【第5話】オムライス同盟(2)
「いいな。仲良くて……」
「えっ?」
「ヒロミとか、あいつとか……。仲良くないと、そんなふうに呼んでもらえないもの。わたし、クラスメイトのだれからも、竹内さんとしか呼ばれないのよ……」
笑いながら、おれはこたえた。
「だって、竹内さんはお嬢さまだからさ。みんなとは違うよ」
「わたしは!」
とつぜんサトミが叫んだ。
「みんなと一緒がいいの! もっともっとみんなと仲良くなりたいの。ヒロミさんたちと笑っておしゃべりがしたいの。わたしいつもそう思ってるのに、どうして嫌われちゃうのかな? ねえ、どうして? どうしたらいいと思う?」
あまりにもサトミが必死なので、おれはなにを言っていいのかわからなかった。
すがるような目で見つめていたサトミは、やがてすっと肩を落とし、顔をふせた。
「ごめんね。わたしの問題なのに。ケンヂくんには関係ないのに……」
沈黙がおとずれる。
さっきまで温かかったオムライスも、熱々のオニオンスープも、この空気に急激に冷まされていくように、湯気を消した。
「サトミはさ……」
おどろいて、サトミが顔をあげた。
いきなり名前で呼ぶなんて、かなり勇気が必要だったけれど、いまはそうしなければいけないと思った。
自分でも顔がほてっているのがわかるけど、そんなこと関係ない。
「みんなに嫌われてるって言うけど、そんなこと全然ないよ」
「だって、わたしみんなと違うんでしょ? みんなと同じ話をして、一緒に笑いたいのに、なにが違うか自分じゃわからないの! 教えてほしいの!」
「ごめん、みんなと違うとか言って。でもそれっておかしくないよ。みんなと違うって、悪いことかな?」
無言のまま、サトミが首をかしげる。
「自分が短所だと思ってることって、ほかの人から見れば長所だったりするんだよ。さっき料理してるサトミを見てそう思った。あんなに上手に料理ができるなんてさ、やっぱりみんなと違う。けどおれ、サトミのそうゆうとこ、いいと思う」
サトミのほおが、ぽおっと赤くなった。
「おれだってみんなと違うしさ。みんな、自分と違うものを持ってるから、友だちになるんじゃないの?」
「自分と違うから、お友だちに……?」
「そうだよ。友だちから分けてもらうんだ。タカシの目立ちたがりのところとか、ヒロミのずけずけと文句を言うところとかさ。おれ、持ってないもん!」
自分で言って、自分で笑った。
「それから、サトミの世間知らずで、天然なところとかさ!」
「ええっ? お料理じゃなくて?」
サトミが怒ったように笑った。
そして、もじもじと照れながら言う。
「じゃあ、お友だちになれるのかな? ……わたしたち」
「もちろん。このオムライスにかけて! これからも一緒にさ、もっともっと友だちをふやしていこう!」
テーブルが、おれたちの笑い声に包まれる。
冷めたと思っていたオムライスから、また湯気がのぼった。




