電話
ふぁ~。
大きなあくびが出て、手でおさえる。
はじめてカラオケオールして、始発で帰ってきて寝て、さっき起きたとこ。
いまはもうお昼前。
うぅーん、っと両手を思いっきり上にのばして、体を起こす。
今日も出かける予定だったけど、その予定は延期になって。
さて、どうしようかと考えてると……
ピロロン。
携帯が鳴った。
見ると、奈緒からの電話だった。
ピロロン、ピロロン。
鳴り続ける電話。
昨日、同窓会で会った奈緒とは、たぬき亭で話してる途中に駈け出して行って、そのままだった……
「はい」
電話に出ると、受話器の向こうから奈緒の声が聞こえた。
『譲子?』
「うん。どうしたの奈緒?」
きっと、昨日のことで話があるんだとは分かっていたけど、そう聞いてしまった。
『メールで、話したいことがあるって言ったでしょ。昨日は、あんなことになっちゃって……ちゃんと話せなかったから……』
……
しばらくの沈黙。
『晃紘から聞いたかな……私たちのこと』
「うん……聞いたよ」
私たちの事、って言われると、胸がツキンと痛んだけど。
昨日と違って、ここから逃げ出したいような、辛い痛みではなかった。
『私が……譲子も晃紘のことが好きだって気づいたのは、晃紘と付き合い始めて少したった頃だったの。晃紘が譲子の事好きだって気づいたのもその時……』
私は、奈緒が話すのを静かに聞いた。
『中学三年の時、譲子とも、晃紘とも初めて同じクラスになって。席が近かった、譲子とはすぐに仲良くなったよね。
はじめて、晃紘を見た時、かっこいいなって思った。一目ぼれだったのよ。
よく、譲子と晃紘が一緒に話してたでしょ。それで、私も晃紘と話すようになって、話しても楽しい人だなって思ったの。
それで告白して、付き合い始めたんだけど。
晃紘は、私と二人の時は、ぜんぜん話さないし、ほとんど笑ったりしないの』
奈緒が苦笑する。
『あれっ? って思った。譲子といる時と違うな……もしかして……って。
いま考えたら、ばかみたいよね。譲子も晃紘も、お互い好きだったから、あんなに仲良かったのに、気付かないなんて。晃紘は譲子の前でだけ、たくさん話すし、よく笑ってた。
それで私、譲子に晃紘を取られたくなくて、晃紘に譲子と話さないでってお願いしたの。晃紘は優しいから、わかったって言ってくれたけど、それからずっと寂しそうにしてた……あんなこと言って、本当に後悔してる。
もっと早く別れてれば……、譲子と晃紘がこんなにすれ違うことなかったのに。私のせいで、二人の仲が壊れたんだって、ずっと責任感じてた。でも、なかなか言い出せなくて……』
『ごめんね』
奈緒が、最後にそう言った。
「ううん。私も、あの時ちゃんと自分の気持ちを言えなかったから。ちゃんと伝えていたら違ったかもしれないし」
奈緒がすべて悪いとは思っていなかったから、そう言った。
「だから、もういいの。だって二年も前の事だしね」
私は笑って言った。