
何が、正しい?
解せない。
波紋が広がる。大きくなる。大きくなって波になる。
波に飲み込まれる。分からない。天も地もつかめない。
おかしい、気がする。
正しい、気もする。
見えない。なにも見えない。
その時、石上が漂う私を引き上げてくれた。
「機を逃してはいけませんよ」
導いてくれる
「唐土の栄える所に黄に染まる大河があると聞きます。
その河の始発、河の湧き出でる山に火鼠が生息しているという伝説があります」
誘う
「それが安部さまの求める物です」
私は
私は
石上に感謝した