希望の光は淡く輝く
「いいよ、もう流されちゃったろうから。」
「ううん、もうちょっとだけ。」
「夏休み最後の日だろ?宿題もあんだろうし・・・」
「いいのいいの! 災害ボランティアしてたって言い訳になるからね、アハハ。」
金婚式のお祝いにと、夫はピンクゴールドの指輪を作ってプレゼントしてくれた。
自分用にと作ったホワイトゴールドの指輪は、夫と一緒にお墓で眠っている。
めずらしく指輪をはずして顔を洗ったことをすっかり忘れていた。
金婚式のすぐ後に逝ってしまった夫の形見はこの五年間、大事に大事に、ほとんど肌身離さずだったのに。
家を出る直前、指輪をしていないことを思い出したが、『持ってけるのは命だけ!』消防団のお兄さんはそう言って私を避難所まで担いでいった。
避難指示が解除されて数日後、久々に避難所から自宅に戻った。
家の形はとどめているものの、床上まで水が入ったらしく、家の中はぐしゃぐしゃだ。
「「「「「こんにちはー、お手伝いします!」」」」」
途方に暮れている私の背中に声がかかり、振り向く。
それが、地元ボランティア、長靴と手袋を装備した五人の少女との出会いだった。
彼女らは毎日のように来てくれ、家の中を片づけ、畳や家具を引っ張り出して干してくれた。
家の中の我楽多が何とか片付いた頃。
優しさに甘え、ついつい指輪のことを話してしまった。
「えー! そんな大事なものがお家の中にあったの!?」
五人は一様に驚き、心配し、家の中や外に出したごみの中までも探し始めた。
私は恐縮した。
彼女たちが予定ていたボランティア活動の期間はとっくにオーバーしている。
「ほんとにいいのよ。きっとお爺さんがくれた指輪が私の身代わりになって助けてくれたんだから。」
そう言っても彼女らは粘った。
「あ、これじゃない⁉」
懐中電灯を頭につけていた子の声が風呂場の方から聞こえる。
それを聞きつけ、もう一人の女の子が洗面所に向かう。
「ユカ、あんた腕細いんだから、やってみて。」
しばらく声が聞こえなかったが、二人は玄関先にいた私に向かって走ってきた。
「ほら!これでしょ!?」
女の子の指先には、淡くピンクに輝く指輪があった。
「ええ、間違いないわ。」
私の掌に指輪をそっと載せてくれた。
別の場所で作業をしていた三人も駆けつける。
「「「「「やったやったやったー!」」」」」
五人はそう叫び、嵐の後ならではの青藍の空に手を高々と上げ、タッチを交わす。
そして、腰をかがめて、ひとりずつ私ともタッチする。
何とお礼を言っていいかわからない。
今は、こんな状態だから、お礼なんか何もできない。
「本当に、こんなによくしてもらってるのに・・・何もできなくてごめんね。」
「おばあちゃん、そんなこと気にしないの。今ほんとにお手伝いできてよかったって思ってるよ。」
私は、担いできたリュックの中身を思い出した。
避難所でもらったお菓子が入っていたのだ。
ガサゴソと取り出す。
「本当に、こんなことしてしかあげられなくて、すまないねえ。」
私は女の子手にチロルチョコを一つ一つ載せた。
そんなでも、五人の少女はすごく喜んでくれた。
「わー、これ、何か書いてあるよ!」
「『本当にありがとう』だって!」
「チロルのデザインチョコじゃん!」
「カンゲキー!」
「いただきます!」
私も一緒に口の中に入れた。
その手紙は、元気の味がした。




