文はたまりにまたって。
雲が薄くのびる明るい空の下で大谷はのんびりと歩いていた。庭をまわったり、城門へ行ったりと、特になんのあてもなく歩いているだけだった。
大谷は結局、庭を一時間程ぼーっと眺め、部屋に戻ろうと決めた。
「あ」
自室に続く廊下を歩いていると、正面から石田が来た事に気づいた。
石田もこちらに気づき、急ぎ足で近づいてきた。
「伊達からだ」
石田は懐から文を取り出し、大谷につき渡した。文は薄い緑色をしていた。
ここが伊達と他の武士との違いの一つだ。
伊達は自分らしさを大切にしている事もあって、何をするにおいても他の武士とは違いを見せる。
「最近、伊達からの文が絶えないが…お前何かしたのか?」
不安そうに石田が問いた。
「いや、何も」
それもそのはず。文の中身は伊達に大谷をくれ、というものだからだ。
「にしても、伊達政宗は見る目があるな。私を欲しいと言うくらいだ」
文を開き、喉奥で不気味に笑いながら、そう言った。
顔がほとんど隠れていると言っても、表情が豊かな大谷は目元だけで気分がすぐにわかってしまう。
「先代もなかなかであったが、政宗のほうも甘くみてはならんな」
伊達家は半年前に家督が政宗に移った。それから文が絶えなくなったのだ。
「三成、東北には当分怖くて入れんぞ」
そうやって賞賛の言葉を並べて、石田の方をうかがう。
「そうだな」
石田は目をそらし、不安そうな顔を必死に隠そうとしている。
大谷はケケケと喉奥で笑う。
「案ずるな。私は何があろうと、ここを出て行く事はせん」
手袋をした手を石田の頭にポンとのせる。
大谷と石田の身長差はだいたい頭一つ分。のせるには丁度良い。
手袋を伝って大谷の体温が伝わってきた。
不思議な安心感があるその手に落ちつかされた。
「当たり前だ。もし出て行ったら刺し殺してやる」
顔を俯け、表情を隠しながら大谷の手をどけた。
これはきっと素直でない石田の必死な照れ隠しなのだろう。
それを見て大谷はまたも笑いがこぼれる。
「気が変わった。三成の部屋へ行く」
瞬間、石田は嫌そうに眉間にしわを寄せ、大谷の方へ向いた。
「この前宗麟から貰った菓子もあるが…?」
石田は「えっ」と小声で驚いた。大友の菓子はいつも珍しいものばかりで、石田も好きだ。
「…‼ダメだ」
石田が欲に負けてはいかんと大谷から目をそらし歩き始めた。
自分をうまく表現する事が苦手な石田に飽きれながら、ため息をつく。
大谷はそっと石田の後ろについて行った。
読了お疲れ様でした‼読んでいただいてとっても感謝です‼
今回は伊達くんからのお手紙のお話でした。
伊達くんが家督を継いだのは確か十八のときだったはず。←
この歳で家督継いで、皆をまとめて、補佐する方はいただろうけどとっても大変ですよね。
尊敬してしまいます。
今回も感想、アドバイス又、質問等々お待ちしております。
これからもよろしくお願いします‼