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月神山の不気味な洋館  作者: ひろみ透夏
第1話 竹内サトミ

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【第1話】竹内サトミ(4)

 

 最近、学校という空間にいることが、とてもたいくつに感じていた。

 勉強が大きらいというわけではないし、サッカー部での活動はとても楽しい。


 だけど、学年が上がるにつれて、平々凡々(へいへいぼんぼん)と時間がすぎていく変わりばえのしない学校生活に、なんとなくあきていた。


 ドキドキするような日々なんて、所詮、漫画やアニメのなかだけ。

 そう思っていた。



石神(いしがみ)くん、石神ケンヂくん」



 土曜日の放課後。

 鳥かごから解放された鳥のように昇降口からとび出した、おれの背中に声をかけてきたのは、竹内サトミだった。


 まっすぐで長い髪のサトミは、白いブラウスに、水色のチェックのスカート。白いハイソックスに、黒い革靴といった、いつもの格好(かっこう)で昇降口に立っていた。


 ほかの女子たちが、競うように中学生向けファッション雑誌のキラキラした服装をまねるなか、サトミの服装は、どこかみんなとは違う、品の良いお嬢さまのような落ちついた雰囲気を漂わせている。


 実際、大きなお屋敷に住んでいるという、うわさもある。



「ああ、竹内さん」


 正直、竹内サトミに話しかけられるなんて思ってもいなかったので、おれはちょっとドキドキしていた。


 だけどそこは、いたって冷静に、なんでもないように――。



「何かよう?」

「うん。ちょっとお話、いいかな?」

「いいけど……」



 通りすぎるクラスメイトたちが、ニヤニヤしながらおれたちを見つめている。

 いつもひとりでおとなしく、女子どころか、男子となんて口もきかないと思われていたお嬢さまのサトミが、おれなんかに話かけているのだから無理もない。



「えっとね……、竹内さん。その話、長いの?」


「うん。ちょっと頼みたいことがあるの。サトミでいいよ」


「あ、そう……。サトミ……さん、ひょうたん池公園で話さない? ここ、目立つから」


「ひょうたん池? ああ、親水公園(しんすいこうえん)のことね。それじゃあ二時に。絶対きてね」



 クラスメイトたちの視線など、まったくおかまいなく、サトミはにっこりと微笑んで、しずしずと昇降口をあとにした。


 その姿が校門の外に消えたとたん、いっせいに女子たちが騒ぎだす。



「なによケンヂ! ひょうたん池でデート?」

 ヒロミの矢のようにするどい質問が、おれの背中につき刺さる。


「竹内さんもおとなしそうにみえて大胆よね。みんなのまえでデートに誘うなんてさ!」

 ヒロミのとりまきの一人、エリカが冷やかしの言葉をなげかける。


「でもさ、ひょうたん池に誘ったのはケンヂじゃん。ねえケンヂ、みんなでのぞきに行ってもいい?」

 もう一人のとりまきユキナが、追い込みをかけてきた。



 おれは恥ずかしさにたえきれず、校門にむかって走りだした。

 クラスで一番、うわさ話と、だれかの悪口が大好きな、ヒロミ軍団に見られてしまうなんて……。


 そのとき、バタバタと騒がしい音をたてて、昇降口にタカシがやってきた。


「あっ、ケンヂ、まってまって。一緒に帰ろうぜ!」

 放りだした靴に足をつっこみながら、大声で叫んでいる。


「ごめんタカシ、きょうはさきに帰るから! それから午後の部活も休むから、ゴリセンに伝えといて!」


「ずるいぞケンヂ、ファイクエ3買いに行くんだろ! あとでおれにもやらせろよな!」


 タカシの怒鳴り声を背中で聞きながら、おれは校門からとび出した。



「まったくお嬢さまってのはさ、どうして空気が読めないんだろうな。そんなんだから、みんなから浮いた存在になっているっていうのに……」



 いつもはのんびりと歩く通学路を、全力で走る。

 そのせいだとは思うのだけど、おれの胸はどきどきと高鳴っていた。



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