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ここからはじまる物語  作者: 滝沢美月
序章 PROLOGUE
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電車は出会いの場!?



 学校帰りの電車の中。

 ドアの隅に寄りかかりながら本を読んでいた。最近、はまって読んでいる小説の続きが気になるんだけど、昨日の夜も遅くまで本を読んでいたから眠くなってきた。

 電車の揺れが気持よくて、本を読んでるのに瞼が重くなってうとうとする……

 バサッ!

 カーブで電車が大きく揺れたのと同時に意識が飛んで、手に持っていた本が落ちてしまった。

 立ったまま寝てしまったことが恥ずかしく、あわてて本を拾おうとしたのだけど。

 伸ばした手の向こうから、誰かの手がすっと出てきて、本を拾って渡してくれた。




「大丈夫?」


 私の落とした本を、学ランの男の子が拾ってくれた。


「ありがとう」


「どういたしまして。あっ、このシリーズ面白いよね。俺も好き」


 本のタイトルを見て笑った男の子に、しばらく見とれてしまった私。

 彼は、うちの高校の隣にあるN高校の制服を着てる。綺麗な黒髪・短髪で、私より背が少し高くて、顔はわりと整ってる方。万人受けしそうな顔立ち。


「あっ、ごめん。話すの初めてなのに、俺べらべらしゃべって……」


「えっ、そんなことないよ?」


 じろじろと観察してた私は、曖昧にうなずく。


「実は、さ……朝、いつも電車で見かけてて、話してみたいなってずっと思ってたんだ」


「えっ?」


 急にそんなことを言われてビックリしちゃった。


「うん、同じ電車の同じ車両」


 彼は笑顔だ。


「ぜんぜん気づかなかった……」


 本当に、ぜんぜん気づかなかったの。


「いつも真剣に本読んでるよね?」


「本、好きだから。このシリーズも面白いのに、友達には子供っぽいって言われちゃって。この本好きな人がいて嬉しい」


 私は本が好きで、通学の暇をつぶすために、だいたい車内では本を読んでいる。彼がそのことを知っているということは、本当に朝、同じ電車に乗っているようだ。

 私なんか読書に夢中で、同じ電車にどんな人が乗ってるかなんて気にしたことも、考えたこともなかったのにな。


「俺、N高1年の菊池(きくち) カンナ。よろしく」


「私は、K高校2年、桜庭 譲子(さくらば ゆずこ)です」


「えっ、年上? 同じ学年だと思ってた……」


 その後も、降りる駅に着くまで他愛もない話をした。



 ✜✜



 次の日。

 朝ごはんも食べ終わって、行く準備も完璧。


「ごめんね、お母さん寝坊しちゃって。お弁当もう少しでできるから、まだ時間大丈夫?」


「大丈夫だよ、いつも早めに出てるだけだから。1本遅い電車でも、ぜんぜん間に合うし」


 後はお弁当を入れるだけ。TVで朝のニュースを見ながら、お弁当ができるのを待っていた。


「はい、お待たせ!」


 お母さんが、台所からバタバタとスリッパの音を響かせてやってきて、お弁当を渡してくれた。


「ありがと。行ってきます」




 玄関を出て腕時計を見ると、5分だけいつもより家を出るのが遅い。5分なら、急げばいつもの電車に間に合うだろう。

 家を出て、自転車を飛ばして漕ぐ。駅前の大通りを、駅に向かって歩く人や自転車を勢いよく追い越して、あっという間に駅に着き、駅前の駐輪場に自転車を置き、改札へと急いだ。改札を通るとちょうど電車が来たので階段を駆け下り、階段から一番近い最後尾の車両に駆けこんだ。

 ギリギリセーフ。

 息を切らしながら車内を見渡すと空いてる席はなかったので、いつも乗ってる一番前の車両まで歩きだした。

 毎朝乗ってる車両は、進行方向一番前の車両。学校のある国府台(こうのだい)駅の改札に一番近くて、しかもわりと空いてて座れるのである。電車の時間より早めに駅に付いて、ホームの一番前まで行って電車を待つ。それで電車の中で座って本を読むのがいつものこと。

 動きだした車内を、人にぶつからないように慎重に歩きながら車両を移動して、2駅過ぎて、やっと一番前の車両に着いた。

 空いてる席があったら座って本を読みたいなと思う。どこか空いていないかと、座席の方を見ると、ドアの前に立っている昨日の彼と目があった。


「おはよ」


 菊池君が、満面の笑みで挨拶してくる。


「おはよう」


 席はどこも空いていないようなので、そう言って菊池君の傍まで行く。

 菊池君は、ほっと息とつき。


「よかったー。昨日、俺が話しかけたのが嫌で、時間ずらされたのかと思った」


 顔をかきながら、苦笑する菊池君。


「まさか、そんな。今日はちょっと家を出るのが遅くなって、改札から一番近い車両に飛び乗ったの」


「そっか。よかった」


 よかった、って何度も言ってるのが可笑しくて、少し笑ってしまった。




「国府台駅はこの車両が改札近くていいよね。K高も国府台で降りるでしょ?」


「うん」


「ここの車両、意外と空いてるし、いいよね」


 私の通ってるK高校と菊池君の通ってるN高校は、同じ国府台駅から徒歩数分のところにあって、道路を挟んで隣の敷地に建っている。K高校はそこそこのレベルの公立。N高校はレベルの高い私立。隣同士の高校でも、ほとんど交流がなくN高生のことを意識したことはぜんぜんなかった。

 そういえば、駅から学校までの道のり、K高生とN高生、同じくらい歩いている。いつも、始業より少し早めの時間に行ってるから、朝の通学路ではあんまり学生は見かけないけど。


「あのさ、昨日会ったばかりだけど。もしよかったら、朝一緒に登校してもいいかな?」


「えっ!?」


 いきなりの提案に、ビックリして大きな声をあげてしまった。

 周りにいた人が、チラチラとこっちを見て、また視線を戻していく。


「ダメかな?」


 小首を傾げて、のぞきこんでくる菊池君。

 心なしか、うるんでる瞳。

 『だれか拾ってください』って書いてある段ボールに入った子犬のような瞳で見られたら……嫌だなんて言えるはずがないじゃない!


「ううん、いいよ。一緒に行こ……」


 それに、同じ車両に乗ってて、知り合いなのに一緒に行かない方が変じゃない?




 この時は、そんな風に考えていて、まぁ、成り行きで一緒に登校することになったのでした。



こんな出会いはどうでしょうか?


初めての投稿です。つたない文章ですが、最後までお付き合いください<m(__)m>


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