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ここからはじまる物語  作者: 滝沢美月
第2章 同窓会
15/24

それぞれのキモチ



「それは、一緒だったよ? だって同窓会なんだから?」


 ぽかんっ、としてしまったの。

 カンナが怖い顔であまりにも普通の事を聞いてくるから、私はなんでそんなこと聞くのかよくわからなくて首をかしげながら答えた。


「だけどメールで……」


 その続きを言おうとして、カンナが口に手を当てて、横を向いてうつむいた。うつむく前に、一瞬、御堂君を見たことに気づいて、私は御堂君を振り返った。

 御堂君は、カンナをまっすぐ見ていた。


「俺がいない方がいいなら」


 そう言って立ちあがって、私に先に店内に戻ってると言って、カラオケ店に入って行ってしまった。



 ✜✜



 しばらくの沈黙の後。


「あぁーーっ」


 急に大きな声をだして、カンナがその場にしゃがみこんだ。

 頭をわしゃわしゃ掻きむしってる。

 私は、わけがわからなくて、おろおろ……

 しゃがみこんだカンナの近くに行って、カンナの顔を覗き込んだ。


「なんで、あんなメール送ったんだよ……」


 ぽつん、とカンナが小さな声で言う。

 私の服の裾を、ちょんっと引っ張りながら。


「えっ?」


 メール?

 私は首をかしげて、手に持っていた携帯を見て、あっと思い出す。

 カンナに、書きかけのメールを間違えて送っちゃってたことを!

 あわてて携帯を開いて、送信ボックスの一番上にあるカンナへ送ったメールを開く。



『To:菊池 カンナ

 subject:了解!

 本文:10時ね。

    そう、同窓会。いま御堂君に会って』



 『会って』の書きかけでメールが送られていた。

 カンナはこのメールを見て、私と御堂君が同窓会以外でも会っていたと勘違いしたの?



 ぷっ。


「あははっ」


 私は、思わず笑っちゃった。

 だって、みんなみんな、勘違いだらけなんだもん。

 世の中、勘違いで成り立ってるのかしら……

 笑いすぎで涙目になってる私を、今度はカンナがぽかんと見つめている。




 一通り笑いが収まって、手の甲で涙をぬぐう。


「ごめん……、なんかおかしくなっちゃって」


 カンナが、じーっと私を見てる。


「違うの、メールは書きかけで間違えて送っちゃったんだけど、そのことすっかり忘れてて。

 昨日は、同窓会の前にぶらぶらしようと思って早く行ったら、偶然御堂君に会って、同窓会の準備の手伝いに行くっていうから一緒に手伝いして。

 今も、同窓会の三次会のカラオケに来てて、家に連絡するために外に出てたの」


 カンナは、私が話すのを静かに聞いてくれた。

 それから。

 はぁー。

 っと、ため息をついて、腕を前にのばして。


「そっか」


 って、それだけ。


「心配した?」


 私が笑って聞くと、カンナが苦笑して答える。


「うん。譲子さんとあいつが付き合っちゃうかと思った」


 澄んだ瞳の中に甘やかなきらめきがあって、うっとりするような甘い顔で見つめられて、つい見とれてしまって。

 ドキってしちゃった。




 それから、少しカンナと話して、カンナも昨日は昼過ぎから友達と会ってたこと。そのまま、カラオケオールになったことを教えてくれた。


「そろそろ行かないと、友達、待たせてるから」


 そう言って、カンナが立ちあがった。私も、立ちあがる。


「今日、どうしよっか?」


「えっ?」


 今日?

 私がきょとんとして、聞き返すと。


「デート! 約束したでしょ?」


 そう言って、ニヤッと笑った。

 あっ、そっか。カンナと約束してた二十五日って、もう今日なのか……


「俺も譲子さんもオールで、そのまま朝合流してもいいけど。譲子さん疲れちゃわないかな?」


 そう言って、私の事を心配してくれるカンナの優しさが、嬉しくって。

 結局、今日のデートは延期することにした。



 ✜✜



 カンナと別れてカラオケ屋に戻った私は、夕貴につかまって今までどうしてたのかっ、御堂君とどうなったのかって、しつこく聞かれた。

 なんだか、その食いつきっぷりが沙世ちゃんみたいで笑えてしまった。

 夕貴には、いっぱい心配かけて、相談にも乗ってもらったけど、まずは、御堂君本人に返事をしなければと思い、後でちゃんと報告するねと言って御堂君を探した。

 カラオケでは、数人ずついくつかの部屋に別れてたから、同級生のいる部屋を一つずつまわって、御堂君を探した。




 朝までカラオケして、始発で家に帰って、一眠りして。

 お昼ごろに起きたら、奈緒から電話がかかってきた。




※現在は条例でゲームセンターやカラオケ店の18時以降は16歳未満の立入禁止・22時以降は18歳未満の禁止となっています。


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