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第11話 奄美

 一ヶ月、待った。

 奄美で、船の修理も兼ねて、待った。


 二隻は、来ない。

 木片すら、流れ着くことは無かった。

 遺体も流れて来ていないのだから生きている可能性もある、などたまに言い聞かせている。漕ぎ手もあの体だ。泳いで渡ってこれぬか。暇があれば沖を見にこうして浜へ寄った。が、深層では「無理だろう」と諦めている自分がいる。



 沖で放り出されればふかの餌だ。


 木片の一片、布の一枚すら渡ってくることは無かった。




 恋敵が、憂いが二つ減った。

 本来喜ばしい筈なのに……

 友を二人失った。失ってしまった。

 消失感の方が上回る。


 そのような私に変えてくれたのに。大伴……庫持……


 私達の船も分解される寸前だったらしい。幸運にもここまで辿り着く事ができた。


 奄美で船を代えるのであればここまで共に乗ってくれば良かったのに。


 貴族との同乗を嫌う彼をなだめ、昔話を語らい合えばよかった。


 もはや岸に咲く仏桑華ぶっそうげを愛でることも出来ない。



 船の補修は済んだ。


 私達の船は損傷が激しかったので大伴が南海へ旅立つはずだった船に乗ることにした。

 この船は彼の形見になるだろうか。

 海は凪いでいる。明日にはまた船を出すことが出来るだろう。


 私の心を残して……






「右大臣様、筑紫の島より使者が参りました」

阿多の沖で遣唐使船が嵐に遭遇、大破した一隻が岸に打ち上げられ、遺体が70体漂着した模様。

生存者は今のところ無し、残りの三隻は不明、か。


 二人の上司を失脚させ、右大臣に新任した石上麻呂足いそのかみのまろたりは口許を綻ばせ伸びをした。


「分かった。下がれ」


 使者を退室させたあと石上は思案にふける。


「海上で嵐に遭えばまず助かるまい。四人とも駄目だったか。まぁ良い。阿部も大伴も消えた。ここはもう無能しか残っておらん。我が祖先の報いを晴らせる時が来たようだ」


 石上は自らの案件が失敗に終わったはずであったが、満面の笑みであった。




私事ですが、今年は一個でした。

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