結末を迎えない結末
要するに、これはそういう話だ。
一組のナルシストな双子の兄姉が、互いを求めて人間を超越する。
そういう話だ。
俺の『相手を草食にする』という能力は、基本的にはまるで話に関わってこないし、極限状態で頭のネジが外れない限り、俺が人間を超越することはない。
こうして、この物語は終末を迎える。
大まかに分けて、三つの終末を迎える。
俺の改変した一般世界における俺は、あのまま幸せに暮らしていくだろう。
また、ハッチを開け、外に出ることで超越者となった俺は、姉の精神をも自分と同等の存在へと昇華させ、悠久の時を経て、恐らく宇宙が滅亡するその日まで、幸せに生き続けていくことだろう。
そうして、最後。
ここに残った俺。
最後に『ハッチを開けることの出来なかった俺』が残る。
俺は彼らの人生を見る。
俺は俺の中で唯一、『他世界の自分を見る能力』を得た。
それは、何もない空間、時間の止まった空間で、暇で暇で仕方なかったからかもしれない。
この時間の止まった世界で、観測されぬ世界で、俺は俺を見る。
ずっと自分を見続ける。
いずれ、全ての可能性を見終える、その日まで。
END