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青春映像オムニバス あなたも、青乃春(あおの はる)。  作者: 舟津湊


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ある意味、密着取材

「広報部から、生徒会活動を密着取材したいとリクエストが入りましたが、受けていいですかね?」

 水曜の定例幹部会で副会長の北山孝三郎(高二)が議案にあげた。


「そ、それどういう取材意図があるのかしら?」

 生徒会長である私、叶野綾子(高二)は少しドキマギしている。

 広報部と言えば聞こえがいいが、どちらかというと生徒の、いや生徒だけでなく先生のゴシップネタも取り上げ、容赦なく学内新聞のネット版に掲載する恐ろしい団体だ。


「ああ、あいつらヤバイっすよね、加藤南先生がセクシーコスプレしてコミケに参加した写真を上げちゃって、ミナミ先生、教頭先生に大目玉食らったって聞きましたよ。」

 会計の三条哲也(高一)が眼鏡のブリッジを押し上げながら話す。


「でも、私たち取材されてヤバイ記事ネタにされるようなことってあったっけ?」

 書記の京野ハル(高一)が無邪気に疑問を投げかけた。


 私はハルの顔をじっと見つめる。

「あ……そうか。」

 彼女は顔を赤らめてうつむく。


 幸三郎と哲也も数秒見つめ合っていたが同様に顔を赤らめ、うつむいた。


そうだ。あの連中の餌食になりそうなネタが大アリなのだ。


 私たちは、『私立愛求学園』の生徒会メンバー。


 校名の通り、わが校にはユニークな校訓がある。


『真の愛を求め続ける』


 この校訓に基づき……

 校則として、『法律・条令に反しなければ健全な男女の恋愛を推奨する』と生徒手帳に書かれている。

 また、大学の推薦入試に影響が大きい調査書には、愛求(IQ)指数という独自の評点が記載される。これは、フィリア、アガペー、プラグマ、ストルゲーという古代ギリシャの『愛の分類』を評価項目として、『いかに健全な愛を積極的に追い求めたか』が評価されるものなのだ。


 われわれ生徒会も『真の愛を求め続ける』ことを率先し、全校生徒の模範となることが要求されている。

 生徒会の選挙方法もユニークで、男女のカップルが一組になって立候補する。二人がいかに校訓、校風にあったカップルかをペアで演説し、生徒はそれを参考にしながら投票する。こうして生徒会幹部に選ばれた生徒は、推薦入試にかなり有利となる。


 五月の生徒会選挙では、


  叶野 綾子(私)& 北山 幸三郎

  京野 ハル & 三条 哲也


 のペアで立候補し、それぞれ『愛求学園』の模範となるカップルとして見事当選した。


 ところが……


 何をどう間違ったのか、生徒会活動を重ねていく中で、四人の気持ちに変化が生じた。


 現在、実質的なカップルは、


  叶野 綾子(私)& 京野 ハル

  北山 幸三郎 & 三条 哲也


 となってしまった。


 こうなった詳しい経緯は、別の機会に詳しく話したいと思うが、健全な『男女の』恋愛を推奨する、という校則に生徒会ぐるみで背いてしまっている。

 別に私たちがこうだから、というわけではないが、今のご時勢『男女』に限定することに疑問を感じていて、生徒会の手でこの校則を変えたいとも思っている。この辺の顛末も別の機会にお伝えしたい。


 取材を申し込んできた広報部には、何か感づかれたのだろうか?

「でも、無下に取材拒否するのも、かえって怪しまれるよね。」

 副会長の孝三郎が言うのも、もっともだ。

「取材は快く受けましょう。ただし、振る舞いには気をつけて。」

 私は取材にオーケーを出した。


 ◇ ◇ ◇


「こんにちはー、広報部の者です。このたびは密着取材にご協力いただき、ありがとうございます!」

 生徒会室に取材に訪れた二人は、記者の宝田希美と撮影の峯尾ケイと名乗った。共に二年生だ。


 彼女らは文字通り、私たちの活動に密着して取材を行った。


 幹部四人での会議。

 私とハルとの議事録のチェック作業。

 幸三郎と哲也の領収書の整理と帳簿作業。

 運動部、体育部の代表との打ち合わせ。

 文化祭実行委員との実施計画と予算の詰め、

 などなど。


 それぞれの打ち合わせ場所への移動時間や休憩時間もビデオカメラを回しっぱなしだ。


 気が抜けない……でも、無意識の動作や言動にボロが出る。


 職員室に書類を届けに行くとき、私と腕を組もうとするハル。その手をパチンと叩く。

 会議の休憩時間にベランダに出て、哲也の髪をすく幸三郎。二人の頭を定規でペシッ、ペシッと叩く。


 取材期間の三日間、随所にこんなボロが出てしまった。


 取材最終日、三日目の夕方。

「お忙しい所、お邪魔してすみませんでした。ご協力ありがとうございました。」

 私たち四人の打ち合わせ風景の撮影が終わり、広報部の二人は深々と頭を下げた。


 私は恐るおそる聞く。

「あ、あの。どんな記事になるの?」


「はい、 やっぱり目をつけていた通りです!」

 どき。

「とってもいい記事になると思います……見出しは、『新しい愛の形を求め始めた、わが校のリーダーたち』で予定しています!」

 記者の希美が自信満々に言い放った。


「ち、ちょっ! それヤバイでしょ。」

 副会長の幸三郎が慌てふためく。


「大丈夫です! 私たち、生徒会の皆さまを見ていて大変微笑ましく、頼もしく思いました。」

 とカメラ担当のケイ。

 希美記者が続ける。

「きっと、生徒のみんなのお手本に、そして励みになると思いますよ……私たち二人にとっても。」

「どういうことかしら?」

「「えへへへ」」


 二人がなぜ照れ笑いしたのか不明だが、まあ今さら揉み消し工作はできないだろう。


「「わかってます。まかせてください!」」

 二人は声をそろえてそう言うと、生徒会室をあとにした。


 仲良く手に手を取り合って。


 ……そういうことか。


「あんたら自身が『密着』して取材してんじゃないの。」

 ハルが呆れたようにつぶやいた。


 生徒会はこの後、校則の変更に挑戦していくことになるが、広報部が強力にバックアップしてくれたことは、また別の機会に詳しく話したい。

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