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月神山の不気味な洋館  作者: ひろみ透夏
第2話 初めてのデート

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7/22

【第2話】初めてのデート(1)

 

 両親が留守のあいだの食事は冷蔵庫に用意されていたけれど、おれは棚からカップラーメンを取りだして、ポットのお湯をそそいだ。


 三分も待ちきれず、急いで腹のなかに流しこむ。もたもたしていたら、野次馬(やじうま)のヒロミたちに取りかこまれてしまう。


 あせりながらも、なぜかいつもよりしっかり歯磨きを済ませて玄関をとび出すと、階段をかけ下り、団地の駐輪場にとめてある自転車にまたがった。



 駅前の商店街を風のように走り抜ける。


 この街は大きいとはいえないけれど、駅前にはそれなりにビルもあり、いろいろな店が(のき)(つら)ねている。しかし、いったん踏切を渡れば、線路をさかいに、最近、整地されたばかりの住宅用地が広がっていた。


 まだ、ぽつぽつとしか建っていない、新築の家々のまえを通り過ぎると、わずかばかりに残された田園地帯が見えてくる。


 ここまでくれば、もう街の喧噪(けんそう)は聞こえてこない。


 踏切からまっすぐにのびる、この一本道は、つい先日、アスファルトで舗装(ほそう)されたばかりで、以前は砂利(じゃり)がしかれた農道だった。


 杉林でおおわれた小高い月神山(つきがみやま)中腹(ちゅうふく)にある、月神山神社につづいている。


 奈良時代からあるという古い歴史のある神社だけど、いまは小さなお(やしろ)がぽつんとあるだけ。そのふもとには、山から()き出た水が流れこむ、ひょうたん型の池をたたえた月神山親水公園がある。


 子どもたちからは、ひょうたん池公園と呼ばれて親しまれていた。


 梅雨あけの刺すような日差しが、まだ真新(まあたら)しい、黒々としたアスファルトの道に降りそそぎ、ゆらゆらとした熱気が立ちのぼる。



 おれは自転車をこぎながらハンドルから両手をはなし、大きく深呼吸した。

 見上げれば、きのうまでぐずついていた空がうそのように、青く澄みわたっている。


 あせっていた気持ちが、すっと落ちついてきた。



「頼みたいことがあるって言ってただけじゃん。ちょっとおれ、自意識過剰(じいしきかじょう)かも」



 ぽつりとひとり、つぶやいた。


 そうだ。

 ヒロミたちが騒ぎ立てるから、なんか勘違(かんちが)いしちゃったのだ。


 べつにたいしたことじゃない。ただクラスメイトの頼みを聞くだけなのだから――。


 そう思うと、なんだか楽しい気分になってきた。

 自転車のペダルも、いつになく軽い。



竹内(たけうち)サトミか……。なんとなく上品で、ヒロミたちとは全然、雰囲気ちがうよな」



 六年生になるときにクラス替えをしてから、そろそろ四ヶ月。

 べつにさけていたわけではないけれど、クラスで唯一(ゆいいつ)、話したことがない女子だった。



 頼みってなんだろう。きっと、お上品なお願いなんだろうな……。



 いつのまにか鼻歌がとび出すほど、おれは上機嫌(じょうきげん)になっていた。



 しかし竹内(たけうち)サトミの頼みは、そんなおれが想像もしなかった、いやクラスの女子たちですら想像できないほどに、大胆(だいたん)なものだった。 



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