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優しい時間  作者: 華南
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それぞれの親友達 その4

Act.11 それぞれの親友達 その4




「再会した日から、私の毎日は彼によって変化していったわ…


忍さんの仕事上、終わる時間も休日もまちまちなので時間がなかなかあう事が無かったけど、でも彼はその忙しい中、

時間を作り私とデートした。


逢う度に行く場所の豪華さに戸惑いそして全てが彼に支払われる度に、心が重く沈んでいる事が解ったの。


彼に再会して付き合う様になった事に関しては、今でも嬉しいわ。


想いを重ねる事が出来た事に泣いて喜んだ。


だけど現実を知り今の自分を思った途端、彼に対する想いに少しずつ陰りがさしてきたの。


余りにも価値観と生活水準が違うと言う現実に。


生きている環境が違う事に私は、いつの間にか忍さんに対して劣等を抱く様になった。


それを誤魔化すかの様に、無意識に今の忍さんに過去の忍さんを求める様になったの。


子供っぽい仕草に愚痴りながらも、その事に内心喜んでいた。


もっと過去の彼を見せて…。


そうしたら私は自分を保てる事が出来る。


忍さんと一緒にいてもいいのだと実感出来る。


可笑しいでしょう?


それも彼の一部なのに、なのに私はそれを拒んでいるの…」


「でも、夏流。


いつも言うじゃないの。


人は人、自分は自分だと。」


美咲の言葉に寂しく笑った。


「解っているの…。


でもね、美咲。


人を好きになるって、こういう矛盾もあると言うのが解ったの。


私は忍さんと対等でいたいと心の何処かで願っていたの。


全てに於いて。


美咲。


10年前、彼と私は別れてまるっきり違う人生を歩んだわ。


私はあの時、自分の選択が間違っていたとは今でも思わない。


あのまま忍さんと付き合っていたとしても、お互いが過去に捕われて真実に向き合おうとは、絶対に思えなかったから。


その気持ちが忍さんにも伝わった事が私、本当に嬉しかったの。」


「…」


「あの後、母の様態が急変して一時期、命が危ぶまれ一緒にいたいと強く望んだから就職と言う道を選んだけど、それに関して後悔はしていない。


毎日が大変だったけどその中で生活の基盤、今の自分を確立させたわ。


そんな私に、忍さんの行動は既に許容範囲を超えているの。


私を思っての出費だとは解っているのだけど、だけど本当に受け入れる事が出来ないの。


正直、どうしたらいいのか解らない。」


「…どうして素直に甘える事が出来ないの?


喜んで受け入れる事が出来ないの?」


美咲の言葉に戸惑い、一瞬返答に困ってしまった。


「夏流のそういう謙虚さと自立心は本当に感心するし偉いと思っている。


だけど、どんな時でもそういう考えだと疲れるわよ。


彼は夏流の事を本当に愛してる。


それは解っているわよね。


夏流の今の悩みをそのままぶつけたら?


いつまでの心の中に溜めていると、いつか爆発して修復が難しくなるわよ。


夏流はそれでいいの?」


「…でも忍さんには言えない。


そんな悩みを見せれない。」


夏流の煮え切らない態度にだんだんイライラしだした美咲は、急に夏流のバッグを掴み中を荒らしだした。


美咲の急な行動に唖然とし見つめる事しか出来ない。


夏流のバッグから携帯と取り出した美咲は、あろう事か忍に電話しだした。


直ぐさま携帯に出た忍に一方的に言葉を放つ。


「もしもし、夏流の彼氏さん?


夏流、貴方との交際を真面目に悩んでいるわよ。


一体、貴方、夏流とどんな交際をしているのよ!」


美咲の言葉にぎょっとした夏流は美咲の手から携帯をつかみ取ろうとするが美咲に行動を制され動けない。


「黙っていて!」と促される美咲の言葉と形相に、流石の夏流も反抗する事が出来ずそのまま美咲の行動を見つめていた。


それほど美咲の機嫌は悪かった。


「このまま付き合っていて夏流の煮え切らない愚痴をたびたび聞かされるのなら、夏流に相応しい相手を紹介して、別れさせるわよ!


それでもいいの?


え…?


勝手な事を言うなって!


じゃああ、夏流に不安を抱かせない交際をしなさいよ!


夏流の性格を知っているでしょう?


知っていたら何故、夏流を追い込ませるの?


自分を卑下させるのよ。


ちゃんと夏流の事を理解しているの?


もう、夏流は何処にいるかって?


自宅にいるわよ。


心配ならすぐに来て夏流と話し合いなさい!


言っときますけど、夏流はね、かなりモテるのよ。


本人は自覚無いけど。


その気になれば、結婚相手なんてすぐに見つかるんだから。


なんなら私、夏流に明日にでも紹介するわよ?」


ぶちり、と携帯を切った美咲は「ふふふ、言ってやったわ。」と拳を握りガッツポーズをとった。


美咲の言葉に蒼白になり、口をぱくぱくするしか出来ない。


「み、美咲、も、もう貴女何、言っているの?


忍さんと何を話せって言うのよ…」


途切れ途切れに話す夏流に、ぴしゃりと、「知らないわよ」と言葉を切った。


「何を無責任な事を…」を力なく言う夏流に美咲は冷たく言う。


「うじうじ悩む夏流がいけないのよ。


こうでもしないと夏流は彼氏に本心を言わないでしょう?


いつも受け身でいいの?


夏流は言いたい事を言っている様で、実は強くは物事を言ってはいないし、相手の気持ちを考えるでしょう?


そういうのって偽善としか言えないの!


少しは自分の事を考えてもいいのよ。


言いたい事を言えない関係程、悲しい事はないわ。


彼氏さん、絶対に怒っていると思うわよ。


夏流が本心をひた隠しにしていた事に。


こうなった以上は自分の気持ちを素直に言う事!


じゃ、私、帰るから、彼氏さんとじっくり話してね。


明日、出勤が難しそうだったらメールを頂戴。


私が職場にいいように電話いれるから。」


言いたい事だけ言い切った美咲は夏流のマンションを後にした。


そして20分後、息を切らし執拗にインターフォンを押す忍の姿を、夏流はドア越しに垣間見る様になる…。


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