時計
掲載日:2026/01/10
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町の時計台は、毎日正午になると一秒だけ逆に進む。
誰も気にしていなかったが、古本屋の店主だけはその一秒を集めていた。
瓶に詰め、ラベルに日付を書き、棚に並べる。
ある日、棚がいっぱいになると、店主は瓶を一斉に開けた。
すると店の中で失われたはずの言葉たちが、紙魚のように這い出してきた。
「たぶん」「まあいいか」「後で」。言葉は床を覆い、店主の靴紐を結び直し、背中を押して外へ連れ出す。
気づくと時計台の前で、逆向きの一秒が正しく前を向いた。
町は何も変わらない。
ただ古本屋だけが、なぜか定休日を忘れなくなった。
この町の時間が変わってしまった。
だけどそれには誰も気付かないまま
時計の針は回りつづけていた。
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