卓上交換日記
うちの高校も遂に立て替え工事が完了し、二学期より新しい校舎、新しい教室に移る。
終業式のあと。
オンボロ校舎、オンボロ机に何かと不満タラタラだったクラスメイト達も、さすがに感慨深げに教室の中や廊下を隅々まで巡り、見納めする。ボロいが故の愛着もある。
私もその一人として、さまよっていた。
でも、灯台もと暗し。
私は、自分が使っていた机の片隅に、ボールペンで描かれた小さな文字列を今さらながらに発見した。
目を凝らして解読する。
同様に、隣の席の谷口君も机の隅をまじまじと見ている。
「ねえ、谷口君、机になんか書いてあるの?」
「ああ。見てみる?」
きたかぜが 肌にしみるぜ ボロ校舎
みかんがさ 弁当のおまけ うれしいぜ
がっこうの ボロさを隠す さくら道
スイカ割り 臨海学校 おれ主役
キンモクセイ 香る小径に 君の影
ヨミビト マサ
私は、自分の机に書いてあるものを谷口君にみてもらった。
わらやきの 煙が滲みる 学び舎よ
たくあんに ちくわのマヨ味 マンネリね
しんにゅうせい 花の踊りに 胸躍る
もうしょでも 海の思い出 アルバムに
よみちゆえ 部活の帰り きみが守る
ヨミビト スミ
「どうやら、この席の二人は、俳句と返歌を繰り返してたみたいだね。」
「机なんか、席替えであっちこっちに移動していただろうに、また隣り合わせになったのかな。凄い偶然ね」
私は、詠み人として書いてある名前が気になった。
オトンの名前は、マサツグ。
オカンの名前は、スミエ。
二人は私と同じ、この高校の同窓生だ。
今わかったこと、三つ。
オトンとオカンの在学中からこの学校は、ボロ校舎だったこと。
ネット掲示板がない時代から、タテ読み文化があったこと。
私と谷口君は、オトンとオカンと同じ机の席に座っていた、ということ。




