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青春映像オムニバス あなたも、青乃春(あおの はる)。  作者: 舟津湊


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こどものおとな食堂

うちの高校の学食は、土曜も今までは民間業者さんがやっていてくれたんだけど、学校が週休二日制になって、部活や自習希望者しかいないから採算が合わないとかで、月~金の営業だけになってしまった。


「これは、ビジネスチャンスよ。」

調理室にて。

わが料理部の部長、ナツミが銀ブチの眼鏡をクィッと上げ、ホワイトボードにキュキュッとマーカーを走らせた。


"土曜限定食堂"


「えっ、でもさ、採算合わないから、業者さん、やめちゃったんでしょ?」

会計係のマドカが難色を示す。


部長は文字を書き加え、説明する。

"ターゲット:体育会系"

「平日だと、色んな生徒のニーズに応えなくちゃいけないから、多様なメニューで栄養バランスも考えなくちゃいけないでしょ? だからコスト高になっちゃうのよ。土曜のターゲットは、部活に来ている生徒に絞る。」


「えー、大食いの奴ら相手だと、材料費がかさまない?」

部で一番料理が得意なリコが問う。


ナツミ部長はさらに文字を書き加え、説明を続ける。

"高カロリー、低原価、高食事満足度"

「味はそこそこ、運動に必要なカロリーが補給できて、食べ応えがあるメニューが基本よ。炭水化物中心で、そうね・・・食材の原価は150円で、売価は350円。ガス水道や調味料は学校持ちだし。」

「1食200円の利益かあ。土曜1回で30食出たとして6,000円・・・毎月24,000円の儲け!?」

副部長の私が皮算用するとメンバーの目つきが変わる。ウチの部では、ただ料理をつくるだけでなく、美味しいと評判のフレンチ、イタリアン、中華、韓国、その他エスニックなどなどの食べ歩きも行っている。

その軍資金が得られるのは大きい。


「よし、決まり。さっそく来週から始めよう!」

部員12名、満場一致で土曜限定食堂のオープンが決まった。


全校生徒にチラシを配り、土曜日を迎えた。


オープン初日としては、入りはまあまあといったところか。でも用意した食材は5食ほど余ってしまった。

「残った分、私たちで分けて食べようか?」

「でも、もう味見しながら結構食べちゃったし。」

「食材が余っちゃった分を差し引くと、あまり利益が出ないね。・・・」


「ちょっと職員室に行ってくる。」

言う間もなく、ナツミ部長が廊下を駆けていく。


数分後、先生を5人引き連れて戻ってきた。


「おう、この匂いは、ミートソースか!」

「なんか懐かしいな。」

「まさに、土曜の学校帰りの昼ご飯って感じだ。」

「母親は、あり合わせや残りものでごめんって言ってたけどね。」

「そのシンプルさがいいんだよなー。」


玉ねぎたっぷり、魚肉ソーセージとピーマンの具にケチャップと砂糖で味付けした大盛スパゲティを先生方はうまいうまいと平らげた。


ナツミ部長は、お茶を出しながら、先生方に申し入れる。

「あの、お食事中に話されていた土曜のお昼ご飯について、少しお話を聞かせていただけますか?」

「ああ、いいよ。」


この後、緊急部会が開かれ、メニューと集客方針の変更が行われた。

部長が板書する。


〇ターゲット:体育会系生徒に加え、近隣にオープン解放"

〇メニュー―:予定していた、ナポリタン、カレーライス、かけうどんに加え、

       焼きめし

       冷やし中華(乾麺のインスタント)

       焼きそば(マルちゃん) ライス付き

       焼うどん ライス付き

       ラーメンライス:

        サッポロのみそ、塩、しょうゆ、チャルメラ、出前一丁をローテーション


       ※メニューは毎週1つだけ、あえて具材は減らし、シンプルに。


そして、名称を変更。   


 "おとな食堂"


チラシを生徒から保護者に渡してもらったり、先生方から口コミしてもらったり、学校の近隣の住宅にポスティングしたところ。


翌週からは、大人たちが大挙押し寄せてきた。

ある程度これを見越して食材を多めに仕込んでいたが、ラストオーダーの13時を待たずに品切れとなってしまった。

食材は、毎週増やしっていった。

思いのほかラーメンライスが好評で、登場回数を多くし、原価を抑えることができた。


部員一同、グルメ食べ歩きの回数増加とクォリティアップを確信し、ほくそえんだ。


『おとな食堂』と暖簾のかかった調理室のドアがガラッと開く。


「ただいまー! 今日のお昼はなーに、あかあさん?」

ランドセルを背負った昔の子供たちがお店にどんどん入ってくる。


「今日は、チャルメラのラーメンライスと牛乳よ。」

私たちは、白い割烹着姿で、にこやかに答える。

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