表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
月神山の不気味な洋館  作者: ひろみ透夏
第3話 月神山

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/20

【第3話】月神山(3)


 足もとがすいぶん暗い。



 見上げると、黒い杉林の隙間(すきま)から見える空は、もう深い藍色(あいいろ)に染められていた。


 じんめりとしめった空気が、ほおをなでる。

 どこからか、くぐもったカラスの鳴き声が聞こえてくる。


 もうずいぶん不気味な雰囲気なのに、怖がりと言っていたはずのサトミは、まったく平気な様子で石段を上がりつづけていた。



 しばらくすると、ようやく視界がひらける場所に出た。

 石段もここで終わっている。もう、山の頂上なのだろう。

 まわりをぐるりと背の高い杉の木でおおわれた、まるで、人目をさけているような、不思議な場所。


 目のまえに、つる草の(から)みついた、さびた鉄柵(てっさく)の門がある。

 門の両側には、赤茶色の煉瓦(れんが)づくりの門柱(もんちゅう)が立ち、おなじく煉瓦でつくられた壁が、杉林のなかへとつづいていた。



 サトミが門に近づく。

 すると鉄製の扉が、かん高いうなり声をあげながら、左右に開いた。


「うそっ! いま、勝手に扉が開いたよ!」


「家族が近づくと、自動で開くようになっているの」

 ふり返りもせずに、サトミが言った。


「えっ。てことは……、ここが竹内(たけうち)さんの家?」


「おじいさまが許さなかったから、お友だちを招待するのは、きょうがはじめて。さあ、どうぞ」



 サトミが門をくぐる。

 古めかしい外観(がいかん)のわりに、なんてハイテクな技術が使われているのだろう……。

 おれは感心しながらも、急いでサトミの背中を追った。


 門柱に、ぽうっと、だいだい色の(あか)りがともる。

 サトミの歩みにあわせて、そこかしこに散らばる灯籠(とうろう)にも、ぽうぽうと灯りがともっていく。



 足もとにのびる石畳(いしだたみ)

 低木にかこまれた花壇(かだん)と、芝生の庭。

 ()れた噴水と、(こけ)のはえた彫像(ちょうぞう)――。


 大きなお屋敷に住んでいるといううわさは、本当だったのだ。



 きょろきょろとあたりをながめながら歩いていると、いきなりサトミの背中が目のまえにあって、おれはつんのめりそうになりながら立ちどまった。


 見上げると、まるでとつぜん、そこに現れたかのような大きな(やかた)が、ぼんやりと暗闇に浮かび上がっていた。


 ざわざわとざわめく黒い杉林にかこまれて(たたず)む、明治時代の洋館(ようかん)のようなサトミの家。


 ふいに背中に視線を感じて、ふり返る。

 杉林のあいだから、紅く輝く大きな月が、おれたちをのぞいていた。


 きょうは満月なのだ。



「これはたしかに……」



 ひとりで夜をすごすには、不気味すぎる家だった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ