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深夜勤務

作者: 夏川 透

以前、夜中に間違い電話らしきものがかかってきて、そのことを元に創作してみました。できれば、かけてきた相手がこういう人ならいいな、と勝手に妄想しながら書いた話です。

 しばらくまえから、奈緒はあるモノを何度も眺めていた。それは壁に掛けられたアンティークな柱時計。お洒落な文字盤の下に金色の振り子が左右にユラユラ揺れている。

 この小さな喫茶店に掛けられると、とても大きく目立つ存在だ。この店のマスターがヨーロッパへ旅行に行ったときに買ってきたものらしい。確かにこの喫茶店にはよく似合っている。奈緒もとても気に入っていてよく見入ることがある。


 しかし今はその時計の外観よりも、その時刻に注視していた。2つの針は午後11:50分を指している。


(もう帰ってる頃よね)


 奈緒は、先ほど帰ったカップルの居たテーブル上のモノを片づけながら、ある思いに耽っていた。


(電話してみようかしら?)


 奈緒が心配している人は夫である、弘志のことだ。二人はまだ結婚して2年弱しかならない若い新婚さん。最近、彼は帰りがいつも遅いので心配なのだ。仕事だと言ってはいるが、よく分からない。まさかとは思うが浮気しているのでは、と思うこともあるのだ。


 弘志は都内の小さな会社に勤めるサラリーマンで朝は8時から夕方6時までが基本だが、最近残業が多いらしく家に帰るのは夜の10時か11時ぐらいが当たり前になっていた。それに比べて奈緒はバイトではあるが、深夜営業の喫茶店にウェイトレスとして勤めている。奈緒の勤務時間は夕方7時から夜中の2時までなのだ。実際、奈緒が出勤する時間はまだ弘志は帰ってきていないことがほとんどである。


 今までは、月・火・水の夕方からは、奈緒が休みのためいっしょに過ごしていたのだが、最近弘志はその曜日も帰りが遅くて、外でご飯も食べてくるらしく帰ってきても話す時間もなく、ただ風呂に入り、寝床に入るとそのままいびきをかきながら朝を迎えるという具合なのだ。


(もうこの仕事やめたほうがいいのかしら?)

 奈緒は笑顔で客の注文を訊きながらよく思う。



 半年ほど前のこと。この店のマスターから短期のバイトを持ちかれられた。最初、この深夜勤務の仕事をするのは嫌だったのだが、夫婦共通の友人であるマスターから、

「いや、奈緒ちゃん。悪いけど人助けだと思って引き受けてくれよ。もちろんその分給料は弾むからさあ」

 普段はあまり見せない、弱りきったような表情と猫撫で声に負けて引き受けたのだ。もちろんお金が欲しかったのが最大の理由だが。期間は急に止めた前のウェイトレスの代わりが見つかるまでの3ヶ月、ということだった。


 夫の弘志もこのマスターのことは信頼していたので、遅い時間の勤務にもかかわらず、いいよと言ってくれたのだ。短期のバイト、ということだし、まあいいだろう。それが弘志の率直な気持ちだった。


 しかし、それからあっという間に半年が過ぎた。本来なら、もう奈緒はやめているはずなのだが、それがズルズルとマスターのお願いにより引き延ばしになっているのだ。


 その一番の要因は奈緒である。奈緒があまり乗り気でないにもかかわらず、彼女がここでウェイトレスとして働くようになると、この店の売り上げは明らかに良くなっていた。主婦とはいえ、まだ20代前半で可愛い印象の奈緒はウェイトレスとしてとても魅力があり、彼女を目当てに来る客も結構いたのだ。



 いつかこんなことがあった。

 彼女が働いている時間に、弘志が会社帰りに喫茶店へ寄ったことがある。奈緒に優しい視線を投げながら、普通のお客を装って、奥の席に座っていた。

 そのとき、弘志のことを全く知らない、ある中年男の客が奈緒をスケベっぽい目で見ながら、親しげな口をきいていた。

「オッ! 奈緒ちゃん。今日はまた一段と色っぽいね。」

「エ? やだ。河野さん。お世辞がうまいんだから」

 そばのテーブルを拭いている奈緒は、そう言われてまんざら悪い気はしないようであった。


 どこかで一杯飲んできているのか、中年男は少し調子に乗っているようだ。

「なぁ、奈緒ちゃん。ちょっとこっちに……」

「バンッ!!! 」

 何かをテーブルにたたき付けるような音がしたと思ったら、不機嫌な表情の弘志が立ち上がってレジに向かっていた。そのテーブルには飲みかけのコーヒーが残ったままだ。が、ソーサーにコーヒーが少しこぼれている。

 奈緒との楽しい会話を中断された感じになり、男ははじめて弘志の方を見た。


「なんだあいつ――」

 弘志の方をまともに睨みながら、その中年男はわざと聞こえるような声で言った。ひやひやしながら、あわててレジに入った奈緒は、小さな声で

「もう帰るの? びっくりするじゃない?」

 とあきれた様子で訊ねた。騒ぎになったらどうするの? 暗に弘志を注意しているみたいだった。

 弘志はそんなことはお構いなく、

「釣りはいいからな」

 と1000円札を邪険に渡した。そして機嫌の悪い声で、

「じゃ」

 そう言うなり店を出て行った。



 奈緒の記憶では、それから弘志の帰りが遅くなったような気がしていた。だんだんとすれ違いが多くなりながら、たまの会話も少しずつ少なくなっていったような感じである。ちょっとした夫の嫉妬だろう、ぐらいに思っていたのだが、帰りが遅い日がその日を境に増えていったのには奈緒も頭にきていた。


(ほんとに仕事なのかしら? 浮気じゃないかしら?)


 嫉妬から浮気へ変化したのではないか。奈緒はそう思うことが多くなってきたのである。



 おしゃれな柱時計はちょうど午前0時を指していた。それを見て奈緒はお店全体を見渡した。お客はまばらで、いそがしい状態ではない。もう一人、奈緒と同じ年くらいのウェイトレスがいて、彼女も暇そうにトレーを抱えて立っていた。


 今なら大丈夫そうね、と奈緒は弘志に電話してみることにした。そのためカウンター裏の戸棚に置いている、自分のハンドバックを探ってみたが、携帯がみつからない。どうやら家に忘れてきたらしい。仕方なくお店の電話を借りることにした。


 都合よくマスターは、今日は早く帰っていて店にはいない。ちょっと借りるくらいいいでしょ、と悪戯っぽい笑顔を電話に向けてボタンを押し始めた。しかし奈緒はこのとき番号を途中まで押しただけで、受話器を下ろした。そして自分に唖然とした。弘志の携帯番号が思い出せないのだ。


(えーっ!? 私どうしちゃったのかしら? たしかに最近夫に電話することはほとんどないけど……きっと、直接番号を打って電話することがないからよね)


 そう自分に言いきかせるようにして、気持ちを納得させた。仕方なく裏の従業員用の部屋に行き、緊急の連絡先として貼られている電話番号の表から、弘志の携帯番号を捜した。それを見ながら、いらなくなったレシートの裏にその番号を記入すると、表に出て店の様子を確認してから、電話機に向った。『080-〇〇〇〇-5216』の番号を押し、弘志が出るのを待った。が、いつまで経っても出ない。


(一体何してるのかしら?)

 また不安と疑惑が深くなってきた。15回ほど呼び出して一旦電話を切った。ちょうど新しいお客が2組同時に来たので、店は急に忙しくなってきたのだ。



 しばらくしてまたお店の中が落ちついてきた。奈緒は軽く睨むように、アンティークの柱時計を見ると午前1時少し前だった。

(今度電話して出なかったら、ホントに疑っちゃうからね!)


 同僚の女の子に、ごめん、ちょっと電話させてと両手を合わせると彼女は快く、どうぞと言い、すてきな笑顔を見せた。

「奈緒ちゃんたちって、やっぱりラブラブね」

 そう言って奈緒を優しく冷やかした。

 その言葉を笑ってやり過ごし、またメモを見て確認しながら番号を押した。だが呼び出し音が聞こえるだけで、電話に出る気配がない。10回ほど呼び出して、電話を切ることにした。


(どうして出ないの? もしかしてこの店の番号知らないのかしら? でも確かこの喫茶店の番号は登録してると、前に言ってたような気がするけど?)


 気がかりな気持ちを残したまま、ゆっくりと受話器を戻した。奈緒のがっかりしたような様子を見て、同僚も一瞬不思議そうな顔をしたが、すぐにそれに気づかなかったようなフリをした。


 気持ちを切り替えて、店内を回る奈緒だった。スラリとした健康的な脚を優雅に動かしながらも、高めのヒールで立ちっぱなしの脚はもう疲れきっていた。今日の勤務もあと1時間で終わる。それを励みに奈緒は頑張っていた。



 アンティーク時計の針が午前1時50分近くをさした頃には、さすがに店内にはお客もほとんどいなくなっていた。あとは飲み屋をはしごしてきたような1組のサラリーマンたちしかいない。やがて彼らを同僚がうまくあしらって、帰らせることができた。あと片づけをやりながらも、奈緒はまた受話器に向っていた。4、5回呼び出したが、反応がない。

(やっぱり出ない。もう! 最低。弘志さんって、ホントに浮気してるんじゃないの?)


 いらつく心に、考えることはよくないことばかりである。浮気かもしれないと疑っていた点について、心の中で過去のことをいろいろ捜し始めた。


 以前、私が彼の携帯を触っただけで、なんだかすごくあわてたような態度を取ったこともあった。あれって見られて困るような番号を登録しているからじゃないかしら? 

 脱ぎっぱなしのスラックスをハンガーにかけようとしたときも、なんだか様子が変だった。ポケットの中をさぐるようなことはしなかったけど、それを心配しているようにも見えたわ。

 疑念は次から次へと浮かんでくる。少し憂鬱な気分で片づけをやっている奈緒であった。



 突然お店のドアの開く音がした。すかさず同僚が、

「すみません。もう閉店なんですけど……」

 と丁寧な口調で言いながら、ドアの方へ向った。

 彼女は一瞬アッと驚いたような声を出した。そしてニタニタして奈緒の所に戻ってきた。

「お迎えが来られてますよ。うらやましいな」

 そう言うなり奈緒の肩をパンッと叩いた。


 ドアの方を見ると、なんだかバツの悪そうな表情で立っている弘志がいた。同僚にお世話になってますと笑顔で言い、今度は奈緒をまっすぐに見つめていた。しかし奈緒の電話には気づいてないようでもある。とぼけているのかしら? そう奈緒は思った。


「直接会社から寄ったんだ。じゃ、帰ろうか」

 ぶっきらぼうな声で弘志は言った。


「分かった。ちょっと待ってて」

 奈緒も同様、ぶっきらぼうな声で応じた。

 なんだか夫婦喧嘩の最中のような感じである。片付けも終了し、奈緒たちは店を出た。途中まで同僚も一緒だったが、分かれ道に来ると彼女は明るく手を振って離れていった。弘志たち夫婦と同じように彼女もわりと近くに住んでいるのだ。


 深夜の舗道は人がまばらである。が、街中の灯が明るく道路を照らしており、危険をあまり感じることはない。また近くに交番もあり、その点ではありがたい場所なのかもしれない。同僚と別れてから、二人はしばらく黙って歩いていたが、奈緒が不機嫌な声で話しかけた。


「ねえ、今日何回かお店の電話で、あなたに電話したけど出なかったわね」

ホントに会社帰りだったの? とまでは言わなかったが。

 それを聞いた弘志は意外な顔を奈緒に向けた。

「いつだ? オレ、全然知らなかったぜ」

 そう言い自分の携帯を取り出して確認していた。そして履歴を見るとまた妙な顔をした。

「履歴もないけどなあ。あの店の番号は登録しているから、奈緒の言うとおりなら、表示されてるはずだけど……ほら、ないだろ」

 携帯を奈緒の目前に見せた。怒った顔で奈緒は画面を確認した。確かに着信履歴の表示がない。が、またある疑念が浮かんできた。


(履歴をわざと消したんじゃないかしら?)


 そのため怒った顔はそのままにして、弘志に言った。

「でも確かにしたのよ。間違いないわ」

 あくまで強気の姿勢である。その様子を弘志は見ながら、確かに奈緒はしたのだろう。嘘を言っているようには見えないな。そう弘志は思った。

 じゃ、なぜなんだろう? その原因を探っていた。やっぱりアレしかないかなあ、と弘志は奈緒の顔を優しく見つめた。


「奈緒? お前、番号間違えてないよな?」

 できるかぎり優しい声で尋ねた。奈緒の機嫌がわるいのが、一目瞭然だからだ。

「エ? まさか? だって私、確認してかけたわ」

 そう言うと奈緒はバックの中から、レシートの裏に書いたメモ紙を取り出した。

「だってほら、みて! 『080-〇〇〇〇-5216』でしょ」

 自信満々の様子で弘志にその紙を見せ付けた。


 ン? 奈緒の言葉に、弘志は何か違和感を感じた。街灯の薄明かりの中でその番号を見ながら変な顔をした。そしてもう一度番号を確認すると、途端にブッと吹き出して笑った。


「なによ。間違えてるっていうの?」

 怒り心頭の声で弘志を睨んだ。

 弘志は笑ったことを軽く謝り、そのメモ紙を見せながら、今度は携帯を出して、その携帯番号と見比べられるようにした。

「よく見ろよ。最後の数字が違うから――」

 まさかとは思いながらも奈緒は、メモ紙と携帯の番号を交互に注意深く確認した。夫の前ではあったが、それを見て顔が真っ赤になってしまった。確かに違うのだ。


(やっちゃった……。やっぱり私ってドジだわ)


 最後の4桁番号は、『5216』ではなく『5215』だったのだ。5と6を間違えていたのである。


 でもあれほど注意しながら書き写したのに、との思いが奈緒にはある。ということはあの表自体、間違っていたのかもしれない。いつだったか、連絡先作成のために夫の携帯番号を書いた紙を、マスターに渡したのは奈緒である。その時点では間違ってなかった。なぜならそれを書いたのは夫だし、渡す前に念のため奈緒も自分の携帯で、夫の番号を確認していたから。


 じゃ、マスターが間違ったのか? いや違う。最初はマスターが表を作るはずだったのだが、それぐらいなら私がやりますと言い、あの連絡表をパソコンで作成したのも奈緒なのだ。

(結局……私が間違って入力したんだ)

 改めて自分の過ちだと分かり、奈緒は深く反省した。

「ごめんね。確かに私が間違ってたみたいね」

「誰でも間違いはあるさ」

 弘志は笑いをこらえながら、神妙な顔つきで前を向いていた。


 奈緒はボンヤリとした様子で、夜空を見上げた。

(あーあ、やになっちゃうな。夫の携帯番号を憶えてなかったり、間違えたりしてさ。もしかしたら他の従業員の番号も間違えてるかもしれないし――)

 気分が落ち込んできた。が、夫はさらに落ち込むようなことを言った。

「奈緒のかけた電話は一体誰につながったんだろうな?」


「アッ!?」

 思わず大きな声を出した奈緒だ。そうだった!? そのこと忘れてた。奈緒はイライラしながら電話の呼び出し音を聞いていたときのことを思い出していた。あの番号が夫のじゃなかったとしたら、誰か知らない人の携帯を3度も呼び出していたわけだわ。しかもこんな夜中に!


「ごめんなさい!!」

 弘志にまた謝っていた。弘志はクックッと笑いながら、

「オレに謝っても仕方ないよ。その間違えた相手に謝らなきゃな」

 と悪戯っぽく答えた。

 そういうと奈緒はますます落ち込んだ表情をした。ちょっとからかいすぎたかな、と弘志はかわいそうになり、奈緒を少しでも励ますようなことはないかと思いめぐらした。


「そうだな。結局相手は電話に出なかったわけだろ。じゃ、きっと気づかずに寝てたんだよ。携帯を、別の部屋かなんかに置きっぱなしにしてさぁ」

 そう言って彼女の肩に優しく手を置いた。

夫がそう言っているのを聞くと、奈緒はなんだかそのような気になってきた。

「そうね。きっとそうよね」

 奈緒は自分に言いきかせるように軽く頷いた。気持ちの切り替えは早い方である。



「よし! このことはもうこれで終わり。来週の月曜は二人でどこか食事にいこうぜ。だってお前の誕生日だからな」

「エッ、憶えていてくれたの?」

 奈緒の落ち込んでいた顔は、たちまち明るく華やかになった。

「当たり前じゃないか。ところでお前はオレの誕生日憶えてるか?」

「もちろん、憶えてるわよ。6月21日でしょ」

 得意そうにいう奈緒だ。


「オオ。さすがは俺のワイフだな。安心したぜ」

 弘志の心配顔が本気だったので、あきれた奈緒は弘志の背中を軽く叩いた。

「当たり前じゃない。弘志さんのバカ」

 さらにふざけて弘志に体当たりをした奈緒だ。なんだかこうして話していると、お店で弘志の浮気を疑っていたことが信じられないような気がしてきた。私の思い過ごしだったのかな?


「奈緒!」

 急に改まったような声で、弘志は彼女の名前を呼んだ。

「何?」

「最近、帰るのが遅くなってて悪かったな。もう少しすれば、残業も少なくなるからな」

 夫のその言葉に嘘はないような気がした。

「ううん。いいのよ。お仕事だから仕方ないじゃない。それより私! 仕事やめるわ」

「なんでだよ? いや、やめなくていいよ」

「だってあなたに迷惑かけてるし――」

 だんだんとお互いを労るような雰囲気になってきた。


「いや、いいって。オレのことは心配するなよ。ただお前がホントにやめたいのならそれでもいいけどな」


 実際に奈緒自身はやめたくはなかった。家にばかりいるのもつまらないし、夫には言えないが彼だけの給料では少し足りないような気もするのだ。


「あのね。ほんというと、できれば続けたいの……」

 奈緒はいいにくそうに本心を伝えた。

「だろ。じゃ続けていいよ」

 いたわるように、優しく言う夫に心から感謝した。ただすれ違いを解消するためには、やはり勤務日を少し減らすことも考えなくては。マスターに言えばなんとかしてくれるだろう。


「ありがとう。じゃ、勤務日を少し減らせるように、今度マスターに相談してみるわ。そのほうがいいもん」

 そう言うと、弘志の手を強く掴んだ。照れたような弘志はその手を握ったまま、少し早めに歩き出した。


「よし! 早く家に帰ろうぜ」

「エ!? ちょっと、歩くの速いよ」

 とあわててくっつくように歩きながら、奈緒は嬉しそうな表情で弘志を見つめた。二人とも、一緒にいる時間がいかに大事かということを再認識していた。たとえそれがなんでもない時のように思えても、だ。


 仲良く手を繋ぎながら、足早に家路を急ぐ二人の様子は、道行く人からは鬱陶しくも、たまらなく羨ましいアツアツの恋人たちに思われていた。


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