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ここからはじまる物語  作者: 滝沢美月
第1章 この関係は友達?
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誤解



「えっと、私と菊池君って……友達、だよね?」


「うん、友達だね?」


 私が突然、変なことを聞くから、菊池君は不思議そうにこちらを見てる。


「昨日、話したばっかりだけど、俺は友達だと思ってるよ」


 だっ、だよね~!

 はぁ……

 さっきまで、一人で悶々と考えてたのが馬鹿みたい。


「俺は友達だと思ってるし、譲子さんは年上なんだからさ、俺のことカンナって名前で呼んでほしいな」


「えっ? 名前で?」


 そう言えば、菊池君ははじめから私の事を名前で呼んでたなぁ。友達とは、名前で呼びあってるのかな?


「友達はみんなカンナって呼んでるし、ねっ!」


 そう言って、上から覗き込んでくる。

 ちっ、近いんですけど、顔がっっっ!

 菊池君にまっすぐ見つめられると、目をそらせないっていうか、逆らえなくなっちゃう。


「わっわかった、名前で呼ぶから、ちょっと離れてっ」


 私は、菊池君から顔をそらして言う。

 そんなに、見ないで~!


「カンナって呼んでくれるまで、離さない」


 両手で私の頬を挟んで、無理やり顔を向けさせる。目と目があって。


「……カ、ンナ……」


 私がそう言うと、彼は嬉しそうに笑う。

 私はもう顔を合わせてるのが恥ずかしくって、下を向いて両手で顔を覆う。

 友達にこんなことするなんて、反則じゃないですか? あんな目で見つめられたら、好きになっちゃっても文句言えないよ?


「もう、からかうのはやめて」


 とんっ。

 カンナの胸を叩いて、そっぽを向く。

 なんか、ホントに今日は疲れる一日だな……カンナに気づかれない様に、ため息をつく。


「あれ? 譲子さん、怒っちゃった?」


 そっぽ向いたままの私に、あわててカンナが誤ってきた。


「ごめん、ごめん!」


 両手を顔の前で合わせて、ペコペコ頭を下げる様子はかわいいのになぁ。

 普段は、人懐っこい子犬みたいなのに、急に男の子の顔になる時があるから、ドキドキしちゃうよ……



 ✜✜



 月曜日の朝。


「おはよう、御堂(みどう)君」


 地元駅の改札で、御堂君に会った。


「桜庭、おはよ」


「いつもこの時間の電車に乗ってるの?」


 朝の駅で御堂君に会うのは珍しくて、聞いてみた。


「今週、週番だから、いつもより早く来た」


 あくびをしながら、御堂君が言う。


「そうなんだ、私はいつもこの時間だよ」


 階段を下りきってホームに着くと、電車が来るまで、まだ少し時間があるようだった。同じ学校に行くのに、そのまま別れるのも変なカンジがして、御堂君に聞いてみる。


「ホームの一番前まで行ってもいいかな?」


「ああ、いいよ」


 私が歩く後ろをゆっくりと御堂君がついてくる。ホームの端に着いた時、ちょうど電車が来て一緒に電車に乗り込んだ。




 二人分空いてる席がなかったから、座席の前に並んで立つ。


「御堂君と話すの、すごい久しぶりだよね」


 ほんとうに久しぶりで、緊張しちゃう。


「そうだな、一年の時はクラス違ったし」


 御堂 晃紘(あきひろ)君、中学三年間同じクラスだった。高校も同じで、一年の時はクラスが違ったけど、二年の今はクラスメイト。クラス替えの時ぶりに話すかな。

 なんか話題はないかと考えて、昨日のことを思い出す。


「あっ。昨日、中野達と集まったんだよ。それでね、今度、同窓会やろうかって話になって」


 中野とは、中学三年のクラスメイトで私と御堂君の共通の友人だ。


「へぇ、おもしろそうじゃん」


「まだ、日にちとかは決まってないんだけど、御堂君も来られそう?」


 そこまで言って、自然に話せてるかなって、ちらっと御堂君を見る。


「バイトじゃない日だったら大丈夫」


 吊革につかまりながら、そう言って笑う御堂君に、しばらく見とれてしまった。御堂君はクールなカンジで、本当に話すのも、笑顔を見るのも久しぶりだったから、ついつい、見とれてしまったの。

 あまりにじっと私が見てたから、御堂君と目があってしまい……

 わわっ。

 誤魔化すように目をそらして言う。


「あ、奈緒は元気? 奈緒にも同窓会のこと言っといてね」


 一瞬、黙り込む御堂君。


「いや、最近会ってないからわからない。……奈緒とは別れたんだ」


 頭を掻いて、少し困った顔をする御堂君。


「えっ?」


 御堂君と奈緒が別れた……?

 急に言われた言葉が理解できなくて、黙り込んでしまった。




「譲子さん? おはよう」


 考え込んでいて、カンナが電車に乗り込んできたことにすぐ気付かなかった。


「……あっ、おはよう、カンナ」


 ぎこちない挨拶だったかな……

 カンナは、私の横にいる御堂君を見て軽く頭を下げる。


「ども」


 私と御堂君の間には、気まずい空気が流れてた。


「じゃ、俺、向こうにいってるから」


「えっ、御堂君?」


 カンナが来たら、御堂君はスウッと隣の車両の方へ行ってしまった。


「譲子さんの友達?」


 去っていく御堂君を見ながら、カンナが聞く。


「うん。クラスメイトの御堂君」


 さっきのことが気になってしばらく考え込んでいると、カンナが聞いてきた。


「邪魔しちゃった?」


 カンナを見ると、無表情で、まだ御堂君の後ろ姿を見ていた。


「えっ、違うよ?」


 カンナがなぜそんなことを言うのか、なんとなく想像ついて、苦笑いする。


「御堂君とは、駅で偶然会っただけだよ」


 なんか言い訳っぽい言い方になっちゃったかな。


「ふ~ん」


 困ってる私に、カンナは意味ありげに言う。



 ✜✜



 国府台駅に着いて、私とカンナが歩く少し先を、御堂君が一人で歩いている。

 話しながらゆっくり歩いてる私たちと、サクサク歩く御堂君はどんどん距離が離れていく。




 御堂君は、私とカンナのことをなにか勘違いしたのかな?

 一緒に行く約束をしてると思って、一人で行っちゃったのかな?

 いろいろ想像してみるけど、御堂君がどういうつもりだったのかはわからなかった。ただ、勘違いされたと思うと、少し胸が痛んだ。

 ただの友達だよ、って言いたいけど、もう話す機会もなくて、そんなことは言えないだろうな。




更新が遅くなりました(^^;


カンナ、御堂の初対面です。御堂……愛想ないですね~

カンナは、譲子と御堂の関係をどう思ったのでしょうね。御堂は御堂で、カンナと譲子をどう思ったのでしょうか……

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