表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
青春映像オムニバス あなたも、青乃春(あおの はる)。  作者: 舟津湊


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/44

迷信?の 実証実験

「え、惚れ薬!?」


里山女子高校科学部の部長、エミの提案に驚いた。

「そう。文化祭の出し物、『惚れ薬ドラッグストア』はどうかしら?」


「ブチョー、そもそも惚れ薬なんて実在するの?」

この部で一番冷静なアキが疑問を投げかける。


「文献によると、江戸時代にイモリを黒焼きにして作ったらしいわ。」


「げ! イモリ? 」

そのテのものが苦手な私は思わず声を出してしまった。

「それ、迷信じゃないの?」

副部長のウタが言うことも、もっともだ。


「ウタ、科学部のモットーは何だったかしら?」問うエミ部長。

「えーっと、真実を究明する。」

「そう。だから、試してみて迷信かどうか、ハッキリさせるのよ。」

「でも、どうやって惚れ薬、作るの?」


部長は黒板に図示しながら説明する。

「幸い、わが科学部には、生物班と化学班があります。生物班でイモリを捕獲し、オスとメスを判別・仕分けします。そして、化学班がイモリを黒焼きにし、粉末にして包装してできあがり。」


「うわー! なんかエグイ作業だわ。」化学班長のイクミが顔をしかめる。

「でもよ。」エミ部長は悪戯っぽく微笑む。

「惚れ薬、ほんとに効いたらどうする?……毎年、文化祭には里山高校の男子が大挙して押し寄せてくるでしょ?」


「えーと」「そうね」「ほわー」「うふん」「エヘヘ」

部員一同、虚空を見つめ、ニヤニヤしながら、なんか妄想している。

「そうね、効いたらもうけもの、やってみようよ。」私も妄想を膨らませ、賛成した。


生物班は、嬉々としてイモリを捕獲したが、私が所属する化学班の作業は凄惨を極め、思い出したくないので説明は省略する。


イモリの黒焼きの粉末でできた惚れ薬は、メスの分を赤い薬包紙に、オスを青い薬包紙に包み、赤と青セットで販売する。文献によると、赤を女性が自分の体に、青を意中の男性にかけると恋愛が成就するという。


文化祭のオープン前、科学部が割り当てられたブースの中のテーブルに惚れ薬を並べる。

みんな白衣姿でスタンバった。


「ねえ、なんか薬、少なくない?」とエミ部長。

部員一同、後ろ手をして顔を上げたり、そっぽ向いたりしている。

「こら、みんな!その手に持っているの、出しなさい。 売り物とは別に一セットずつみんなにあげたでしょ!」

「えへへ、バレたか。」

さすが部長スルドイ。私たちは隠し持っていた惚れ薬をテーブルの上に戻した。


「あれ、まだ足りないわ。」

部長は辺りを見回す。何食わぬ顔で立っている人物を見つけ、近寄った。科学部顧問の先生だ。

「みどり先生、返してください。」

「……エミちゃん優しいから、大目に見てくれるよね♥」

「だめです!」

先生は観念して惚れ薬をジャケットのポケットから取り出す。

「えっ、五セットも!」

テーブルに戻された包みの数に、一同驚く。

「ほ、ほら、保険をかけといた方がいいと思って・・・」


そんなこんなで文化祭が始まった。部長の言う通り、里山高校の男子もたくさん来場している。


「きゃー、なにこれ、惚れ薬だって!」

「モノは試し、買ってみようか。」

「買ったら即使うわ!」

惚れ薬はあっという間に売り切れた。これで豪華な宿で合宿ができる。


私と部員の複数名、双眼鏡を持って屋上に上がる。惚れ薬の効果の観察だ。

中庭のあちらこちらで女子生徒が自分に黒い粉をかけ、男子にもふりかけている。


「さあ、手分けして観察よ。」

私たちは階段を降り、それぞれの現場に向かう。

出店が並ぶ中庭のあちこちで、白いシャツに黒い粉をかけられて困惑している男子たち。みんなイケメンだ。

薬をかけた女子と何かが起きそうな気配はない。

これは、『惚れ薬の効果なし』と判定せざるを得ない。


「まあ、シャツに黒い粉がついちゃって、大変ねえ。今綺麗にしてあげますからね。」

エチケットブラシを持って男子生徒に声をかけている女子がいた。

掘れ薬をかけられたが次々と彼女のそばにより、列を作った。

その子はブラシでやさしく黒い粉をおとす。


「あ、部長!」「抜け駆け!」「ズりぃー!」

エミ部長の裏切り行為、許せん!


私たちが怒りをあらわにしても抗議しても、彼女は涼しい顔でブラシを上げて見せた。


「ねつ。効いたでしょ! 惚れ薬。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ