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人肌ロマンティック

壁打ち

作者: 賀東しょこら

 ねえ、と問う。

 応えはない。

 代わりに、絶えずキーボードを叩いていた指先が止まっている。

「私のこと、好き?」

 言葉は返ってこない。

 ふ、と息が漏らされるのを聞く。その口は三日月の形。まっすぐな横顔の、その目が一度、ゆっくりと閉じられる。

 指先が再び動き出し、さざなみのようによどみなくキーボードを叩き始める。言葉はないし、振り返るどころか目も向けてもらえない。

 それでも案外、事足りる。

 今のご時世、綺麗な言葉は安くなった。好きだとか、愛してるとかは、有名人が万人向けに垂れ流す、ただのセリフに成り下がった。

 聞けたら聞けたで、それは嬉しいのかもしれないが、私は言われたことがない。

 でも、あの心は確かに私のものだ。

 返事はしてくれないけれど、話はちゃんと聞いてくれる。

 好きだと言えば、しみじみと笑ってくれる。

 そこに嘘なんてない。

 キーボードの音は止んで、伸びてきた指先が私の首筋をくすぐる。

 優しい眼が私の顔を映している。私も、しみじみと笑っていた。

 ただ単に、信じていられる。

 熱と呼べるほど激しくはないけれど、これが絶えることはきっとない。今すぐ離れ離れになっても平気だ。もちろん一番は、こうしてそばにいること。

 人とつながっていることを素直に望んで、信じられるのは幸せだと思う。

 だから自分は今、こんなに温かい。

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― 新着の感想 ―
[一言] いいですね。 短い中にも温かみのある作品で、色々な解釈ができるし、心に染みました。 このような素晴らしい作品を企画に応募していただき、ありがとうございました。
2012/03/11 22:11 退会済み
管理
[一言] 初めまして。 城宮さんの企画がらみで読ませていただきましたが、 銀丈さんの解釈は、今回の城宮さんの意図とは少し違うように感じました。 銀丈さんのストーリーは、今回の企画の意図にちゃんとはま…
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