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ここからはじまる物語  作者: 滝沢美月
間章 同窓会・・・その後
17/24

電話



 ふぁ~。

 大きなあくびが出て、手でおさえる。

 はじめてカラオケオールして、始発で帰ってきて寝て、さっき起きたとこ。

 いまはもうお昼前。

 うぅーん、っと両手を思いっきり上にのばして、体を起こす。




 今日も出かける予定だったけど、その予定は延期になって。

 さて、どうしようかと考えてると……

 ピロロン。

 携帯が鳴った。

 見ると、奈緒からの電話だった。

 ピロロン、ピロロン。

 鳴り続ける電話。

 昨日、同窓会で会った奈緒とは、たぬき亭で話してる途中に駈け出して行って、そのままだった……




「はい」


 電話に出ると、受話器の向こうから奈緒の声が聞こえた。


『譲子?』


「うん。どうしたの奈緒?」


 きっと、昨日のことで話があるんだとは分かっていたけど、そう聞いてしまった。


『メールで、話したいことがあるって言ったでしょ。昨日は、あんなことになっちゃって……ちゃんと話せなかったから……』



 ……

 しばらくの沈黙。



『晃紘から聞いたかな……私たちのこと』


「うん……聞いたよ」


 私たちの事、って言われると、胸がツキンと痛んだけど。

 昨日と違って、ここから逃げ出したいような、辛い痛みではなかった。



『私が……譲子も晃紘のことが好きだって気づいたのは、晃紘と付き合い始めて少したった頃だったの。晃紘が譲子の事好きだって気づいたのもその時……』

 


 私は、奈緒が話すのを静かに聞いた。



『中学三年の時、譲子とも、晃紘とも初めて同じクラスになって。席が近かった、譲子とはすぐに仲良くなったよね。

 はじめて、晃紘を見た時、かっこいいなって思った。一目ぼれだったのよ。

よく、譲子と晃紘が一緒に話してたでしょ。それで、私も晃紘と話すようになって、話しても楽しい人だなって思ったの。

 それで告白して、付き合い始めたんだけど。

 晃紘は、私と二人の時は、ぜんぜん話さないし、ほとんど笑ったりしないの』



 奈緒が苦笑する。



『あれっ? って思った。譲子といる時と違うな……もしかして……って。

 いま考えたら、ばかみたいよね。譲子も晃紘も、お互い好きだったから、あんなに仲良かったのに、気付かないなんて。晃紘は譲子の前でだけ、たくさん話すし、よく笑ってた。

 それで私、譲子に晃紘を取られたくなくて、晃紘に譲子と話さないでってお願いしたの。晃紘は優しいから、わかったって言ってくれたけど、それからずっと寂しそうにしてた……あんなこと言って、本当に後悔してる。

 もっと早く別れてれば……、譲子と晃紘がこんなにすれ違うことなかったのに。私のせいで、二人の仲が壊れたんだって、ずっと責任感じてた。でも、なかなか言い出せなくて……』



『ごめんね』



 奈緒が、最後にそう言った。


「ううん。私も、あの時ちゃんと自分の気持ちを言えなかったから。ちゃんと伝えていたら違ったかもしれないし」


 奈緒がすべて悪いとは思っていなかったから、そう言った。


「だから、もういいの。だって二年も前の事だしね」


 私は笑って言った。




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