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ここからはじまる物語  作者: 滝沢美月
第2章 同窓会
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デートの約束



「二十四日」


 突然、そう言われて、びっくりして、カンナを仰ぎみる。

 瞬間。

 ばちっ。

 私とカンナの目が合って。

 宝石みたいにキラキラした綺麗な瞳にじぃーっと見つめられて、私はカンナをまじまじと見てしまった。

 あまりにじろじろ見すぎたのかしら。

 私の視線の先で、カンナがカッと赤くなって、ふいっと顔をそらしたの。


「二十四日は会える?」


 顔をそむけたまま、言った。

 見ると、カンナは耳まで真っ赤になってる。

 あら、照れちゃって、可愛い。




「えっと、その日は中学の同窓会があるから」


 同窓会は夕方からだけど、同じ日に予定を二つもこなせるほど私は器用な性格じゃないから。


「できれば、違う日がいいかなって……」


 そんな理由で断るのが悪いなって思って、だんだん声が小さくなる私。


「了解、予定があるなら仕方ないね。じゃ、二十五日なら大丈夫?」


「うん、二十五日は大丈夫」


 一度断ってるから、即答で答える。


「じゃ、二十五日会えるの楽しみにしてる」


 そう言って、笑うカンナ。


「どこ行くかは、また今度決めよう!」


 N高の校門まで、もうすぐのとこで。

 カンナと私は別れ、私は少し歩いてから道路を渡って、K高の校門へと向かった。



 ✜✜



 教室に入ると、まだ誰も来ていなくて。

 私は鞄を置いて、一緒に持ってきていたプール道具を持って、水泳部の部室に向かった。

 部室にも誰もいなくて。体育教官室で、プールの鍵を貰って、とりあえず気温と水温を確かめに行く。朝はまだ、プールには入れなさそうだった。

 水泳が好きなのは、泳ぐときの水の感覚が気持ち良いことと、泳いでる時は自分の世界に浸れるところかなー。

 あー、早く泳ぎたいなぁ……

 そんなことを考えつつ、頭の片隅でもう一つの事を考えていた。




『あ、奈緒は元気? 奈緒にも同窓会のこと言っといてね』


『いや、最近会ってないからわからない。……奈緒とは別れたんだ』




 御堂君……

 奈緒……




 実はあの日以来、御堂君とは話していない。

 今朝、夕貴に頼まれた同窓会のことを御堂君に伝えるってことは……御堂君と話すっていうことは、どうしても、またあの話をしなくてはならないような気がして、ずっと切り出せないでいた。

 プールと部室棟をつなぐ渡り廊下の手すりに寄りかかりながら、ぼんやりと空を見上げる。

 教室に帰って、御堂君が登校していたら、話さなくてはならない。

 そう思うと教室に向かう足取りが重くて、教室に戻りたくないような気にさえなってくる。




 ひたすらボーっとして、始業のチャイムが鳴るのを待っていたんだけど、こんな時に限って会ってしまうものなのかな。


「桜庭? 何やってるんだ?」


 そう声をかけてきたのは、他でもない御堂君。

 いま一番会いたくなかった人……


「ん……」


 私はそう言って、黙りこんでしまった。




 御堂君は、奈緒と別れたって言ってた……

 そのことについて触れていいのか、私なんかが聞いていいのか、ずっと迷ってた。




「あのね……」




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