表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ここからはじまる物語  作者: 滝沢美月
第3章 蒼と碧のあいだ
22/24

はじまりはいつだって唐突に・・・



「譲子さん、好きだ」


 カンナが私を抱きしめたまま肩越しに言った。

 えっ?

 びっくりして私が振り返るのと同時に、電車が到着し、降りる人と乗る人の流れに押されるようにして私は電車に乗り込んだ。

 あまりの人の多さに、カンナを一瞬見失ってしまって探す。


「あっ、カンナ……」


 カンナは、私のすぐそばの扉の外のホームに立っていた。

 プルルル……


『電車が閉まります。白線の内側にお下がりください』


 ホームにアナウンスが響き、ベルが鳴る。

 私は、扉とホームのギリギリのところまで移動した。早く乗らないと扉が閉まっちゃうよ、って言おうとした瞬間。


「譲子さん、好きだよ。返事は次に会った時に教えて」


 そうカンナが言うのと同時に音を立てて電車の扉が閉まり、電車が動き出した。カンナは、電車から一歩下がって、真剣な瞳で私を見ていた。

 いつもだったら笑顔で手を振って別れるはずが、今日はぜんぜん違うカンナで、ツキンっと胸が痛んだ。

 私は、扉に両手をついてはりつくようにして、扉の窓から斜めに遠ざかって行くカンナを見つめた。すぐにトンネルに入り、ホームもカンナも見えなくなる。

 そうなって、やっと、さっきの言葉を思い出す。




『譲子さん、好きだよ』




 思いだした瞬間、ドキンっ、ドキンって胸が尋常じゃない早さで打ちはじめて、どんどん顔が赤くなるのが分かって、片手で顔を押さえた。

 



 私、カンナに告白されちゃったんだ……




 うれしい……




 頬がゆるむ。

 御堂君の時は戸惑いが大きくて、どうしよう? って悩んだけど。

 今の気持ちは、とても明快で、自分で自分の気持ちがわかりすぎるほどだった。

 私、いつのまに、こんなにカンナのことが好きになってたんだろう。自分でも気付かないうちに、心の中で、好きって気持ちが育ってたみたい。

 二年間の長い片思いを終えたばかりだったけど、いつのまにか恋してたみたい。

 思い返せば、カンナとのはじまりはいつだって唐突にやってきた。出会いもそうだし、恋も……




 あぁ、私は、カンナのことが好きなんだ。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ