デートの約束
「二十四日」
突然、そう言われて、びっくりして、カンナを仰ぎみる。
瞬間。
ばちっ。
私とカンナの目が合って。
宝石みたいにキラキラした綺麗な瞳にじぃーっと見つめられて、私はカンナをまじまじと見てしまった。
あまりにじろじろ見すぎたのかしら。
私の視線の先で、カンナがカッと赤くなって、ふいっと顔をそらしたの。
「二十四日は会える?」
顔をそむけたまま、言った。
見ると、カンナは耳まで真っ赤になってる。
あら、照れちゃって、可愛い。
「えっと、その日は中学の同窓会があるから」
同窓会は夕方からだけど、同じ日に予定を二つもこなせるほど私は器用な性格じゃないから。
「できれば、違う日がいいかなって……」
そんな理由で断るのが悪いなって思って、だんだん声が小さくなる私。
「了解、予定があるなら仕方ないね。じゃ、二十五日なら大丈夫?」
「うん、二十五日は大丈夫」
一度断ってるから、即答で答える。
「じゃ、二十五日会えるの楽しみにしてる」
そう言って、笑うカンナ。
「どこ行くかは、また今度決めよう!」
N高の校門まで、もうすぐのとこで。
カンナと私は別れ、私は少し歩いてから道路を渡って、K高の校門へと向かった。
✜✜
教室に入ると、まだ誰も来ていなくて。
私は鞄を置いて、一緒に持ってきていたプール道具を持って、水泳部の部室に向かった。
部室にも誰もいなくて。体育教官室で、プールの鍵を貰って、とりあえず気温と水温を確かめに行く。朝はまだ、プールには入れなさそうだった。
水泳が好きなのは、泳ぐときの水の感覚が気持ち良いことと、泳いでる時は自分の世界に浸れるところかなー。
あー、早く泳ぎたいなぁ……
そんなことを考えつつ、頭の片隅でもう一つの事を考えていた。
『あ、奈緒は元気? 奈緒にも同窓会のこと言っといてね』
『いや、最近会ってないからわからない。……奈緒とは別れたんだ』
御堂君……
奈緒……
実はあの日以来、御堂君とは話していない。
今朝、夕貴に頼まれた同窓会のことを御堂君に伝えるってことは……御堂君と話すっていうことは、どうしても、またあの話をしなくてはならないような気がして、ずっと切り出せないでいた。
プールと部室棟をつなぐ渡り廊下の手すりに寄りかかりながら、ぼんやりと空を見上げる。
教室に帰って、御堂君が登校していたら、話さなくてはならない。
そう思うと教室に向かう足取りが重くて、教室に戻りたくないような気にさえなってくる。
ひたすらボーっとして、始業のチャイムが鳴るのを待っていたんだけど、こんな時に限って会ってしまうものなのかな。
「桜庭? 何やってるんだ?」
そう声をかけてきたのは、他でもない御堂君。
いま一番会いたくなかった人……
「ん……」
私はそう言って、黙りこんでしまった。
御堂君は、奈緒と別れたって言ってた……
そのことについて触れていいのか、私なんかが聞いていいのか、ずっと迷ってた。
「あのね……」