はじめまして
ぽちゃん。
釣り針が池に浸かった。
釣竿を操るのは、豊臣秀吉の小姓石田三成だった。綺麗な長髪に鋭い目。落ち着いた紫の衣は冷えを感じさせた。
ここの池だけ時が止まったかのように、鎮まっている。
池に釣りをする男。とても綺麗な絵となっている。
ここではただただ静かな時が流れているだけだ。
がさがさっ…どてっ
突然、静かで美しい景色に似合わない音がなった。
「痛ぁぁぁあ…!!!!!!」
先程の音の主であろう男が、地面に打ち付けられた身体をおさえている。きっと後ろに見える草むらに押され出たのだろう。目は大きく、髪は癖毛なのかまとまりがなく、茶色く石田ほどではないが長い。
石田は突然の出来事で何が起こったのかよく分からず、男を見たまま固まった。
「なあ、其方‼」
男が石田に話しかけた。眩しいほどの笑顔を見せる。
「其方が石田三成であろう?」
あまりにも突然名前を言われ、石田は目を丸くし、阿呆のように口が半開きになった。
一方、草むらから出てきた男は、キョトンとしている。
「貴様の名は何というのだ…‼俺が問いに答えるのはその後だ…!」
完全に警戒された男はため息をつき、かわいた喉で笑った。
「私は大谷紀之介吉継。吉継でも、紀之介でも好きに呼んでくれ」
男…大谷はケッケッケッと笑った。
「石田だ」
何の警戒もしない大谷に渋々名を教えた。
「……で、貴様は何故ここに来た。城を見に興味本位で来たのならば引き返すことだな」
石田は普段に戻り、また釣りをはじめた。大谷となるべく話したくないと思ったからだ。
だが、大谷はそんなことはおかまいないに話す。
「なに、そんなしょうもないことでここに来たのではない」
石田は大谷の話すことを流しながら聞いていた。
大谷は意気揚々に話し続けた。
「私は秀吉公の小姓になりたくてな」
ぼちゃんっ
「あっ…」
大谷の言葉と共に、石田は持っていた釣竿を池の中へ落とした。
「おい、なにをしておる…そこまで驚くことではなかろう…?」
大谷は冗談にいった。
「うるさい」
石田はむすっとした顔をしてそっぽを向いた。からかわれたことが嫌だったのだろう。
だが、その姿はまるで幼い子供のようだった。
「だいたい…貴様などが秀吉様の小姓になろうなど…」
ぼちゃっ
鈍い水の音がなった。
石田が驚き振り返ると、大谷が池の中で、石田が落とした釣竿を持って立っていた。
「私は尽くすと決めた者にすべてを捧げる覚悟を持っている」
石田はぽかんと口を開け、間抜けな面を見せた。
だが、直ぐに正気に戻ってみせた。
全てを捧げるなんてを言葉何回聞いたことか。
「それに私は頭が良い。智に優れている。それに体力もあるし、身体つきも上々。そして、極め付けに、槍の使い方もなかなか凄いのだぞ?これほど好都合な男は他にはおらん」
と、大谷は笑ってみせた。
その言葉に呆気にとられる石田。しかし、何故か悪い気がしなかった。
「秀吉様の小姓になりたいと言ったな」
石田はうつむきぎみで言った。
「ああ」
大谷は自信あり気に応える。
「…今度、貴様を秀吉様に紹介しよう」
石田がそう言った瞬間、大谷の顔は花が咲いたかのような笑みでいっぱいになった。
「ありがとう…‼ありがとう三成‼」
「…っ」
石田は下の名で呼ばれることに慣れていないため、つい顔が俯いてしまう。
「なあ、三成」
大谷が申し訳なさそうに、石田を呼んだ。
「なんだ…うおぁああ‼」
石田は大谷をみた瞬間、一気に腕を引っ張られた。
ばしゃっ…
「おおっと…⁈」
どしゃんっ
引っ張った瞬間、大谷は引っ張った瞬間バランスが崩れ、水に足をとられて転んだ。
又、それをつられ、石田も思いっきりすっ転んだ。
二つの水しぶきが高く上がる。
大谷の膨らんでいた髪は、すっと収まっていた。
一方、石田は長く美しい髪がぺたんと体の輪郭に合わせくっついていた。
「ケッケッケッ。三成、顔が見えておらんぞ‼」
落ちた衝激で石田の横髪や後ろ髪の一部が前にきてしまい、顔についてしまったのだ。
石田は前にきた髪をあげながら、きょとんとした。
「…あははははっ」
しかし、笑う大谷につられて、石田も笑った。
「お、初めて笑ったな‼」
「貴様とはさっきであったばっかりだろう…!」
二人はこの後もしばらく笑い続けた。
この後彼らは風邪をひきます。
読了お疲れ様でした。そしてありがとうございました‼
今回は二人の小姓時代、始めてであったお話です。
この前まで書いていたものの代わりに書きました。前まで書いていたものはデータが吹っ飛んでしまったので。。。
今回の二人は今とは違い、少し若々しく書いたので、話し方が違ったりも。
前回と同様感想、アドバイス等々よろしくお願いします。