表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ここからはじまる物語  作者: 滝沢美月
第2章 同窓会
11/24

同窓会・・・直前



 お昼ごはんを食べ終わって部屋に戻ってくると、机の上の携帯がメール受信を知らせてピカピカと光っていた。

 携帯を開いてみると、カンナからのメールだった。



『From:菊池 カンナ

 subject:明日

 本文:T駅に集合でいいかな?

    映画もあるし、カラオケもあるし……何するかは行ってから決めよう。

    実は、いま起きた……』



 ✜✜



 七月に入ってから。

 カンナとは、放課後はそれぞれの部活が忙しくて、朝も、大会前のカンナは朝練がいつもより早くから始まったりして、ほとんどすれ違っていた。

 だから、遊ぶ約束はしたものの、具体的にどうするかとか決められないまま、時間が経っていった。

 七月二十日、終業式。

 その日、久しぶりにカンナに会った。


「おはよ、譲子さん」


 久しぶりに見たカンナは、日焼けして、すこし黒くなっていた。


「おはよう、カンナ」


 私は、カンナが朝練で一緒に登校できない間は、久しぶりに読書を楽しんでいた。読んでいた本を閉じて、鞄にしまう。


「明日から、夏休みだね」


 そう言うと、カンナはうんざりした感じで。


「あー、もう夏休みとか関係なく部活だからなぁ……、さすがに今日は部活ないけど」


 部活がんばってるカンナだけど、七月に入ってからは朝も放課後も土日もずっと練習だったから、すごい疲れてるみたい。

 昨日までの三日間は夏の大会があって、それで一段落なのかと思ったら、まだ八月にも大会があるらしく、夏休み中もハードに部活があるんだって。


「夏休みも忙しそうだね」


 私が疲れた様子のカンナを見て苦笑すると、カンナも苦笑して。


「うん、でも好きでやってるから。それに、夏休みも譲子さんに会えるって思えば頑張れるよ」


 にこっ。

 言って、うっとりするような甘い顔で笑う。

 うっ。

 ずるい。

 そんな素敵な笑顔を見せられたら、好きになっちゃいそうだよ。

 そうして、二十五日以外にも、夏休みに会う約束をさせられてしまったのだった。



 ✜✜



 私は、携帯を両手で持って、カチカチとメールを打ち始めた。



『To:菊池 カンナ

 subject:OK

 本文:それでいいよ。何時に集合?

    私はもうお昼ごはん食べたよ。もう少ししたら出かけるんだ』



 ベットに座って垂らした足をブラブラさせながら、時間を確かめた。

 今は午後一時。

 同窓会は六時からだけど、少し早めに行って買い物でもしようかな。

 実は、同窓会をやるたぬき亭があるのも、明日、カンナと会う約束をしたT駅なの。

 メールを打ち終わって携帯を鞄にしまい、家を出た。



 学校に行く時に乗るのと同じ電車に乗って一駅。そこで乗り換えて一駅。T駅に着く。

 T駅はこのあたりでは一番大きな駅で、駅前にはデパートや大きなショッピングモールもある。

 たぬき亭はそのショッピングモールの側にあるお店で、中三のクラスメイトだった中野の両親がやっている洋食屋さん。コロッケがとってもおいしいの。

 中学の卒業式の打ち上げも、そのたぬき亭でやっている。

 T駅に着いて、ショッピングモールに向かって歩いてると、携帯が鳴ったことに気づく。



『From:菊池 カンナ

 subject:10時でいいかな?

 本文:そういえば、今日同窓会だったっけ? 楽しんできてねー

    俺も、今から友達と出かけるよ』



 カンナからのメールだった。それともう一件。

 開いてみると……



『From:須藤 奈緒

 subject:無題

 本文:今日の同窓会が終わった後に、話したいことがあるの。

    聞いてくれる?』



 奈緒からだった。

 なんだろう……聞いてほしいことって……

 すっごく嫌な予感がするのは、私の気のせいかしら。

 奈緒とは、今でも友達だと思ってる。でも、奈緒の方はどうなんだろうか。

 奈緒は、御堂君と付き合い始めてから、私とはめったに遊ばなくなったし、卒業以来メールは時々してたけど、会ったことは一度もない。

 そもそも、御堂君に私と話さないでって言ったのも、奈緒なんだよね……

 奈緒はもしかしたら、私の気持ちに気づいていてて、だから私と御堂君を話させないようにさせたのかしら。

 その奈緒が、今さら、私に何の話があるというのだろう……




 そんなことを悶々と考えながら歩いていたら、人とぶつかってしまった。

 ドンッ!


「あっ、ごめんなさい……」


 相手の顔を見ずに、ペコペコ頭を下げて謝る私。

 そしたら。


「桜庭?」


 その声を聞いて顔を上げると、御堂君が目の前に立っていた。


「えっ、あれ、御堂君?」


 まさか、ぶつかったのが御堂君だったなんて。

 びっくりして、しばらく見つめていると。


「もしかして、桜庭も中野に呼び出されたのか?」


「えっ、中野?」


 突然、中野の名前が出てきてびっくり。

 なんで、中野?

 私が、ぽかんとして、首をかしげてると。


「あれ、違った? 俺は、中野に同窓会の準備手伝えって呼び出されたんだけど……」


 そーいえば、夕貴も同窓会の準備で午前中からたぬき亭に呼び出されたって、電話で言ってたな。


「あー、夕貴も呼び出されたって言ってたけど、もしかして、手伝い足りないのかな? 私も行った方がいいかな?」


 特に目的があって早く来たわけでもないから、手伝いに行こうかな。


「あー、まあ、人手は多いに越したことはないと思うけど。大丈夫?」


 用事があって早く来たんじゃないのか、って御堂君が聞く。


「うん、ぶらぶらしようと思って早く来ただけだから、手伝うよ」


 それで、二人でたぬき亭に向かった。




 しばらく歩いて、手に持ったままだった携帯に気づく。

 あっ。

 カンナと奈緒に返信しないと……


「ちょっとメールしてもいい?」


 いちお、一緒に歩いてる御堂君に聞いてみる。


「ああ」


 御堂君が頷く。

 さて、なんと返信しよう……

 携帯画面を顔の前に掲げて、うーん、うーんと悩む。

 とりあえず、カンナから返信しよう。

 そう思って、受信ボックスからカンナのメールを選んで“返信”を押す。



『To:菊池 カンナ

 subject:了解!

 本文:十時ね。

    そう、同窓会。いま御堂君に会って、一緒に向かってるとこだよ』



 そこまで打って、こんなこと書いちゃいけないなっと思って、二行目を消しにかかる。

 ピッ、ピッ、ピッ……

 考えながら両手で携帯を操作してたから、歩くのが遅くなっちゃって、いつの間にか御堂君と離れていた。

 小走りで御堂君に追いつくと、御堂君が私の手元を見て。


「メールって、こないだ一緒だったN高のヤツ……?」


「えっ?」


 急にそんなことを言われて、携帯のボタンをいじってた手がぶれる。

 ピッ。


「あっ!」


 あわててボタンを押したものだから、ボタンを間違えて書きかけのメールを送信してしまった……


「大丈夫?」


 御堂君が、眉根をよせて聞いてくる。


「だいじょうぶ……」


「N高のヤツにメール?……もしかして、付き合ってるの?」


 まさか、御堂君にそんなこと聞かれると思ってなくて。

 びっくり。


「メールは……そうだけど、付き合ってはいないよ」


 電車でカンナと御堂君が会った時、付き合ってるとか誤解されてたらどうしようって思ったけど、御堂君からこの話題に触れてくるなんて思いもしなかった。

 もし誤解してるなら、誤解を解きたいって思ってた。

 だからちゃんと言わなきゃ。


「N高の彼は、あっ、菊池君って言って。たまたま電車で話して友達になったんだよ」


 ドキドキっ。

 これで、ちゃんと伝わってるかな……


「そうなんだ……」


 そう言った御堂君を見上げると、涼やかな眼差しで前を見ていた。




 それから、御堂君はずっと無言で歩いてて、あっという間にたぬき亭に着いてしまった。

 だから、私も、すっかり忘れていたの……

 カンナに、間違って書きかけのメールを送ったことも。

 奈緒から来たメールのことも。

 すっかり。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ