表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
月神山の不気味な洋館  作者: ひろみ透夏
第6話 探索

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/36

【第6話】探索(3)- 館2階のマップ -

 

 二階左側の壁には、ふたつのドア。

 手前のドアをあけると、そこはバスルームだった。

 大理石(だいりせき)の床に、トイレと、カーテンでしきられた浴槽が見える。


 廊下を歩いて、となりの部屋へ向かう。

 ふたつめのドアは、モスグリーンに塗られたアンティーク調のドア。

 そのドアをあけたとたん、とてもいい香りがあたりにたちこめた。



「なんだろう……。甘酸っぱいような、どこか覚えのある、いい香り……」


 雲の隙間(すきま)から月が顔を出したのだろう。白いレースのカーテンをすかして、部屋のなかに、すうっと月明かりがさしこんできた。


 (とう)製の鏡台に、(とう)で組まれたチェスト。小さなガラステーブルのむこうには、アップライトのピアノが見える。


 広い部屋の(すみ)には天蓋(てんがい)付きのベッドがあり、その上に無造作(むぞうさ)に置かれていたのは、見おぼえのある白いブラウスに、水色のチェックのスカート……。



「ここ……。サトミの部屋じゃん!」



 あわててドアを閉めた。

 どきどきと胸が高鳴っている。


 女の子の部屋を無断でのぞいてしまった。このことは、絶対サトミに秘密にしておこう。でないとおれ、変態だと思われちゃう!

 よくよく考えたら、サトミが寝ているあいだに、サトミの家を見てまわるなんて、ずいぶん失礼なことだ。



「いいかげん部屋にもどって、本物のゲームのつづきをしよう」


 (きびす)を返して階段を下りようとするも、シャンデリア越しに、むかい側の壁にならぶドアが目にとまる。

 ここまでくると、残り少ない手つかずの部屋が気になってしかたがない。


 ゲーマーの悪いくせ。

 宝箱を探してダンジョンを歩きまわっていると、チェックしていない場所が気になってしかたがないのだ。


「ほんのちょっと、確認するだけだから……」


 そう自分に言いきかせ、おれは(やかた)の正面側にある、渡り廊下へ向かった。



          *



 館二階の正面側にある渡り廊下は、ちょうど玄関の真上にあたる。

 この場所にはバルコニーがあり、月明かりに照らされた広い庭園と、それらをかこむ黒い杉林がのぞめる。


 窓に顔を近づけて、夜空を見上げた。

 雲が流れている。

 夜空のずいぶん高いところで、月がときおり顔をのぞかせていた。


 満月は夕方の東の空にあらわれて、明け方の西の空へ姿をかくす――。

 あの月が空にいるあいだ、おれはお姫さまを守ると誓った。


 もちろん、お姫さまって言うのは……。


 かあっと熱くなった頭をひとふりして、おれは渡り廊下を走り、右側の壁にならぶ三つのドアの、一番手前のドアをあけた。



「ここはたぶん、サトミの両親の部屋なんだろうな……」



 ドアの隙間から、部屋をのぞく。

 しかし月明かりに照されていたのは、がらんとしてなにもない部屋。

 カーテンもなければ、ベッドも家具もない。

 フローリングの床には(ほこり)がつもっていて、誰かが生活していた感じは、まったくしなかった。


 おれは急いで、となりのドアをあけた。


 むかい側の部屋と同じように、バスルームになっている。

 しかし、ここも長いこと使われてなさそうな雰囲気だ。

 ためしに洗面台の蛇口をひねってみたが、きゅうきゅうと乾いた音がするだけで、水は出てこなかった。



 バスルームをとび出して、すぐさま、となりのドアに手をかけた。

 右側の壁にならぶ一番奥のドア。二階にある最後のドアだ。

 しかしそのドアは、鍵がかかっていてあけることはできなかった。



 ぐるりと館のなかを見まわす。


 おれの頭のなかには、もうすっかりこの館の間取り図ができあがっている。

 このドアがあいたとしても、この部屋はとてもせまいはずだ。



「おかしいぞ。サトミの両親の部屋が……ない……?!」



 カチャリ……。



 その音は、一階から聞こえてきた。

 吹き抜けから一階を見おろす。


 一階左側の一番手前のドア。リビングダイニングキッチンのとなりの部屋のドアが、風にでも押されたかのように、すうっと開くのが見えた。



「まだ見ていない部屋は、あそこだけだ」



 おれは(いざな)われるように、その部屋を見つめたまま、ゆっくりと階段を下りた。


挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ