16話 陰謀
「葛城王、船で海を渡らなかったのか?」
客間に上げ、木箱を大事そうに抱える石持に石上は語りかけた。
「い、いえ、この通り、海を渡り、ち、地の果ての天竺まで旅を……」
「騙すでない。船は嵐に遇い遭難。未だ一隻も戻ってきておらん。いや、一隻だけ帰ってきたな。お前はそれに乗っていたのか?」
「え、ええ。旅を終え皆とともに帰りつくことが……」
「その船は大破し、生存している者は1人もいなかったと報を受けているが」
「……あ、あの」
「まぁいい。こちらへ来い。かぐやに会わせてやろう」
石上はすくと立ち上がるとかぐや姫の間に案内した。
「葛城王、敏達大王の曾孫、か。それほど代を重ねてしまうと朝廷にも力が及ばないのであろう。」
廊下で石上は話し掛けた。
「ここの婿になることで力を得、復興を成したいと思ったのであろうが……着いたぞ」
戸を開け、御簾に目隠しをされている部屋に入る。
かの女中も待っていた。
「先ずはその鉢を見せてもらおうか」
先程から取り仕切る石上に疑問を抱きつつも石持は抗う術もなく箱を開けた。
光が漏れ出す。
取り出すと八方に光を放つ鉢が出てきた。
「……確かに言われた通りの品だな。どこで手にいれた?」
「う、右大臣様、なぜ先程からその様に取り仕切るのですか?まるでここがあなたの家のように」
「……ふぅ、よかろう。全て教えてやる。我が石上家、古よりこの地を治めていた物部の末裔だ。西より来た大王の祖先に敗れてより朝廷の武器庫を治める大王の右腕として働いてきた」
石上は続ける。
「しかし、百済より渡来してきた蘇我の一族に朝廷は破壊され、奴等に支配されてしまった。我が一族も滅ぼされてしまったよ。私は祖先の恨みを晴らすため都へ戻ってきたのだ」
「そ、それとかぐや姫と、どういった繋がりが……」
「この女には人をたらしこみ、殺してしまう術が備わっている。こいつで不必要な人間を消し、私が王としてこの世を統治するのだ」
「そ、そんなこと!させるわけには……」
「葛城王、いいことを教えてやろう。私が数多の検体を使い導き出したものだが……」
「お前、齢15になっただろう?この術、原理は分からぬが15に満たぬ者には効かぬらしい。言ってることが理解できるな?」
石上は乱雑に御簾を上げた。
中には頬を赤く腫らし、涙を浮かべる姫君がいた。目が合う。
「おい、早くやれ」
石上が冷たい声で命令する。
かぐや姫の目が赤く光る。
刹那、石持は力なくその場にへたりこんだ。
「全てを教えてもお前には周りに伝える術がないのだよ。葛城王、この石をどこで手に入れた?」
「あ……お、小倉山の、界仙寺……」
「ふん、こんな物まで集めて……邪教は全て潰してやる」
光る鉢を叩き割った。欠片は光を失い黒くすすけた。
翌日、朝廷で決議を取り、兵を界仙寺へ送った。寺は数日と持たず、落ちた。




