表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
月神山の不気味な洋館  作者: ひろみ透夏
第9話 逃走

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/36

【第9話】逃走(2)

 

「来たんだ……」


 天井を見つめたまま、サトミがこわばった表情でつぶやく。


「この上、わたしの部屋なの。……ケンヂくん、早く逃げて!」


「だめだよ! 一緒にどこかへ隠れよう!」


 おれはサトミの腕をつかんで、リビングのドアから玄関ホールへとび出した。



 と、同時にドアの開く音が、吹き抜けを通して聞こえてきた。

 低い足音が、二階の廊下を移動しているのがわかる。

 おれは足音をさせないようスリッパをぬいで裸足になると、サトミに耳打ちした。



「ここから階段のまえを走って、むかいの部屋に隠れるんだ。行くよ!」



 サトミの手を引いて、いっきに玄関ホールをかけ抜ける。

 ほんの一瞬、階段を見上げたとき、踊り場のあたりに黒い人影を見たような気がしたけど、おれはそのままむかい側の壁までいっきに走り、一番手前にある観音きのドアをあけ、食堂のなかにすべりこんだ。



 ドアにもたれかかりながら、考える。

 この食堂に逃げこんだところを、見られてしまったかもしれない……。


 長いテーブルの上に置かれた銀の燭台が、うっすらと白みはじめた外の明かりをうけて、にぶく光っている。


「もう夜が明け始めている……。館のなかに隠れるより、外に出たほうがいいかもしれない。太陽の光にさらせば、あんな幽霊、消えていなくなっちゃうよ!」


 おれはぐるりと食堂を見まわして、左側の壁にあるドアをあけた。

 思ったとおり、ドアはとなりの厨房とつながっていた。

 おれはそのドアをあけ放したまま、サトミと食堂のテーブルの下に隠れた。



「もしあいつがこの食堂に来たとしても、あけっ放しのドアを見れば、おれたちが厨房に隠れたと思って厨房へ行くはずだ。そのすきに玄関まで走って、外へ逃げよう!」


 不安そうにうなずくサトミと強く手をにぎりあいながら、ふたりでじっと息を殺す。



 カツン……。



 低かった足音が、硬い足音に変わった。

 階段から、大理石がしきつめられた玄関ホールに降り立ったのだろう。


 行き先に迷っているのか、しばし沈黙の時間がつづく。

 サトミの手をにぎる、おれの手にも汗がにじむ。



 カツン……。カツン……。



 ふたたび玄関ホールに鳴り響いたその足音は、無情にも、じょじょにこちらに近づいてきた。

 サトミの肩が震えている。


 おれはサトミの肩をぎゅっと抱きよせながら、目のまえのドアを見つめた。

 きしんだ音を響かせながら、まるで風にでも押されたかのように、静かに、ゆっくりと、観音開きのドアが開いていく。



 思わず叫びだしそうなサトミの口を押さえ、ドアを見つめる。

 足音が食堂のなかに入ってきた。しかし、姿はまったく見えない。

 足音だけが、おれたちが隠れているテーブルのわきを、ゆっくりと歩いている。


 その足音が、ふいに止まった。

 そこは、あけ放しておいた、厨房のドアのまえ。

 やがて足音は、となりの厨房に移動していった。



 やった! うまくいった!



 押し殺した声で、サトミにささやく。


「いまのうちに、この食堂から逃げ出そう」


 サトミは、おれの手をぎゅっと強くにぎり返して、うなづいた。



「いち、にの……さん!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ